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午前9時。
遠藤さんと佳代子さんが来てくれた。さっそく畑作りの下準備を始めた。畑の近くに建っている倉庫から、道具を取り出した。シャベル、クワ、スコップを並べて置いた。遠藤さんからはアメリカンレーキを借りた。土の表面を平らにするために使うものだ。
「これも使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
「アンちゃんとリク、本当に気が合うわねえ」
アンとリクが走り回り始めた。とても楽しそうだ。
「アンは他の犬に興味がないのに、リクとは遊ぶんです。人間は好きなんだけど」
「リクも同じよ。アンちゃんだけよ。遊ぶのは。他のワンちゃんと遊ぼうとしないのよ。うちの主人みたい。ほら……」
佳代子さんが振り向いた先では、遠藤さんが黒崎と笑いながら話している。漏れ聞こえて来たのは、黒崎製菓のことだった。佳代子さんが言うには、遠藤さんは気難しい人だそうだ。でも、昔はそうではなかったという。以前は各地のバンドのライブを見に行き、メジャーデビューを目指すバンドを発掘する担当だったそうだ。しかし、今のIKUエンターテイメントの取締役のメンバーになり、若い人達と話す機会が少なくなり、発言に制約もあり、今の性格に変わったそうだ。しかし、佳代子さんは諦めていないそうだ。いつかまた明るい人に戻るだろうと言っている。でも、俺から見ると、社交的に見える。
「遠藤さんって、社交的に見えるのになあ」
「そうねえ。夏樹君達が来てから明るくなったのよ。やっぱり若い人の中に居ないといけないみたいね。それにしても、圭一君、大きくなったわ。可愛らしい男の子が、ああなるなんて……」
「今じゃ偉そうで強引で石頭で……。頑固だし。豆腐、醤油、味噌。うるさいのなんのって。ゴミ捨てにも行ってくれないし。それに……」
「ふふふ」
佳代子さんが笑った。つい口が滑ってしまった。ここから黒崎がいる場所までは距離があるから聞こえないだろうと思って、もっと口を滑らせてやった。でも、安心していたのは、ほんの束の間だった。黒崎が早足で歩いて来て、逃げる間もなく、下唇を引っ張られてしまった。聞こえたようだ。遠藤さん達から微笑まれてしまった。
「……どの口が言っている?」
「この口だよ~っ。いたた……」
「……この口か?」
「いひゃい~。はなへよ、スッポン」
「まだ言うか、ごめんなさいは?」
「言わない!あ、チャイムが鳴ったよ!」
そんなやり取りをしている時に、次の来訪者がチャイムを鳴らした。黒崎の前から逃げ出して玄関の方に行くと、悠人と早瀬さんが仲良さそうに並んで立ち、俺達へ手を振っていた。
遠藤さんと佳代子さんが来てくれた。さっそく畑作りの下準備を始めた。畑の近くに建っている倉庫から、道具を取り出した。シャベル、クワ、スコップを並べて置いた。遠藤さんからはアメリカンレーキを借りた。土の表面を平らにするために使うものだ。
「これも使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
「アンちゃんとリク、本当に気が合うわねえ」
アンとリクが走り回り始めた。とても楽しそうだ。
「アンは他の犬に興味がないのに、リクとは遊ぶんです。人間は好きなんだけど」
「リクも同じよ。アンちゃんだけよ。遊ぶのは。他のワンちゃんと遊ぼうとしないのよ。うちの主人みたい。ほら……」
佳代子さんが振り向いた先では、遠藤さんが黒崎と笑いながら話している。漏れ聞こえて来たのは、黒崎製菓のことだった。佳代子さんが言うには、遠藤さんは気難しい人だそうだ。でも、昔はそうではなかったという。以前は各地のバンドのライブを見に行き、メジャーデビューを目指すバンドを発掘する担当だったそうだ。しかし、今のIKUエンターテイメントの取締役のメンバーになり、若い人達と話す機会が少なくなり、発言に制約もあり、今の性格に変わったそうだ。しかし、佳代子さんは諦めていないそうだ。いつかまた明るい人に戻るだろうと言っている。でも、俺から見ると、社交的に見える。
「遠藤さんって、社交的に見えるのになあ」
「そうねえ。夏樹君達が来てから明るくなったのよ。やっぱり若い人の中に居ないといけないみたいね。それにしても、圭一君、大きくなったわ。可愛らしい男の子が、ああなるなんて……」
「今じゃ偉そうで強引で石頭で……。頑固だし。豆腐、醤油、味噌。うるさいのなんのって。ゴミ捨てにも行ってくれないし。それに……」
「ふふふ」
佳代子さんが笑った。つい口が滑ってしまった。ここから黒崎がいる場所までは距離があるから聞こえないだろうと思って、もっと口を滑らせてやった。でも、安心していたのは、ほんの束の間だった。黒崎が早足で歩いて来て、逃げる間もなく、下唇を引っ張られてしまった。聞こえたようだ。遠藤さん達から微笑まれてしまった。
「……どの口が言っている?」
「この口だよ~っ。いたた……」
「……この口か?」
「いひゃい~。はなへよ、スッポン」
「まだ言うか、ごめんなさいは?」
「言わない!あ、チャイムが鳴ったよ!」
そんなやり取りをしている時に、次の来訪者がチャイムを鳴らした。黒崎の前から逃げ出して玄関の方に行くと、悠人と早瀬さんが仲良さそうに並んで立ち、俺達へ手を振っていた。
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