アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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24-15(黒崎視点)

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 21時半。

 取引先の取締役との会食が終わり、店から出たところだ。相手側からは、父の代理として見られていた。同席している役員と幹部社員は仲間といえる存在だ。数は少ないが、他の連中から比べると、自分はまだいい方だ。経営者や役員のポストについている知人には、社内では心を許せる者がいない奴は少なくない。

 迎えのタクシーに乗り込み、ネクタイを緩めた。シートの横には夏樹と父、黒崎家のスタッフへの土産を置いている。夏樹には絵本だ。いい仕掛け絵本だったから気に入るだろう。父には和菓子だ。スタッフにも同じ物を用意した。

 今週のスケジュールを確認しておこうと思い、スケジュール帳を開いた。青いマークは、夏樹の予定だ。黄色マークは、アンの予定だ。

(日曜日に家庭菜園の畑づくりだ。土産は手配済みだ。夏樹の病院、アントワネットの美容院か。夏樹の髪の毛が伸びてきた。スーパーと、シャツのオーダーへショップへ行く……)

 休日が家族の予定で詰まっている。自分にとっては幸せな現実だ。

(あれからどうなっただろう……)

 ふと、早瀬のことが頭をよぎった。悠人とは話が出来ただろうか。多忙さゆえのすれ違いが原因で恋人と別れてきた早瀬のことを思うと、自分達はそうではないとは言い切れない。他人事ではない。すると、タクシーの窓から、七夕飾りが見えた。

(来月は七夕か。早いな……)

 今年の七夕は、どこへ出かけよう。この手帳には予定済みのマークが入っている。これだけは死守するために。すると、遠くの方に住宅街が見えてきた。我が家が近づいて来たところで、手帳を閉じた。
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