42 / 259
3-19
しおりを挟む
15時半。
野外ステージの観客席にいる。これからステージを観るためだ。青い空が広がり、真夏の太陽が降り注いでいる。30分ほど立っているだけで、汗が流れ落ちてきた。さっきまでマジカル少女ミカリンと、月夜のレンジャーのステージショーをやっていた。歓声を上げているのは子供が多かった。俺も負けずに歓声をあげていると、早瀬が肩を揺らして笑っていた。帰った後も、イジられるだろう。
「悠人君。大丈夫か?ゼエゼエ言っているぞ」
「平気だよ。ああー、始まるよー」
「ああ……」
ベテルギウスの出番が来た。さっきまで植本さんと普通に話していたのが信じられない。ステージに立っている姿は雲の上の人だ。照明が暗くなった後、白いストロボ照明が光った。ドキドキしながら開演を待った。
ギターの音が響き、ドラムが鳴った。ストロボ照明がいくつも点灯し、光線のようにステージへ降り注いだ。次の瞬間、ステージ全体が赤くなった。ステージ脇から、ヴォーカルが観客を煽りながら登場した。
「ベテルギウス、トリャー!!」
ヴォーカルが大きく声を張り上げると、ステージから大きなスモークが上がった。そして、一気に周りから歓声が上がった。
「トリャー!って、月夜のレンジャーだよね?」
「悠人君に変身したのかな?」
「ヘヘヘ」
ドラム音、ギターのフレーズ、ベース、ヴォーカルの歌声がステージから響いた。すると、立て続けに2曲目に入った。観客が湧きたち、両腕を空へ突き上げている。演奏とヴォーカルの歌声と観客のノリが一体化したような気分だ。激しいリズムと綺麗な旋律が混ざり合っている。俺は耳をすませて、ベースの音を聴いた。
「裕理さん!ベースとドラムはセットだけどさ。ヴォーカルがベースとズレたら変だよね?」
「ああ、そうだよ。ズレているか?」
「ううん、ベテルギウスのことじゃないよ。俺がやっていたバンドのことだよよ。違和感があったから、何だろうって思ってた。やっと分かったよ!」
「そうか」
「わあああーっ、あのソロ、カッコいいー!植本さんーー!」
歓声を上げると、同じように周りからも声があがった。何度もジャンプをしているうちに演奏が終わった。拍手の中をメンバーが手を振っている。周りでは、植本さんからギターのピックが投げられて、それを受け取りたくて、たくさんの人の手が揺れている。この一体感が好きでバンドを始めた。すると、植本さんのピックが飛んできて受け取った。早瀬が苦笑して見ている。
「わわ……。キャッチ!」
「いつでも貰えるだろう」
「うん。よーし!」
そばにいた中学生の子にピックを渡した。植本さんのギタープレイに釘付けだったから、ファンなのだろう。
「ありがとう!」
「いいよー」
「へへへ……」
男の子の笑顔を見て思った。もしかしたら、何年先には同じステージに立っているかも知れない。そうなればいいなと思いながら、ディアドロップの出番を待った。
ガガガ……、ビー……、ザワザワ……。
ベテルギウスのステージが終わり、ブレイクタイムを迎えている。次はディアドロップの番だ。準備の間、司会者のアナウンサーとミュージシャンが会話をして場を繋いでいる。2人の会話が面白くて、観客が笑い声に包まれている。
「おまたせしましたー!ディアドロップ、回転木馬!!」
「初めて聴くよーー」
大きな拍手が巻き起こった。特徴的なギターフレーズが刻まれて、会場へ響き渡った。2時間前に話していた人がステージに立っていた。佐久弥のことだ。あんぐりと口が開いたままになった。どうして今まで聴かなかったのか?そう悔やむ程に、演奏が上手いと思った。
「裕理さん!すごいね!」
「ああ。コード進行に特徴があるだろう?」
「うん……」
早瀬が笑顔でステージを見ている。眩しそうにしているのは、夏の太陽のせいではないだろう。早瀬、植本さん、桜木さん、佐久弥。自分の周りには演奏力がある人がいる。とてもかなわないことは分かっている。それでもいいから、いつか越してみたいと思った。
来月のコンテストには父が来るだろうか?もし来た時には、最大限の力を発揮した演奏を聴かせたい。交換条件を突き付けた以上、カッコ悪いところは見せられない。胸を張って会いたい。ステージが終わった後、早瀬からイジられながら我が家へと帰った。
野外ステージの観客席にいる。これからステージを観るためだ。青い空が広がり、真夏の太陽が降り注いでいる。30分ほど立っているだけで、汗が流れ落ちてきた。さっきまでマジカル少女ミカリンと、月夜のレンジャーのステージショーをやっていた。歓声を上げているのは子供が多かった。俺も負けずに歓声をあげていると、早瀬が肩を揺らして笑っていた。帰った後も、イジられるだろう。
「悠人君。大丈夫か?ゼエゼエ言っているぞ」
「平気だよ。ああー、始まるよー」
「ああ……」
ベテルギウスの出番が来た。さっきまで植本さんと普通に話していたのが信じられない。ステージに立っている姿は雲の上の人だ。照明が暗くなった後、白いストロボ照明が光った。ドキドキしながら開演を待った。
ギターの音が響き、ドラムが鳴った。ストロボ照明がいくつも点灯し、光線のようにステージへ降り注いだ。次の瞬間、ステージ全体が赤くなった。ステージ脇から、ヴォーカルが観客を煽りながら登場した。
「ベテルギウス、トリャー!!」
ヴォーカルが大きく声を張り上げると、ステージから大きなスモークが上がった。そして、一気に周りから歓声が上がった。
「トリャー!って、月夜のレンジャーだよね?」
「悠人君に変身したのかな?」
「ヘヘヘ」
ドラム音、ギターのフレーズ、ベース、ヴォーカルの歌声がステージから響いた。すると、立て続けに2曲目に入った。観客が湧きたち、両腕を空へ突き上げている。演奏とヴォーカルの歌声と観客のノリが一体化したような気分だ。激しいリズムと綺麗な旋律が混ざり合っている。俺は耳をすませて、ベースの音を聴いた。
「裕理さん!ベースとドラムはセットだけどさ。ヴォーカルがベースとズレたら変だよね?」
「ああ、そうだよ。ズレているか?」
「ううん、ベテルギウスのことじゃないよ。俺がやっていたバンドのことだよよ。違和感があったから、何だろうって思ってた。やっと分かったよ!」
「そうか」
「わあああーっ、あのソロ、カッコいいー!植本さんーー!」
歓声を上げると、同じように周りからも声があがった。何度もジャンプをしているうちに演奏が終わった。拍手の中をメンバーが手を振っている。周りでは、植本さんからギターのピックが投げられて、それを受け取りたくて、たくさんの人の手が揺れている。この一体感が好きでバンドを始めた。すると、植本さんのピックが飛んできて受け取った。早瀬が苦笑して見ている。
「わわ……。キャッチ!」
「いつでも貰えるだろう」
「うん。よーし!」
そばにいた中学生の子にピックを渡した。植本さんのギタープレイに釘付けだったから、ファンなのだろう。
「ありがとう!」
「いいよー」
「へへへ……」
男の子の笑顔を見て思った。もしかしたら、何年先には同じステージに立っているかも知れない。そうなればいいなと思いながら、ディアドロップの出番を待った。
ガガガ……、ビー……、ザワザワ……。
ベテルギウスのステージが終わり、ブレイクタイムを迎えている。次はディアドロップの番だ。準備の間、司会者のアナウンサーとミュージシャンが会話をして場を繋いでいる。2人の会話が面白くて、観客が笑い声に包まれている。
「おまたせしましたー!ディアドロップ、回転木馬!!」
「初めて聴くよーー」
大きな拍手が巻き起こった。特徴的なギターフレーズが刻まれて、会場へ響き渡った。2時間前に話していた人がステージに立っていた。佐久弥のことだ。あんぐりと口が開いたままになった。どうして今まで聴かなかったのか?そう悔やむ程に、演奏が上手いと思った。
「裕理さん!すごいね!」
「ああ。コード進行に特徴があるだろう?」
「うん……」
早瀬が笑顔でステージを見ている。眩しそうにしているのは、夏の太陽のせいではないだろう。早瀬、植本さん、桜木さん、佐久弥。自分の周りには演奏力がある人がいる。とてもかなわないことは分かっている。それでもいいから、いつか越してみたいと思った。
来月のコンテストには父が来るだろうか?もし来た時には、最大限の力を発揮した演奏を聴かせたい。交換条件を突き付けた以上、カッコ悪いところは見せられない。胸を張って会いたい。ステージが終わった後、早瀬からイジられながら我が家へと帰った。
0
あなたにおすすめの小説
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
青い月の天使~あの日の約束の旋律
夏目奈緖
BL
溺愛ドS×天然系男子 俺様副社長から愛される。古い家柄の養子に入った主人公の愛情あふれる日常を綴っています。心臓に疾患を抱えながら、ロックバンドのボーカルとしてステージに立つ夏樹。彼を溺愛するのは、年上で俺様な副社長・黒崎圭一。夏樹は養子として名家に迎えられ、音楽と経営、二つの人生の狭間で揺れていた。それでも黒崎は、束縛と独占欲を隠すことなく、夏樹のすべてを受け止めようとする。ステージを降りる日が近づくかもしれない中、家族の問題、過去の傷、そして未来への不安が静かに忍び寄る。繋いだ手を、決して離さないと誓った二人の、溺愛と再生の物語。※本作からでもお読みいただけます。
黒崎家には黒崎の兄弟達が住んでいる。黒崎の4番目の兄の一貴に親子鑑定を受けて、正式に親子にならないかと、父の隆から申し出があり、一貴の心が揺れる。そして、親子鑑定に恐れを持ち、精神的に落ち込み、愛情を一身に求める子供の人格が現われる。自身も母親から愛されなかった記憶を持つ黒崎は心を痛める。黒崎家に起こることと、黒崎に寄り添う夏樹。
作品時系列:「恋人はメリーゴーランド少年だった。」→「恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編」→「アイアンエンジェル~あの日の旋律」→「夏椿の天使~あの日に出会った旋律」→「白い雫の天使~親愛なる人への旋律」→「上弦の月の天使~結ばれた約束の夜」→本作「青い月の天使~あの日の約束の旋律」
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は
綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。
ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。
成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。
不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。
【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる