海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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7-11(早瀬視点)

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 13時半。

 遠藤さんから声を掛けられた後、IKUの関係者が詰めているスペースに移動し、ステージを眺めている。もうすぐで悠人達の出番だ。ステージの近くには、関係者席が設けられている。その中にはレコード会社と音楽雑誌などの関係者が集まっている。俺達はさらにその中に移動して、遠藤さんと並んでステージが始まるのを待った。今回のコンテストのプロデューサーの高宮さんも同席している。悠人達のバンドに注目しているという話だ。特に目を引いているのが桜木だと聞かされた。

「悠人君、緊張していただろう」
「ええ。手に汗をかいていました」
「そうか」

 遠藤さんが笑った。高宮さんがメモを取っている。悠人達にとって、最良の道であればいいと願った。すると、高宮さんからメモを渡されたIKUの社員が、どこかに電話をかけ始めた。悪いと思いながらも聞き耳を立てた直後、驚いた。相手は佐久弥だった。佐伯さんと言っているからだ。そして、バンド名と、夏樹と悠人の名前も出ていた。

(……どういうことだ?)

 ビーーッ、ガタガタガタ……。

 スタッフの手により、次のバンドの演奏準備が完了した。水を打ったように慌ただしさが静まり、司会者のアナウンスが響いた。悠人達の出番だ。

「次のバンドは……、IRON ANGEL!!」

 司会者からバンド名が告げられた直後、ステージの照明が暗く落ちた。

「おおー、けっこう派手にやったなー」
「期待している証拠ですね。もう一つのバンドも……」

 ステージが赤い光に包まれた。そして、演奏が始まると同時に白いストロボ照明が光った。さらにドラム音が響くと、ギターの音色が会場中に響き渡った。

「炎天下の中……ありがとうございます!!」

 それはドスの聞いた声だった。最初は誰の声か分からなかった。ステージの脇から赤い衣装をひるがえした人物が出て来た。それは夏樹だった。Tシャツの上から赤い浴衣を羽織り、まるで別人のような雰囲気を持っていた。サイドに立つ悠人にも自然と視線が向く。2人には華やかなオーラがあった。
 
「アイアン・エンジェル!!開幕―!!」
「かいまくーー!」

 悠人の声が重なった。彼らが青空に向かって声を大きく張り上げると、ステージ前方から4つの煙が吹き上がった。派手な演出だ。目立たせようとしているのが一目瞭然だ。

 観客がざわめき、歓声が上がった。激しいドラム音が鳴り響き、演奏が始まった。悠人の向日葵のような笑顔が開花し、夏樹の赤いオーラが際立たった。

 あの2人が選ばれるのだと、この瞬間に分かった。有望な新人として、ピックアップされたのだろう。その証拠に、高宮さんがカメラマンへ指示を出し、何台ものカメラが夏樹達を映している。さらに、ステージ下の音声スタッフの様子が慌ただしくなった。そこで、俺と佐久弥が出たコンテストのことを思い出した。

(俺達も同じだった。久弥と選ばれた。久弥と同じ道を選んで欲しい……)

 当時、俺達は仲が良かった。メジャーデビューに誘われた時、久弥はいつまでも俺と音楽活動をするものだと思っていた。しかし、道が別れた。俺はコンテストに入賞した時のことを思い出し、胸が熱くなった。しかし、今は演奏に集中しよう。関係者席が沸き立っている。悠人達が目立っているからだ。俺は彼らの姿を目に焼き付けた。
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