アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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23-9(黒崎視点)

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 6月4日、火曜日。16時半。
 
 空港のターミナル内を歩いている。これから家に帰るところだ。夏樹にはマカロンを土産に用意した。パンダやスカイツリー等がアイシングで描かれたものだ。早く帰ってやりたいが、マカロンだけでは物足りない。そこへ、羽田空港限定という表示に目が向いた。和風小物や、手ぬぐいなどが売られている。

(これは好きそうだ……)

 手ぬぐい、布きん、文房具類を選び、ラッピングをしてもらった。買い物時間は数分という『せっかちさ』を発揮し、正面エントランスへ向かった。今日は会社へ寄らずに帰ることが出来る。

(帰った後で、一貴の話をしよう。心配を掛けると思って、黙っていたんだろう……)

 昨日も今日も、夏樹からは一貴の話が出なかった。俺が帰った後に話をしてくれるだろうが、嫌みを言われたことは言わない気がした。どんなことからも守ると決めていたのに、みっともない話だ。

 今なら電話ができる。彼の方も会社に居るだろう。携帯電話を取り出し、一貴のオフィスへ電話をかけた。出たのは秘書だった。会議中だと言われたが、すぐに呼び出してもらった。そのまま電話を切らずに待っていると、一貴の声が聞こえて来た。俺からの電話の内容の、おおよその予想はついているようだ。

「……待たせた。何かあったのか?」
「……まだ起きていない。今後も起きないようにする。うるさい連中を止めておいてくれ」
「……母のことか?」
「……ああ。他にもある」
「……叔父連中の他には?うるさいのが5人居る」
「……その5人を頼む。後は対処する」
「……了解した。お詫びになればいいが。そっちの家に行かないようにさせる。お父さんの家へ行く口実も使わさない。……後で連絡する」
「……助かった」
「……助かっただと?圭一、どうしたんだ?」
「……ありがとう。一貴兄さん」
「……怒るな。すぐに取り掛かる」

 通話を終えた後、瑛子さんへ電話をかけた。父の最初の妻であり、拓海兄さんと晴海兄さんの母親だ。親戚連中が夏樹のことでどんな話を持ち込んでも、一切無視するように頼んだ。

 そして、厄介な叔父の一人へ連絡を取った。夏樹と話したい時は、必ず俺の方へ連絡を入れてもらいたいと頼んだ。この用件で終わりだ。これで、夏樹へ近づくことがないだろう。そして、夏樹にメッセージを送った。もうすぐ帰ると。
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