海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 ロビーに到着すると、佐久弥が大きな窓からの景色を眺めていた。ここの住人から声を掛けられ、丁寧に話をして握手して別れていた。ディアドロップの佐久弥は気軽に話さないイメージだった。しかし、そうでも無いことを知った。

「さくやー。おまたせ!」
「おおー、顔色がいいじゃないか。現実が戻って来たのか?」
「うん。和風トーストを焼くからね。3枚で足りる?4枚切りのパンだけど」
「ぎゃははは。お前、本当に大食いだなーー。食べるのは、それだけじゃないだろう?」
「うん。和風パスタもあるよ。食べて行ってよ」
「二人の分だろう。俺はトーストだけで……」
「たくさん作ってあるんだ。俺、足りなかったら、パンを増量するからさーー」
「ありがとう」
「うん。裕理さんの和風パスタは美味しいよ。トーストはしらすと大葉とチーズのトッピングだよ。眠たいの?」
「ああ。一時間だけ寝てきた……」
「あああ……」
 
 佐久弥が上着のフードを取ると、いかにも寝起きだという顔が現れた。疲れているだろう。早く部屋に来て休んでもらいたい。そう思って、自然と佐久弥の手を引き、部屋へ連れて行った。
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