アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 午前8時半。

 朝ごはんを終えた後、畑づくりの時間までリビングで過ごしている。黒崎は書類に目を通し、俺は英語の課題を整理している。こうして、朝、黒崎から教えてもらっている。

「黒崎さん。ここの表現はどれ?」
「これだ。……次は宇宙科学をやるのか?」
「うん。試験が近いからね~」
「法学部と理学部、どちらへ進みたいか決まったのか?」
「ううん、まだだよ。やりたいことが多いんだよ。……そろそろ準備の時間だ」

 時計の針が、もうすぐ9時を指そうとしている。唐揚げの下味が付いた頃だ。見てこようと思ってソファーから立ち上がり、キッチンへ向かった。

「いい感じに味がしみ込んでいるみたいだな。サラダドレッシングも出来た……。黒崎さーん。庭に降りてくるからねー」
「俺も手伝う」
「まだ大丈夫だよ~。ゆっくりしていてよ」

 庭に降りると、太陽の光が差し込んできた。さっきまで曇り空だったのが、さーっと晴れ渡った。すると、黒崎から声をかけられて立ち止まった。

「夏樹、日焼け止めを塗るのを忘れるな。帽子とパーカーも」
「りょーかい」

 うっかり日焼け予防をするのを忘れていた。黒崎が俺の日焼けを嫌がっている。夏でも日焼けするなと言いつけられている。日に当たると赤くなって、痛くなってしまうからだろう。

 家の中に戻り、洗面所で日焼け止め塗った。これは藤沢から教えて貰った商品だ。外の撮影の時に塗ったら、全然焼けなかったということだ。それ以来、必ず使っているという。それを聞いた黒崎が店で買ってきてくれた。しかし、店内は女性客ばかりのフロアだったから、恥ずかしかったらしい。次からは公式サイトで注文しようと思った。

「うーん。黒崎さん、浮いていたんだろうなあ。それぐらい日焼けするなってことだよね~。あのこだわりはスゴイよ。俺本人よりも気にしているもんね」

 日焼け止めが残り少なくなってきたから、黒崎へ声を掛けた。使わないとうるさいから、言うことを聞いている。素直にパーカーを羽織ると、黒崎から呼び止められた。

「夏樹。腕が出ているぞ」
「暑いもん。こんがり焼けないからいいだろー?」
「羽織っている意味がないだろう。帽子はしっかり被れ。首の後ろが焼ける。ああ、こうだ。こうしろ……、よし」
「腰を叩くなよ~。あんたの手つきって、いやらしいんだよ~」
「これならどうだ?」
「腰を撫でるなよ~。保護者か痴漢か、どっちかにしろよ!」

 仕返しに黒崎の頬をつねってやった。でも、すぐにやり返されそうになり、庭へ逃げた。
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