61 / 259
6-4
しおりを挟む
19時。
今、晩ご飯の時間を迎えている。ダイニングテーブルには、大好物のビーフシチュー、海老とホタテのアンチョビガーリック炒め、田中屋のフランスパン、大盛りサラダ、オレンジ入りにんじんのラぺが並んでいる。
テーブルの向かいでは、早瀬がうちわで扇いでいる。スタジオの帰りに手づくりキットを買い、帰ってきた後、すぐに作っていた。そして、さっそく使っている。うちわの両面には俺の写真が貼り付けられている。ものすごく恥ずかしい。
「げえええっ。使うなよー!」
「いいじゃないか。愛情うちわだ」
「やめてよーっ」
「2枚作ったよ。会社用と家用だ」
「ひいいいいっ」
どんなに嫌がっても逆効果だ。早瀬のそばに立って奪おうとしたが、反射神経では勝てなかった。おまけに、うちわを高く持ち上げられて届かない。
「ほーら、取ってごらん~?」
「もう!腹立つーー」
「悠人~?こっちだよ~?パタパターー」
「俺はネコじゃないから!」
早瀬の肩にすがりついてジャンプをしていると、うちわをキャッチすることが出来た。これを部屋の中に隠してしまおうと決めた。そして、奪えて達成感を得ていると、抱きしめられた。強い力だ。
「力が強いよーーっ」
「これぐらいしないと逃げるだろう?」
「裕理さんがいじめっ子だからだよ」
「苛めたい衝動にかられる」
「もう離してよ。お腹が空いたから……」
「ダーメ」
「んん?ん、ん、んん!?」
「悠人、好きだ」
「うん……」
軽いキスをされた後、深いものに変化していった。さっきシャワーを浴びたばかりだから、早瀬の体からは、俺と同じボディーソープの匂いがしている。同じ家にいる証拠だ。胸が痛くなった。すると、早瀬に体をあちこち触られた。
「ゆうりさ……ん、痴漢みたいだよ」
「ん?俺の体だぞ?いいだろう?」
「お腹が空いてること、分かっているよね?グーグー鳴ってるんだよーー」
「俺は別の意味で腹ペコだ。3日も食べていない」
その意味は分かっている。バンド練習と早瀬の1泊2日の出張があったからだ。3日も何もしていない。自分としても寂しい。それでも言えない。今夜から一緒に寝られるから良かったと。
「悠人君はどう?」
「どこに触っているんだよ!ご飯を食べてからだよ!あ……」
言ってしまった。顔が熱くなった。早瀬が笑いながら首筋に吸い付いてきた。キスマークが薄くなったからだろう。そして、彼の肩を押して離れようとした時、佐久弥からの話を思い出した。
「いつも同じ場所に付けるよね?」
「……迷子の予防だよ」
「前からそうなのー?」
「いや、初めてだ。面倒くさがりだからね……」
「そうなんだ……」
「佐久弥から嘘を吹き込まれたのか?」
「えーっと……」
「俺は嘘をつかない。分かったか?」
「うん……」
「返事は『はい』だよ」
「はーい!」
ほんの少しだけ反発した返事をした。鼻をつままれてしまったが、優しい力だった。疑問に思うことは何でも聞いてくれと言われた。そして、怒らないし、俺に怒ることを君が言うわけがないから、何でも話してごらんと言われた。
早瀬はそれだけ言うと、別の話題に変えてくれた。バンドコンテスト後の楽しい計画の話だ。これからも一緒にいるよ。そう早瀬から囁かれた後、頷いた。俺も同じだ。彼の体にすがりつくように抱きつき、大好きだと伝えた。
今、晩ご飯の時間を迎えている。ダイニングテーブルには、大好物のビーフシチュー、海老とホタテのアンチョビガーリック炒め、田中屋のフランスパン、大盛りサラダ、オレンジ入りにんじんのラぺが並んでいる。
テーブルの向かいでは、早瀬がうちわで扇いでいる。スタジオの帰りに手づくりキットを買い、帰ってきた後、すぐに作っていた。そして、さっそく使っている。うちわの両面には俺の写真が貼り付けられている。ものすごく恥ずかしい。
「げえええっ。使うなよー!」
「いいじゃないか。愛情うちわだ」
「やめてよーっ」
「2枚作ったよ。会社用と家用だ」
「ひいいいいっ」
どんなに嫌がっても逆効果だ。早瀬のそばに立って奪おうとしたが、反射神経では勝てなかった。おまけに、うちわを高く持ち上げられて届かない。
「ほーら、取ってごらん~?」
「もう!腹立つーー」
「悠人~?こっちだよ~?パタパターー」
「俺はネコじゃないから!」
早瀬の肩にすがりついてジャンプをしていると、うちわをキャッチすることが出来た。これを部屋の中に隠してしまおうと決めた。そして、奪えて達成感を得ていると、抱きしめられた。強い力だ。
「力が強いよーーっ」
「これぐらいしないと逃げるだろう?」
「裕理さんがいじめっ子だからだよ」
「苛めたい衝動にかられる」
「もう離してよ。お腹が空いたから……」
「ダーメ」
「んん?ん、ん、んん!?」
「悠人、好きだ」
「うん……」
軽いキスをされた後、深いものに変化していった。さっきシャワーを浴びたばかりだから、早瀬の体からは、俺と同じボディーソープの匂いがしている。同じ家にいる証拠だ。胸が痛くなった。すると、早瀬に体をあちこち触られた。
「ゆうりさ……ん、痴漢みたいだよ」
「ん?俺の体だぞ?いいだろう?」
「お腹が空いてること、分かっているよね?グーグー鳴ってるんだよーー」
「俺は別の意味で腹ペコだ。3日も食べていない」
その意味は分かっている。バンド練習と早瀬の1泊2日の出張があったからだ。3日も何もしていない。自分としても寂しい。それでも言えない。今夜から一緒に寝られるから良かったと。
「悠人君はどう?」
「どこに触っているんだよ!ご飯を食べてからだよ!あ……」
言ってしまった。顔が熱くなった。早瀬が笑いながら首筋に吸い付いてきた。キスマークが薄くなったからだろう。そして、彼の肩を押して離れようとした時、佐久弥からの話を思い出した。
「いつも同じ場所に付けるよね?」
「……迷子の予防だよ」
「前からそうなのー?」
「いや、初めてだ。面倒くさがりだからね……」
「そうなんだ……」
「佐久弥から嘘を吹き込まれたのか?」
「えーっと……」
「俺は嘘をつかない。分かったか?」
「うん……」
「返事は『はい』だよ」
「はーい!」
ほんの少しだけ反発した返事をした。鼻をつままれてしまったが、優しい力だった。疑問に思うことは何でも聞いてくれと言われた。そして、怒らないし、俺に怒ることを君が言うわけがないから、何でも話してごらんと言われた。
早瀬はそれだけ言うと、別の話題に変えてくれた。バンドコンテスト後の楽しい計画の話だ。これからも一緒にいるよ。そう早瀬から囁かれた後、頷いた。俺も同じだ。彼の体にすがりつくように抱きつき、大好きだと伝えた。
0
あなたにおすすめの小説
愛されSubは尽くしたい
リミル
BL
【Dom/Subユニバース】
玩具メーカーの取締役開発部長Dom(37)×元子役の大学生Sub(20)
かつて天才子役として名を馳せていた天使 汐は、収録中にSub drop(サブドロップ)に陥り、生死の境をさまよう。
不安定になっていた汐を救ったのは、スーツ姿の男だった。
素性や名前も知らない。でも、優しく撫でて「いい子」だと言ってくれた記憶は残っている。
父親の紹介で、自身の欲求を満たしてくれるDomを頼るものの、誰も彼も汐をひたすらに甘やかしてくる。こんなにも尽くしたい気持ちがあるのに。
ある夜、通っているサロンで不正にCommand(コマンド)を使われ、心身ともにダメージを負った汐を助けたのは、年上の男だ。
それは偶然にも15年前、瀕死の汐を救った相手──深見 誠吾だった。
運命的な出会いに、「恋人にもパートナーにもなって欲しい」と求めるも、深見にきっぱりと断られてしまい──!?
一筋縄ではいかない17才差の、再会から始まるラブ!
Illust » 41x様
新緑の少年
東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。
家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。
警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。
悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。
日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。
少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。
少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。
ハッピーエンドの物語。
laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~
seaco
BL
バー「BIRTH」で働くイケメン久我 侑利(くが ゆうり)は、雨続きで利用したコインランドリーで辛い過去を持つ美人系男子の羽柴 慶(はしば けい)と出会う。
少しずつお互いに気になり始めて、侑利の家に居候する事になる慶。
辛い過去や、新しい出会い、イケメン×無自覚美形の日常の色々な出来事。
登場人物多数。
基本的に「侑利目線」ですが、話が進むにつれて他の登場人物目線も出て来ます。その場合はその都度、誰目線かも書いて行きます。何も無いのは全て「侑利目線」です。
また、予告なく絡みシーンが出て来る事がありますが、グロいものではありません(^^;
初めての投稿作品なので…表現などおかしい所もあるかと思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです。
ひろいひろわれ こいこわれ ~華燭~
九條 連
BL
さまざまな問題を乗り越え、ヴィンセントの許で穏やかな日常を送る莉音に、ある日、1通のハガキが届く。
それは、母の新盆に合わせて上京する旨を記した、父方の祖父母からの報せだった。
遠く離れた九州の地に住む祖父母の来訪を歓迎する莉音とヴィンセントだったが、ふたりの関係を祖父に知られてしまったことをきっかけに事態は急変する。
莉音と祖父、そして莉音とヴィンセントのあいだにも暗雲が立ちこめ――
『ひろいひろわれ こいこわれ』続編
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる