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早瀬は黒崎さんの秘書をやっていた。そして、5年前、大きな分岐点に差し掛かった。ロックバンドのギタリストをしていて、メジャーデビューの話が来たのに、それを断って、会社員の道を選んだことだ。そして、彼は恋人だった佐久弥と別れたと聞いている。多忙だったのだろう。
「裕理さん。5年前に秘書になったのは、それが理由?すごく忙しかったんだよね?」
「そうだよ。一緒にやりたかった。秘書以外にも並行して仕事をやっていたんだよ」
「また合併したのは……」
「親子だからっていう理由じゃないよ。一緒に頑張って生き残るためだよ」
「すごいね。一度別れても、一緒に出来るのが。悪い意味じゃないよ?大人だって思ったんだ」
「大人になれば、色んな事情ができる。学生の間も同じだ。悩みは尽きないから」
さらに優しく抱きしめられた。もたれ掛かって目を閉じていると、規則正しいリズムが聞こえて来た。それは自分も同じだ。初めて体を密着させた時は、バクバクと鼓動が打っていたのに。
「こうすると落ち着くんだ。初めの頃は近づくだけで、ドキドキしていたのに……」
「慣れたのか?つまらないなあ」
「バカ……」
言い返した後、自分の方からも背中に両手を回した。すると、早瀬がため息をついたから、どうしたのかと気になって見上げた。
「裕理さん?」
「……」
胸の鼓動が高鳴った。真剣な目で見つめられていたからだ。少しだけ体を離して見つめ合った。
「悠人君。『家族になろう』って言ったのを、覚えているか?」
「もちろん覚えているよ。嬉しかったからさ。交差点の信号待ちだったね。青信号になって、後ろからクラクションを鳴らされたっけ……」
あの時、早瀬の元へ行くことを決めた。怖がらずに、温かい居場所への扉を開いた。
「それでも怖がっているよね?俺が居なくなるんじゃないかと……」
「だって、実家がそうだし。ごめんね……」
「謝らなくてもいい。そういう風に思わせているのは、俺だ……」
見つめ合ったままの状態で、お互いの頬に触れあった。顔が近づいて来たからキスを待ったのに、ちっとも降りてこない。目を開けて見上げると、優しい眼差しが向けられていた。
「悠人君、これならどうかな?いい言葉があるんだけど」
「どんな言葉?魔法使いの呪い?」
「違うよ。魔法じゃない。現実のものだ」
「どんなものだよ?」
「悠人、結婚しよう」
「……」
告げられた言葉の衝撃に、どんな言葉を返していいのか分からなかった。同性同士は出来ない。いや、夏樹たちは結婚している。頭の中には嵐が巻き起こっている。早瀬は真剣であり、俺の返事を待っている。
「悠人、返事は?」
「待ってよーー」
「待たない。ここで返事を言うんだ」
「そんな……」
「悠人、愛している」
「裕理さん……」
「紙一枚で婚姻、離婚が決まるんだろう?俺たちはそれがない。紙自体が無いなら、離婚もできないよ。だから一緒にいるしかない」
「……っ」
頭の中が混乱しているのに、嬉しくて涙が溢れて来た。こんなにも、はっきりとした言葉がもらえた。一緒に暮らす現実だけでなくて、素敵な現実も贈られた。色んな事が起きすぎて、思考が追い付かない。返事をしたいのに、嗚咽で言葉が出せない。
「裕理さん。5年前に秘書になったのは、それが理由?すごく忙しかったんだよね?」
「そうだよ。一緒にやりたかった。秘書以外にも並行して仕事をやっていたんだよ」
「また合併したのは……」
「親子だからっていう理由じゃないよ。一緒に頑張って生き残るためだよ」
「すごいね。一度別れても、一緒に出来るのが。悪い意味じゃないよ?大人だって思ったんだ」
「大人になれば、色んな事情ができる。学生の間も同じだ。悩みは尽きないから」
さらに優しく抱きしめられた。もたれ掛かって目を閉じていると、規則正しいリズムが聞こえて来た。それは自分も同じだ。初めて体を密着させた時は、バクバクと鼓動が打っていたのに。
「こうすると落ち着くんだ。初めの頃は近づくだけで、ドキドキしていたのに……」
「慣れたのか?つまらないなあ」
「バカ……」
言い返した後、自分の方からも背中に両手を回した。すると、早瀬がため息をついたから、どうしたのかと気になって見上げた。
「裕理さん?」
「……」
胸の鼓動が高鳴った。真剣な目で見つめられていたからだ。少しだけ体を離して見つめ合った。
「悠人君。『家族になろう』って言ったのを、覚えているか?」
「もちろん覚えているよ。嬉しかったからさ。交差点の信号待ちだったね。青信号になって、後ろからクラクションを鳴らされたっけ……」
あの時、早瀬の元へ行くことを決めた。怖がらずに、温かい居場所への扉を開いた。
「それでも怖がっているよね?俺が居なくなるんじゃないかと……」
「だって、実家がそうだし。ごめんね……」
「謝らなくてもいい。そういう風に思わせているのは、俺だ……」
見つめ合ったままの状態で、お互いの頬に触れあった。顔が近づいて来たからキスを待ったのに、ちっとも降りてこない。目を開けて見上げると、優しい眼差しが向けられていた。
「悠人君、これならどうかな?いい言葉があるんだけど」
「どんな言葉?魔法使いの呪い?」
「違うよ。魔法じゃない。現実のものだ」
「どんなものだよ?」
「悠人、結婚しよう」
「……」
告げられた言葉の衝撃に、どんな言葉を返していいのか分からなかった。同性同士は出来ない。いや、夏樹たちは結婚している。頭の中には嵐が巻き起こっている。早瀬は真剣であり、俺の返事を待っている。
「悠人、返事は?」
「待ってよーー」
「待たない。ここで返事を言うんだ」
「そんな……」
「悠人、愛している」
「裕理さん……」
「紙一枚で婚姻、離婚が決まるんだろう?俺たちはそれがない。紙自体が無いなら、離婚もできないよ。だから一緒にいるしかない」
「……っ」
頭の中が混乱しているのに、嬉しくて涙が溢れて来た。こんなにも、はっきりとした言葉がもらえた。一緒に暮らす現実だけでなくて、素敵な現実も贈られた。色んな事が起きすぎて、思考が追い付かない。返事をしたいのに、嗚咽で言葉が出せない。
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