アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 午前7時。

 朝ご飯を食べ終えて、お互いの朝の日課をしようとリビングへ移動した。でも、何となくイチャついている。黒崎の胸へ背中を預けると、抱き寄せられて、こめかみにキスをされた。テレビでは占いコーナーが始まったところだ。12匹のウサギが、スタートダッシュをした。

「今日の1位はおひつじ座だ!」
「俺は3位か。まあまあだ」
「おひつじ座……、今日は買い物に行きましょう。素敵なものが見つかりそう……。だってさ」
「ちょうどいい。大学の帰りに浅草へ寄るだろう?」
「うん。藤沢も合流できるかも。試験前の息抜きだよ」
「ゆっくりしてきていいぞ」
「夕方には帰って来るよ。今日は……」
「……冷蔵庫記念日だったな」
「もっと素敵な言い方にしろよ。恋人記念日だよ」
「大事な日だ」
「黒崎さん……」

 そろそろ黒崎が出勤の支度をするから、これ以上はイチャつけない。ソファーに寝転がって寝返りを打って向かい合うと、黒崎からキスをされた。そして、頼み事があると言われた。一体何だろう。

「夏樹、あのうちわを使うのをやめてくれ」
「うちわって?」
「そこに置いてあるやつだ」
「ダメだよ~」

 それは手づくりうちわのことだ。作成キットを買ってきて、好きなデザインの紙を貼りつけるものだ。黒崎宛のメッセージカードを台紙に張り付けて作って、大学でも使っている。

「最初はあんたへの嫌みのつもりだったけど、使い勝手がいいから、気に入っているんだよ。ちゃんと電話番号とラインIDは塗りつぶしているよ。名前もね」
「どうして作ったんだ?嫌みなら言っているだろう」
「誰から送られたものか、覚えておきたいからだよ」
「……」
「2回目以降の人がいないか、チェックするためだよ」
「……」
「もう一枚、作れそうだよ」
「……」
「どう?聞いている?」
「名刺は断れない。裏にプライベートの番号が書いてあってもだ」
「いいよ、仕事だもん。俺はあんたの門番だから」
「我儘を聞いてやるから、使うのをやめてくれ」
「ふうん。……そろそろ支度する時間だよ。間に合わなくなるよ」

 壁の時計を見て慌てて起き上がった。黒崎の方は急いだ様子がなく、ちゃんと時間を見ていたそうだ。俺の機嫌が直る時間も計っているそうだ。だったら日頃から怒らせることを言うなと言って唇を尖らせると、思いきり優しく見つめられたから、何も言えなくなってしまった。
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