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15時。
我が家のリビングでは、一人と一匹の足音が聞こえている。山崎さんからの差し入れのドーナツを食べ終わった悠人が、アンと一緒にボールを追いかけて遊び始めた。悠人は動物が大好きだから、アンが嬉しそうにしている。
大学から我が家まで、早瀬さん以外のことを話しながら帰った。門の前で山崎さんに会い、悠人のことを紹介した。すると、悠人が急に紳士的な態度で接し始めたから、吹き出して笑った。女性には優しくするのがポリシーだから、変なリアクションも顔も見せられない。そう言いながら背筋を伸ばしていた。
珈琲を淹れてテーブルに置いた。アンには小さめに切ったリンゴを用意した。彼らに声をかけたが、夢中になって遊んでいる。
「アンーー。君は人懐っこいね。こっちのボールでも遊ぼうよ。跳ねるから面白いねーー」
悠人が近くに落ちていたボールを転がすと、アンが追いかけて行った。それを繰り返すうちに疲れたようで、ソファーの上に寝転がった。黒崎が座っている場所だから気に入っている。すると、悠人が言った。
「なつきー、急にごめんね」
「いいんだよ。気にしなくて」
「早瀬さんのこと、黙っててさ……」
「それも気にしなくていいよ」
「俺さ……、男に恋愛感情を持ったことがないから、分からなかったんだ。大学に入る前も、男から告白されていたし、襲われかけたこともあるんだよ。なんでだろうって、理解出来なかった。早瀬さんから、その、キ、キ……」
「キス?」
「ひいいいいっ」
「真っ赤だよ。初めてなんだね」
悠人から聞かされたのは、北添から見せられた写真は、奥村に送るために撮ったものだということだ。諦めてもらうために『恋人同士』のフリをしたそうだ。それ以上の話は出ないから、無理に聞き出さないことにした。
「付き合っている相手がいるって教えて成功したと思ったんだけど。あんなことになったよ……」
「何か起きても平気だよ。俺も森本も山崎もいるから」
北添達との言い争いは治った。いつの間にか、奥村があの場から居なくなっていた。また悠人に何かやろうとすれば、守ればいい。そのことを伝えると、悠人が照れくさそうに笑った。
「夏樹って強いねー。今日のことでも思ったけど。ここへ来て、結婚しているんだって実感したよ。義理のお父さんの近くに住んでて、ご飯を食べに行っているんだろ?大変じゃないの?彼女の親に会うだけでも、面倒くさいっていう奴がいるし」
「ううん。お義父さんは面白い人だから、一緒にいるのが楽しいよ。ただ、親戚の人がね~。うるさいみたいなんだ。よくある話だよ」
「大人って感じがする。同年代の奴らとは空気が違うもん。悪い意味じゃないからね」
「分かっているよ。この生活は自分が選択したことだから、後悔はしていないよ」
「カッコいい。俺はこのままだと宙ぶらりんだよ。法学部を選択したのだって、父親から言われたからだし。そそっかしいから理系に行くなっていうのは口実で、法学部に入れたかったんだろうし。それを素直に受け入れたんだ」
「……俺も宙ぶらりんだよ」
自分も同じだと思った。恵まれた環境にいることは理解している。居心地のいい家があり、黒崎という居場所がある。心強いものだ。
我が家のリビングでは、一人と一匹の足音が聞こえている。山崎さんからの差し入れのドーナツを食べ終わった悠人が、アンと一緒にボールを追いかけて遊び始めた。悠人は動物が大好きだから、アンが嬉しそうにしている。
大学から我が家まで、早瀬さん以外のことを話しながら帰った。門の前で山崎さんに会い、悠人のことを紹介した。すると、悠人が急に紳士的な態度で接し始めたから、吹き出して笑った。女性には優しくするのがポリシーだから、変なリアクションも顔も見せられない。そう言いながら背筋を伸ばしていた。
珈琲を淹れてテーブルに置いた。アンには小さめに切ったリンゴを用意した。彼らに声をかけたが、夢中になって遊んでいる。
「アンーー。君は人懐っこいね。こっちのボールでも遊ぼうよ。跳ねるから面白いねーー」
悠人が近くに落ちていたボールを転がすと、アンが追いかけて行った。それを繰り返すうちに疲れたようで、ソファーの上に寝転がった。黒崎が座っている場所だから気に入っている。すると、悠人が言った。
「なつきー、急にごめんね」
「いいんだよ。気にしなくて」
「早瀬さんのこと、黙っててさ……」
「それも気にしなくていいよ」
「俺さ……、男に恋愛感情を持ったことがないから、分からなかったんだ。大学に入る前も、男から告白されていたし、襲われかけたこともあるんだよ。なんでだろうって、理解出来なかった。早瀬さんから、その、キ、キ……」
「キス?」
「ひいいいいっ」
「真っ赤だよ。初めてなんだね」
悠人から聞かされたのは、北添から見せられた写真は、奥村に送るために撮ったものだということだ。諦めてもらうために『恋人同士』のフリをしたそうだ。それ以上の話は出ないから、無理に聞き出さないことにした。
「付き合っている相手がいるって教えて成功したと思ったんだけど。あんなことになったよ……」
「何か起きても平気だよ。俺も森本も山崎もいるから」
北添達との言い争いは治った。いつの間にか、奥村があの場から居なくなっていた。また悠人に何かやろうとすれば、守ればいい。そのことを伝えると、悠人が照れくさそうに笑った。
「夏樹って強いねー。今日のことでも思ったけど。ここへ来て、結婚しているんだって実感したよ。義理のお父さんの近くに住んでて、ご飯を食べに行っているんだろ?大変じゃないの?彼女の親に会うだけでも、面倒くさいっていう奴がいるし」
「ううん。お義父さんは面白い人だから、一緒にいるのが楽しいよ。ただ、親戚の人がね~。うるさいみたいなんだ。よくある話だよ」
「大人って感じがする。同年代の奴らとは空気が違うもん。悪い意味じゃないからね」
「分かっているよ。この生活は自分が選択したことだから、後悔はしていないよ」
「カッコいい。俺はこのままだと宙ぶらりんだよ。法学部を選択したのだって、父親から言われたからだし。そそっかしいから理系に行くなっていうのは口実で、法学部に入れたかったんだろうし。それを素直に受け入れたんだ」
「……俺も宙ぶらりんだよ」
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