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4-1 早瀬の一日(早瀬視点)
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7月19日、木曜日。午前5時半。
キッチンで朝食の準備をしているところだ。今朝はトマトをたっぷり使ったミネストローネを用意した。悠人はトマトが苦手なようだ。だから、食べさせることにした。昨夜のことだ。このスープを仕込んでいると、彼が近寄ってこなかった。普段なら、何を作っているのかと、クンクンと鼻を鳴らして寄って来るのに。
(苦手なものはラディッシュだけ?嘘が下手だなあ……)
カタカタ……。バスルームの方向から物音がした。パタパタ……。スリッパの音が近づいて来た。ボディーソープの匂いがしたから振り返ろうとすると、先に背後から抱きつかれた。
「裕理さん、おはようー」
「おはよう」
「大好きだよ!」
「ありがとう。それでもスープは飲んでもらうよ」
「……」
「トマトのことも大好きになってもらいたい」
「……」
両腕を引っ込めて立ち去ろうとしたから、Tシャツの襟元を掴んで引っ張った。モゾモゾと動いて逃げようとしている。
「いいじゃん、他の野菜は食べているから!」
「進んで食べるのはレタスだけのはずだ。少しずつ苦手を克服していこう」
「うん……」
「返事は『はい』だよ」
「……」
「ビーフシチューが逃げるぞ?」
「はーーい」
「いい子だね。もうすぐ出来るから手伝って。オムレツがあるよ」
「はーい!」
こういう時はいい返事をする。なんて分かりやすい子なのか。ダイニングテーブルで向かい合わせに座り、朝食を取った。大きな窓からは、遠くのビル群が見えている。湾を挟んだ対岸のものだ。この景色は他の場所からも見ることが出来る。その場所を探しに探索に行こうと、悠人と話したところだ。
「はふ~~……」
「美味しい?」
「うん。感動したよ。プレーンオムレツがこんなにおいしいんだね」
「このケチャップも美味しいよ。かけてごらん」
「このままがいい」
ケチャップを掛けられたくないのだろう。あっという間にオムレツを平らげていた。この華奢な体の、どこに入るのかと不思議に思う。いい食べっぷりを見せられると、何でも作ってやりたくなる。
「ミネストローネを食べてごらん。酸っぱくないよ」
「うーん……」
「甘いトマトを使ったし、工夫してある。野菜も細かく切ってあるから、青臭さがないはずだ」
「はい……」
「どうだ?」
「ゆ、裕理さん!?」
「ん?どうした?」
悠人が呆然とした顔になった。スプーンを持ったままで震えているから心配になった。顔を覗き込むと、両目を潤ませている。
「どうした?」
「美味しいー!」
「……」
「すごいね!美味しいよーー」
あんなに嫌がっていたミネストローネなのに、勢いよく口に運んでいる。それでも行儀がいいから、口元を汚していない。苦手なセロリも入れてあるのに、気がつかなかったのだろうか?
「はふ~っ、ジャガイモが美味しいよ」
「作って良かった。これなら平気だね?」
「うん!セロリも入ってるのにね。食わず嫌いだったのかな?サッパリしてて美味しいよ」
「そうか……」
あっという間にスープカップが空になり、おかわりするとまで言い出した。キッチンへ走って行き、鍋から注ぎ入れている。鼻歌まで出ているから、よっぽど気に入ったのだろう。
「そんなに入れてきて、他の物が食べられるのか?」
「大丈夫だよ、ぜーんぶ食べるから」
その言葉の通り、ペロっと腹に入れた。満足そうに溜め息をついて笑っている。もっと眺めていたいもが、今日は平日だ。片づけをすることにした。すると、悠人がトレーを運び始めた。
「俺が片づけるから。テレビを観ていてよ」
「一緒にやろう」
「ううん。疲れているだろ?最近、忙しかったし。バンドの練習も見てくれているし」
「お言葉に甘えるよ」
「うん!……げええええ」
「……」
何かやったのだろう。ここで手伝うとヘソを曲げる。お願いしますと声を掛けてソファーへ座った。そして、物音が聞こえる度に笑いを押し殺した。
キッチンで朝食の準備をしているところだ。今朝はトマトをたっぷり使ったミネストローネを用意した。悠人はトマトが苦手なようだ。だから、食べさせることにした。昨夜のことだ。このスープを仕込んでいると、彼が近寄ってこなかった。普段なら、何を作っているのかと、クンクンと鼻を鳴らして寄って来るのに。
(苦手なものはラディッシュだけ?嘘が下手だなあ……)
カタカタ……。バスルームの方向から物音がした。パタパタ……。スリッパの音が近づいて来た。ボディーソープの匂いがしたから振り返ろうとすると、先に背後から抱きつかれた。
「裕理さん、おはようー」
「おはよう」
「大好きだよ!」
「ありがとう。それでもスープは飲んでもらうよ」
「……」
「トマトのことも大好きになってもらいたい」
「……」
両腕を引っ込めて立ち去ろうとしたから、Tシャツの襟元を掴んで引っ張った。モゾモゾと動いて逃げようとしている。
「いいじゃん、他の野菜は食べているから!」
「進んで食べるのはレタスだけのはずだ。少しずつ苦手を克服していこう」
「うん……」
「返事は『はい』だよ」
「……」
「ビーフシチューが逃げるぞ?」
「はーーい」
「いい子だね。もうすぐ出来るから手伝って。オムレツがあるよ」
「はーい!」
こういう時はいい返事をする。なんて分かりやすい子なのか。ダイニングテーブルで向かい合わせに座り、朝食を取った。大きな窓からは、遠くのビル群が見えている。湾を挟んだ対岸のものだ。この景色は他の場所からも見ることが出来る。その場所を探しに探索に行こうと、悠人と話したところだ。
「はふ~~……」
「美味しい?」
「うん。感動したよ。プレーンオムレツがこんなにおいしいんだね」
「このケチャップも美味しいよ。かけてごらん」
「このままがいい」
ケチャップを掛けられたくないのだろう。あっという間にオムレツを平らげていた。この華奢な体の、どこに入るのかと不思議に思う。いい食べっぷりを見せられると、何でも作ってやりたくなる。
「ミネストローネを食べてごらん。酸っぱくないよ」
「うーん……」
「甘いトマトを使ったし、工夫してある。野菜も細かく切ってあるから、青臭さがないはずだ」
「はい……」
「どうだ?」
「ゆ、裕理さん!?」
「ん?どうした?」
悠人が呆然とした顔になった。スプーンを持ったままで震えているから心配になった。顔を覗き込むと、両目を潤ませている。
「どうした?」
「美味しいー!」
「……」
「すごいね!美味しいよーー」
あんなに嫌がっていたミネストローネなのに、勢いよく口に運んでいる。それでも行儀がいいから、口元を汚していない。苦手なセロリも入れてあるのに、気がつかなかったのだろうか?
「はふ~っ、ジャガイモが美味しいよ」
「作って良かった。これなら平気だね?」
「うん!セロリも入ってるのにね。食わず嫌いだったのかな?サッパリしてて美味しいよ」
「そうか……」
あっという間にスープカップが空になり、おかわりするとまで言い出した。キッチンへ走って行き、鍋から注ぎ入れている。鼻歌まで出ているから、よっぽど気に入ったのだろう。
「そんなに入れてきて、他の物が食べられるのか?」
「大丈夫だよ、ぜーんぶ食べるから」
その言葉の通り、ペロっと腹に入れた。満足そうに溜め息をついて笑っている。もっと眺めていたいもが、今日は平日だ。片づけをすることにした。すると、悠人がトレーを運び始めた。
「俺が片づけるから。テレビを観ていてよ」
「一緒にやろう」
「ううん。疲れているだろ?最近、忙しかったし。バンドの練習も見てくれているし」
「お言葉に甘えるよ」
「うん!……げええええ」
「……」
何かやったのだろう。ここで手伝うとヘソを曲げる。お願いしますと声を掛けてソファーへ座った。そして、物音が聞こえる度に笑いを押し殺した。
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