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いくら沙耶さんが相手とはいえ、ここに聡太郎が居ないのに、彼の家庭の事情を喋らない方はいいと思い、戸惑っていると、黒崎から話してやれと言われて、聡太郎のことを話した。
沙耶さんが、菅野澄香さんの写真を表示させた。海外のオーケストラとの共演の時のものだった。聡太郎と似ている人だった。濡れたような目が印象的で、静かに微笑んでいる。同じ笑い方をしている。もしかして、お母さんだろうか。
「素敵な女性だわ……。そうだ。夏樹君。同級生の写真はないの?」
「あるよ。これなんかどうかな?半泣きの悠人が笑ったんだ」
「どれどれ?」
沙耶さんが気を遣ってくれたようだ。他のメンバーの話題へ変えてくれた。ちょうど面白い写真がある。藤沢と悠人の写真を見て、彼女が吹き出して笑った。
「男の子ねえ。いいわねえ~」
「悠人君は、こういう子だったのか」
「うん。面白いだろ?」
沙耶さんに見せたのは、聡太郎が飲んでいたビールを倒してしまい、悠人が慌てふためいた後の写真だ。その後、俺までジュースのグラスを倒し、食べかけのプリンにかかってしまった。ショックで動けないでいると、悠人が吹き出して笑った。あの落ち込んだ姿が、元気なものに復活したきっかけになった出来事だった。
「可愛い子ね~。イケメンよ。3年後は驚くと思う。こういう幼い顔立ちの子が変わるのよ。そそっかしい子なの?あらー、好みだわ」
「仲間を見つけて、心強いじゃないか」
「ふふん。俺の上を行くかもしれないよ?本当は理系の学部を目指していたんだって。落ち着きがなくてそそっかしいから実験は危ない。そうお父さんからアドバイスをされて、法学部枠で受験したんだよ。本人はそう話していたよ」
お互いに気が合って話をしているけれど、俺と悠人は高校時代の話題があまり出ない。何となく避けている。悠人の方もだ。父から家庭事情を聞いていることは黙っている。俺の方も、中学時代のことを話していない。もしかすると、久田さんの方から聞かされているかも知れない。すると、黒崎から声をかけられた。
「もっと話してくれ。心配している」
「黒崎さん……」
「バンドメンバーをうちに連れて来い。新居に引っ越すまで待たなくても構わない。……沙耶、あの件だが」
黒崎が沙耶さんに声をかけた。沙耶さんが頷き、ファイルを取り出していた。それを見ている黒崎の目が真剣だった。でも、俺のことを見た時は、微笑んでいた。
「この後で、お母さんに会いに行くのよね?」
「その予定だ」
「事務所で調べておいたから」
「……助かった。母には聞いていない」
2人が大事な話をしている。俺は何も聞かないようにした。そして、この一か月半で起きた事を報告していき、その度に沙耶さんが呆れ笑いをしていた。昔のデート相手が聞いたら卒倒するという嫌味つきだった。思いきり笑いながら、楽しい時間を過ごすことができた。
沙耶さんが、菅野澄香さんの写真を表示させた。海外のオーケストラとの共演の時のものだった。聡太郎と似ている人だった。濡れたような目が印象的で、静かに微笑んでいる。同じ笑い方をしている。もしかして、お母さんだろうか。
「素敵な女性だわ……。そうだ。夏樹君。同級生の写真はないの?」
「あるよ。これなんかどうかな?半泣きの悠人が笑ったんだ」
「どれどれ?」
沙耶さんが気を遣ってくれたようだ。他のメンバーの話題へ変えてくれた。ちょうど面白い写真がある。藤沢と悠人の写真を見て、彼女が吹き出して笑った。
「男の子ねえ。いいわねえ~」
「悠人君は、こういう子だったのか」
「うん。面白いだろ?」
沙耶さんに見せたのは、聡太郎が飲んでいたビールを倒してしまい、悠人が慌てふためいた後の写真だ。その後、俺までジュースのグラスを倒し、食べかけのプリンにかかってしまった。ショックで動けないでいると、悠人が吹き出して笑った。あの落ち込んだ姿が、元気なものに復活したきっかけになった出来事だった。
「可愛い子ね~。イケメンよ。3年後は驚くと思う。こういう幼い顔立ちの子が変わるのよ。そそっかしい子なの?あらー、好みだわ」
「仲間を見つけて、心強いじゃないか」
「ふふん。俺の上を行くかもしれないよ?本当は理系の学部を目指していたんだって。落ち着きがなくてそそっかしいから実験は危ない。そうお父さんからアドバイスをされて、法学部枠で受験したんだよ。本人はそう話していたよ」
お互いに気が合って話をしているけれど、俺と悠人は高校時代の話題があまり出ない。何となく避けている。悠人の方もだ。父から家庭事情を聞いていることは黙っている。俺の方も、中学時代のことを話していない。もしかすると、久田さんの方から聞かされているかも知れない。すると、黒崎から声をかけられた。
「もっと話してくれ。心配している」
「黒崎さん……」
「バンドメンバーをうちに連れて来い。新居に引っ越すまで待たなくても構わない。……沙耶、あの件だが」
黒崎が沙耶さんに声をかけた。沙耶さんが頷き、ファイルを取り出していた。それを見ている黒崎の目が真剣だった。でも、俺のことを見た時は、微笑んでいた。
「この後で、お母さんに会いに行くのよね?」
「その予定だ」
「事務所で調べておいたから」
「……助かった。母には聞いていない」
2人が大事な話をしている。俺は何も聞かないようにした。そして、この一か月半で起きた事を報告していき、その度に沙耶さんが呆れ笑いをしていた。昔のデート相手が聞いたら卒倒するという嫌味つきだった。思いきり笑いながら、楽しい時間を過ごすことができた。
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