アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 黒崎が悠人と少し話した後、早瀬さんと話しをしてくると言い、黒崎が病室を出て行った。同じオフィスにいても、込み入ったことが話せないから、ちょうど良かったそうだ。俺の方も悠人へ打ち明けたいことがある。

 さっそく今回の養子縁組の話をすると、そんなに驚いた様子がなかった。早瀬さんの方から聞いていたそうだ。黒崎は俺が怪我をするだいぶ前から考えていたのだという。どう俺に相談しようかと悩んでいたのだろう。このタイミングで良かったのかもしれない。

「黒崎さんのお父さんの養子になるんだね……」
「うん。うちの両親とも話し合った結果だよ。黒崎家の一員になるよ」
「そっか。賛成してもらえてよかったね。慌てて病院へ来てくれたんだろー?」
「うん。お母さんには泣かれたよ……。ますます白髪を増やしたと思う」

 ベッドの傍には、母と妹とで撮った写真が飾ってある。今年の正月の写真だ。俺は怜さんから贈られた赤い着物を着ている。着物姿を見てみたいと頼まれて来た結果、もう一回着てみた。そして、母達から似合っていると言われて、写真に収められてしまった。

「この写真、いいね。面白そうなお母さんじゃない?」
「面白いよ。俺のことをからかって遊ぶしね。厳しい事も言える人だよ」
「いいなー」
「両親が来ていたんだ。悠人に会いたがっているよ。バンドコンテストを観に来るんだ」
「そうなんだー。俺も会いたいよ。……何か検査しているの?」
「ああ、この機械だね……」

 この病室には心臓の検査機械が置かれている。起き上がれるのに、これがあるのは不思議だろう。まだ悠人には話していない。弱いところを見せたくなかった。今はきちんと話ができる。

「実はね。子どもの頃に心臓が悪くて、カテーテル治療をしたんだよ。それから後は、月一回の検診を受けているんだ。今回の入院でも検査をしたんだ。大丈夫だったけど……」
「あああ……。ごめんね。聞きだして……」
「俺が聞いて欲しかったんだ。普通に走れるんだよ?知っての通り元気だよ」
「だから、体調が悪いのを隠しているんだねー?言わないと分からないから、ちゃんと言えよー。……親が心配するから?」
「うん。そういうのが癖になっているよ。先天性だから、お母さんが自分を責めていたんだ。妹の万理も赤ちゃんの時に体が弱くて、よく熱を出していたしね。……俺が中学生の時に荒れたから、母親失格だって親戚から陰口を叩かれたし。今はカラーリングをしているから分からないけど、お母さん、白髪だらけなんだよ。40歳の手前からだよ……」
「そうなんだ……」

 悠人が母の写真を見て唇をかんだ。お母さんの事を思い出しているのかな?両親の離婚が決まり、住んでいた実家を処分する話が出ていると、さっき聞いたばかりだ。
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