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17時半。
七夕飾りつけの後で病室へ戻った後、黒崎がオフィスへ戻って行った。でも、すぐにまた来てくれる。この近くに来る用事があり、ほんの30分でも会いに来てくれたと分かった。まずは怪我を治して、元の生活に戻ることを考えようと黒崎から言われた。そして、無理に笑おうとする癖が抜けていないと言われてしまった。彼の顔を見て反射的にそうなってしまう。
(花壇を直しておけばよかったって。後回しにしたからだって。黒崎さん……)
黒崎がこう言っていた。俺が躓いた花壇のことだ。段差があるのが気になっていたから、すぐに直せば良かったと言っていた。引っ越しと仕事の事で忙しく、細かいところまで行き届かないのは仕方がないにしても、歩きまわる場所を整えていなかったからだと、黒崎が自分を責めていた。心に残り続けると思う。だから尚更、早く元気になりたい。
今、悠人が病室へ訪ねてくれた。コンテスト出場を一か月後に控えているけれど、出場を辞退してもOKだという話だった。元気になれば出ようねとメンバー全員で決めたのだと、しっかり見つめて教えてくれた。でも、俺は出るつもりだ。
昨日は、悠人がたくさんの楽曲を送ってくれた。これにすべて歌詞をつけてくれということだった。ギター演奏した動画もあった。これで家でも歌う練習ができるようになった。これほど支えられて、しょげてばかりはいられない。悠人が俺の作詞した歌詞を見ながら歌い始めた。
「るるる、るるるー、お腹空いても~、おかゆ、今日は洋食で~、キノコのポタージュー。夏樹……、これはダメだよーっ」
「いいじゃん~」
「だめだよ。この間はカッコ良かったのに」
「冗談だよ。はい、これでーす」
悠人に歌詞を書いたノートを渡した。昨日は1日中、書いていた。元気になった証だと思っている。悠人もそう言ってくれた。
「やったー。ふむふむ……、これを練習するよ」
「ごめんね。怪我をして……」
「気にするなよ。みんな、分かっているから。ここで無理するなよ……。たくさんの大会があるんだよ?これだけじゃないからねー」
「ありがとう……」
「はい、これはお見舞いだよー。浅草で見つけた手拭いと、七夕飾りのセットだよ」
「わああー、いっぱいあるじゃん」
「いいってば。使ってよー」
悠人からお見舞いを渡された。たくさんあるからベッドの上は品物だらけだ。全て浅草で買ってきてくれたそうだ。何度か一緒に買い物に行っているから、好みを覚えてくれている。普段は通らない方向の店で選んだそうだ。
歌舞伎役者や力士のイラストが入った手ぬぐいが広げられた。唐草模様のトートバッグもある。さすがは海外観光客が多いスポットだけあり、和柄が豊富だ。そして、頼んでいた赤い浴衣もある。
「好みだよ。ありがとう~」
「よかった。……。こっちは頼まれていた浴衣だよ。全部、お見舞いだからね」
「悪いよ。浴衣は頼んだやつだし……」
「全部、裕理さんからだよ。気にするなよ。稼いでいるから使わせてあげて。忙しくて使う暇がないからって、楽しんでいたもん」
「そっかー。……仲良くやってる?うひゃひゃーー」
「う、うん!あ……、えーっと……」
「ゆうとー?」
「あああ……」
パサ、バサバサバサ!悠人が持っていた紙袋が逆さまになり、入っていたものが床に落ちてしまった。どうしたんだろう?早瀬さんは下で待っているというから、ここへ来るまでに何かあったに違いない。恥ずかしそうにしているから、心配するものではないようだ。
これから2人で暮らすための家に引っ越すそうだ。その引っ越し先は、俺達が住んでいた同じマンションの羽柴アイランドだった。四方を運河で囲まれた、海に囲まれた場所であり、悠人のイメージに合う場所でもある。あの遊歩道を歩きながら、賑やかに話している光景が目に浮かぶ。
「あ……」
悠人が床のくす玉を拾い上げて起き上がった瞬間、ゴン!と、いかにも痛そうな音が響き渡った。サイドテーブルの角に頭をぶつけていた。
「いたたたーーー」
「大丈夫かよ!?」
「ううん。痛いよーー」
「見てみるから立って。赤くなっているよ。看護師さんに来てもらうよ」
「いいよー。平気。みっともないし……」
「だめだよ。血が滲んでいるかも……」
「マジで!?」
「この辺りが……」
「ひいいいっ」
「見てもらおうよ。何もなかったら安心だろ?」
「そうだけど……」
「大丈夫だよ。優しい人ばかりだからね」
「お願いしてみるよ。あ……」
悠人は虫全般だけでなく、血も怖いらしい。怖がっている彼のことを励まそうと、背中に手を添えた。もう一度覗き込んでいると、ドアが開きた。入って来た看護師さんが顔を赤くしたから、どうも誤解をしたらしい。
「これは違います!夏樹とは友達ですから!決まった人がいるんで!」
「そうです~、悠人とは友達で……」
全力で誤解だと言い合っていると、黒崎が入って来た。頭をぶつけて涙目になっている悠人と、下着を追いかけて怪我をした俺のことを、いいコンビだと言って、苦笑いしていた。
七夕飾りつけの後で病室へ戻った後、黒崎がオフィスへ戻って行った。でも、すぐにまた来てくれる。この近くに来る用事があり、ほんの30分でも会いに来てくれたと分かった。まずは怪我を治して、元の生活に戻ることを考えようと黒崎から言われた。そして、無理に笑おうとする癖が抜けていないと言われてしまった。彼の顔を見て反射的にそうなってしまう。
(花壇を直しておけばよかったって。後回しにしたからだって。黒崎さん……)
黒崎がこう言っていた。俺が躓いた花壇のことだ。段差があるのが気になっていたから、すぐに直せば良かったと言っていた。引っ越しと仕事の事で忙しく、細かいところまで行き届かないのは仕方がないにしても、歩きまわる場所を整えていなかったからだと、黒崎が自分を責めていた。心に残り続けると思う。だから尚更、早く元気になりたい。
今、悠人が病室へ訪ねてくれた。コンテスト出場を一か月後に控えているけれど、出場を辞退してもOKだという話だった。元気になれば出ようねとメンバー全員で決めたのだと、しっかり見つめて教えてくれた。でも、俺は出るつもりだ。
昨日は、悠人がたくさんの楽曲を送ってくれた。これにすべて歌詞をつけてくれということだった。ギター演奏した動画もあった。これで家でも歌う練習ができるようになった。これほど支えられて、しょげてばかりはいられない。悠人が俺の作詞した歌詞を見ながら歌い始めた。
「るるる、るるるー、お腹空いても~、おかゆ、今日は洋食で~、キノコのポタージュー。夏樹……、これはダメだよーっ」
「いいじゃん~」
「だめだよ。この間はカッコ良かったのに」
「冗談だよ。はい、これでーす」
悠人に歌詞を書いたノートを渡した。昨日は1日中、書いていた。元気になった証だと思っている。悠人もそう言ってくれた。
「やったー。ふむふむ……、これを練習するよ」
「ごめんね。怪我をして……」
「気にするなよ。みんな、分かっているから。ここで無理するなよ……。たくさんの大会があるんだよ?これだけじゃないからねー」
「ありがとう……」
「はい、これはお見舞いだよー。浅草で見つけた手拭いと、七夕飾りのセットだよ」
「わああー、いっぱいあるじゃん」
「いいってば。使ってよー」
悠人からお見舞いを渡された。たくさんあるからベッドの上は品物だらけだ。全て浅草で買ってきてくれたそうだ。何度か一緒に買い物に行っているから、好みを覚えてくれている。普段は通らない方向の店で選んだそうだ。
歌舞伎役者や力士のイラストが入った手ぬぐいが広げられた。唐草模様のトートバッグもある。さすがは海外観光客が多いスポットだけあり、和柄が豊富だ。そして、頼んでいた赤い浴衣もある。
「好みだよ。ありがとう~」
「よかった。……。こっちは頼まれていた浴衣だよ。全部、お見舞いだからね」
「悪いよ。浴衣は頼んだやつだし……」
「全部、裕理さんからだよ。気にするなよ。稼いでいるから使わせてあげて。忙しくて使う暇がないからって、楽しんでいたもん」
「そっかー。……仲良くやってる?うひゃひゃーー」
「う、うん!あ……、えーっと……」
「ゆうとー?」
「あああ……」
パサ、バサバサバサ!悠人が持っていた紙袋が逆さまになり、入っていたものが床に落ちてしまった。どうしたんだろう?早瀬さんは下で待っているというから、ここへ来るまでに何かあったに違いない。恥ずかしそうにしているから、心配するものではないようだ。
これから2人で暮らすための家に引っ越すそうだ。その引っ越し先は、俺達が住んでいた同じマンションの羽柴アイランドだった。四方を運河で囲まれた、海に囲まれた場所であり、悠人のイメージに合う場所でもある。あの遊歩道を歩きながら、賑やかに話している光景が目に浮かぶ。
「あ……」
悠人が床のくす玉を拾い上げて起き上がった瞬間、ゴン!と、いかにも痛そうな音が響き渡った。サイドテーブルの角に頭をぶつけていた。
「いたたたーーー」
「大丈夫かよ!?」
「ううん。痛いよーー」
「見てみるから立って。赤くなっているよ。看護師さんに来てもらうよ」
「いいよー。平気。みっともないし……」
「だめだよ。血が滲んでいるかも……」
「マジで!?」
「この辺りが……」
「ひいいいっ」
「見てもらおうよ。何もなかったら安心だろ?」
「そうだけど……」
「大丈夫だよ。優しい人ばかりだからね」
「お願いしてみるよ。あ……」
悠人は虫全般だけでなく、血も怖いらしい。怖がっている彼のことを励まそうと、背中に手を添えた。もう一度覗き込んでいると、ドアが開きた。入って来た看護師さんが顔を赤くしたから、どうも誤解をしたらしい。
「これは違います!夏樹とは友達ですから!決まった人がいるんで!」
「そうです~、悠人とは友達で……」
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