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23-7(夏樹視点)
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20時。
晩ご飯を食べた後、島川さんから貰ったスイーツを食べた。キッチンへ食器を返しに行くと、黒崎から電話が入ったことを聞いた。これから会議に出るというので、俺のことを呼びに行く時間がなかったという。部屋に戻ると、ラインが入っていた。電話できるか?というメッセージだった。でも、今からでは間に合わないだろう。
「あーあ……。声を聞きたかったなあ。すれ違ったよ」
結局、この時間まで黒崎と電話で話していない。さっき晩ご飯に呼ばれるまで寝ていた。退屈しているから、お義父さんの本置き場へ向かった。図書室の隣の部屋だ。本を読んでも良いということだ。天体や宇宙の本が多く置いてあるらしい。
「えーっと。ああ、この部屋だ……」
さっそく部屋へ入った。落ちついた色合いの絨毯が敷かれていた。小さな木のテーブルもある。図書室よりは規模が小さいが、それでも沢山の本が並んでいる。なぜか椅子が2客ある。
「うーん。いろんな本があるなあ。これは宇宙飛行士が書いた本だ……」
静まり返った部屋にいるから、なんだか寂しい気分になった。さっきの晩ご飯でも感じたことだ。お義父さんは夕方に帰宅する予定だったけれど、急な予定変更があり、帰りは深夜になるそうだ。
「黒崎さんも一人でご飯を食べたんだな。寂しいのを我慢していたんだなあ。入院先でも。忙しいから仕方なくても……。お茶ぐらいは飲んであげたらいいのに……」
客間で寝ている間、黒崎が子供時代を想像していた。レストランを作りたいと思うようになったのは、小学3年生の時だったらしい。拓海さんが仕事から早く帰宅できた日には一緒に晩御飯を食べていたそうだけれど、それは一週間に一回ぐらいだったそうだ。
ここのキッチンを借りて、晩ご飯を作った日のことを思い出した。言い合いをやめないお義父さんと黒崎の2人に、雷を落としてやった。これからはああいう時間が増えるだろう。俺の方も寂しくない。
「よし。気を取り直そう。これは新しいものだな。こっちは古いな~。んん?何か引っかかってる」
銀河系の写真集の間に、何かが引っかかっていた。ゆっくり取り出すと、見覚えのある表紙が目に飛び込んできた。それは黒崎が子供の頃に読んでいた絵本と同じ物だった。
「あれ?『You met on that day』だ。けっこう古びてる。黒崎さん、ここに置いていたんだ。無くしたって言うからさ~」
絵本を無くしたと言っていた。実家のどこかにあるのではないかと俺が言うと、探してもなかったと言っていた。そして、今日見つけた。
「あれ?誰だろう?」
なんとなくページを開くと紙が落ちてきて、絨毯の上から拾い上げた。女性の絵が描かれていた。線のタッチが、黒崎の描く絵と似ている。今から26年前の日付だった。黒崎が描いた絵だろう。
「黒崎さんが描いたんだね。うーん……、この絵本を隠していたみたいな置き方だなあ。お義父さん、黒崎さんに黙って、絵本を移動させたのかな。この絵が欲しかったのかな?それなら絵だけ持っていればいいよね……。黒崎さんが出て行くときに寂しくて、こっそり持ち出したのかもしれない。引越しの時、嬉しそうにしてたもんなあ」
ここへ遊びに来た時、お義父さんは寝ていたふりをしていた。言い合いをしている時は楽しそうに笑っていた。今日は、俺と一緒に晩ご飯が食べれなくなったことを、とても気にしていた。そういうことを昔から表現出来ていれば、誤解が生まれずに済んだのかもしれない。そして、黒崎はこの家から出て行かなかったのかも知れない。
「でも……。おかげで黒崎さんと出会えたんだ。申し訳ないけど、よかった……」
パタンと本を閉じて、最初にあったとおりに置いた。お義父さんには、見つけたことを内緒にするために。
晩ご飯を食べた後、島川さんから貰ったスイーツを食べた。キッチンへ食器を返しに行くと、黒崎から電話が入ったことを聞いた。これから会議に出るというので、俺のことを呼びに行く時間がなかったという。部屋に戻ると、ラインが入っていた。電話できるか?というメッセージだった。でも、今からでは間に合わないだろう。
「あーあ……。声を聞きたかったなあ。すれ違ったよ」
結局、この時間まで黒崎と電話で話していない。さっき晩ご飯に呼ばれるまで寝ていた。退屈しているから、お義父さんの本置き場へ向かった。図書室の隣の部屋だ。本を読んでも良いということだ。天体や宇宙の本が多く置いてあるらしい。
「えーっと。ああ、この部屋だ……」
さっそく部屋へ入った。落ちついた色合いの絨毯が敷かれていた。小さな木のテーブルもある。図書室よりは規模が小さいが、それでも沢山の本が並んでいる。なぜか椅子が2客ある。
「うーん。いろんな本があるなあ。これは宇宙飛行士が書いた本だ……」
静まり返った部屋にいるから、なんだか寂しい気分になった。さっきの晩ご飯でも感じたことだ。お義父さんは夕方に帰宅する予定だったけれど、急な予定変更があり、帰りは深夜になるそうだ。
「黒崎さんも一人でご飯を食べたんだな。寂しいのを我慢していたんだなあ。入院先でも。忙しいから仕方なくても……。お茶ぐらいは飲んであげたらいいのに……」
客間で寝ている間、黒崎が子供時代を想像していた。レストランを作りたいと思うようになったのは、小学3年生の時だったらしい。拓海さんが仕事から早く帰宅できた日には一緒に晩御飯を食べていたそうだけれど、それは一週間に一回ぐらいだったそうだ。
ここのキッチンを借りて、晩ご飯を作った日のことを思い出した。言い合いをやめないお義父さんと黒崎の2人に、雷を落としてやった。これからはああいう時間が増えるだろう。俺の方も寂しくない。
「よし。気を取り直そう。これは新しいものだな。こっちは古いな~。んん?何か引っかかってる」
銀河系の写真集の間に、何かが引っかかっていた。ゆっくり取り出すと、見覚えのある表紙が目に飛び込んできた。それは黒崎が子供の頃に読んでいた絵本と同じ物だった。
「あれ?『You met on that day』だ。けっこう古びてる。黒崎さん、ここに置いていたんだ。無くしたって言うからさ~」
絵本を無くしたと言っていた。実家のどこかにあるのではないかと俺が言うと、探してもなかったと言っていた。そして、今日見つけた。
「あれ?誰だろう?」
なんとなくページを開くと紙が落ちてきて、絨毯の上から拾い上げた。女性の絵が描かれていた。線のタッチが、黒崎の描く絵と似ている。今から26年前の日付だった。黒崎が描いた絵だろう。
「黒崎さんが描いたんだね。うーん……、この絵本を隠していたみたいな置き方だなあ。お義父さん、黒崎さんに黙って、絵本を移動させたのかな。この絵が欲しかったのかな?それなら絵だけ持っていればいいよね……。黒崎さんが出て行くときに寂しくて、こっそり持ち出したのかもしれない。引越しの時、嬉しそうにしてたもんなあ」
ここへ遊びに来た時、お義父さんは寝ていたふりをしていた。言い合いをしている時は楽しそうに笑っていた。今日は、俺と一緒に晩ご飯が食べれなくなったことを、とても気にしていた。そういうことを昔から表現出来ていれば、誤解が生まれずに済んだのかもしれない。そして、黒崎はこの家から出て行かなかったのかも知れない。
「でも……。おかげで黒崎さんと出会えたんだ。申し訳ないけど、よかった……」
パタンと本を閉じて、最初にあったとおりに置いた。お義父さんには、見つけたことを内緒にするために。
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