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18時。
夕食を食べ終わった後、黒崎と2人で中庭に出て、散歩をしているところだ。庭にある笹の飾り付けを眺めて、お互いの願い事を言い合った。
「黒崎さんが家事を手伝ってくれますよーに」
「夏樹が優しくなりますように」
「自分でお湯を沸かすようになりますよーに」
「……願うことか?」
「虫が寄り付かなくなりますよーに」
「……レース編みの攻撃から守ってください」
「ずっと一緒に入られますように。……何だよ?照れるなよ。聞き流せよ~っ」
「……願わなくても」
「ふふん」
何を言おうとしたのか分かっている。あえて追求はしない。その代わり、ある我儘を聞いてもらうことにした。不意打ちするようにして、黒崎のシャツを掴んで引き寄せた。そして、見上げて顔を覗き込んだ。これから作戦開始だ。
「黒崎さーん。俺、ちゃんと点滴を受けたんだよー?」
「……そうだな」
「注射針を見ても、後ずさりしなかったんだ」
「……迷惑にならなくて良かった」
「長く刺さっていたから、抜くときは痛かったんだ。我慢したよ」
「……大人になったな」
「ご褒美が欲しい。クルクル回ってよ~」
「怪我が治った後でやってやる。……捻挫と、額の縫合をされているんだぞ?」
「それなら別の物にするよ。いつも言わない言葉を聞かせてよ~」
「……それは言わない」
「……うっうっ」
わざとらしく泣き真似をした。この返事は想定内だ。ここからが追い込みだと決心して、最終目的を口にした。
「そっか。だったらさ……、あのね……」
「……早く言え」
「聞いてくれるわけ?」
「七夕の願い事にしてやる」
「そう?あのね、黒崎さんの下着に、レース編みを縫い付けさせてよ。それと、レース編みで作ったブックカバーを会社で使ってほしい」
「……」
黒崎が眉間に皺を寄せて押し黙った。さっと手が伸びてきたから、下唇への攻撃を阻止するために後ろへ下がって逃げた。さらに腕が伸ばされて、あっけなく捕まった。
「反射神経が良すぎるんだよ~」
「19歳の子が負けたのか?」
「なんだよ~っ」
「叶えてやる。よく聞いておけ……」
「え?」
黒崎の口が耳元に寄せられた。そこで呟かれた言葉は欲しかったものだ。ここがどこかなのかも忘れて、感極まって声を上げた。
「ヒャーーッ」
「……こら、耳元でわめくな」
せっかく甘いムードに移行しそうだったのに、自分のせいでぶち壊してしまった。ああだこうだと言い合いをしながら過ごした後、しぶしぶ病室に戻った。そして、家に帰る黒崎のことを見送った。
「黒崎さん。おやすみ」
「おやすみ。明日の朝、6時頃に迎えに来る」
「もっとゆっくりでもいいよ?」
「そんなに苛めないでくれ」
「……え?」
「……早く連れて帰りたい。そういうことだ」
「黒崎さーーん、俺もだよーーっ」
「……うるさい」
ひと言だけ残して黒崎が病室を出て帰ってしまった。それでも寂しくはない。ちゃんと迎えに来てくれることが分かっているからだ。胸が痛くなりながらも、全身がぽかぽか温かくなった。
一人っきりの病室の窓を開けて、星空を眺めた。夏の大三角である織姫星と彦星を、明日の夜、我が家で見られる。それを楽しみにしよう。素直にベッドに入って、ゆっくり目を閉じた。
夕食を食べ終わった後、黒崎と2人で中庭に出て、散歩をしているところだ。庭にある笹の飾り付けを眺めて、お互いの願い事を言い合った。
「黒崎さんが家事を手伝ってくれますよーに」
「夏樹が優しくなりますように」
「自分でお湯を沸かすようになりますよーに」
「……願うことか?」
「虫が寄り付かなくなりますよーに」
「……レース編みの攻撃から守ってください」
「ずっと一緒に入られますように。……何だよ?照れるなよ。聞き流せよ~っ」
「……願わなくても」
「ふふん」
何を言おうとしたのか分かっている。あえて追求はしない。その代わり、ある我儘を聞いてもらうことにした。不意打ちするようにして、黒崎のシャツを掴んで引き寄せた。そして、見上げて顔を覗き込んだ。これから作戦開始だ。
「黒崎さーん。俺、ちゃんと点滴を受けたんだよー?」
「……そうだな」
「注射針を見ても、後ずさりしなかったんだ」
「……迷惑にならなくて良かった」
「長く刺さっていたから、抜くときは痛かったんだ。我慢したよ」
「……大人になったな」
「ご褒美が欲しい。クルクル回ってよ~」
「怪我が治った後でやってやる。……捻挫と、額の縫合をされているんだぞ?」
「それなら別の物にするよ。いつも言わない言葉を聞かせてよ~」
「……それは言わない」
「……うっうっ」
わざとらしく泣き真似をした。この返事は想定内だ。ここからが追い込みだと決心して、最終目的を口にした。
「そっか。だったらさ……、あのね……」
「……早く言え」
「聞いてくれるわけ?」
「七夕の願い事にしてやる」
「そう?あのね、黒崎さんの下着に、レース編みを縫い付けさせてよ。それと、レース編みで作ったブックカバーを会社で使ってほしい」
「……」
黒崎が眉間に皺を寄せて押し黙った。さっと手が伸びてきたから、下唇への攻撃を阻止するために後ろへ下がって逃げた。さらに腕が伸ばされて、あっけなく捕まった。
「反射神経が良すぎるんだよ~」
「19歳の子が負けたのか?」
「なんだよ~っ」
「叶えてやる。よく聞いておけ……」
「え?」
黒崎の口が耳元に寄せられた。そこで呟かれた言葉は欲しかったものだ。ここがどこかなのかも忘れて、感極まって声を上げた。
「ヒャーーッ」
「……こら、耳元でわめくな」
せっかく甘いムードに移行しそうだったのに、自分のせいでぶち壊してしまった。ああだこうだと言い合いをしながら過ごした後、しぶしぶ病室に戻った。そして、家に帰る黒崎のことを見送った。
「黒崎さん。おやすみ」
「おやすみ。明日の朝、6時頃に迎えに来る」
「もっとゆっくりでもいいよ?」
「そんなに苛めないでくれ」
「……え?」
「……早く連れて帰りたい。そういうことだ」
「黒崎さーーん、俺もだよーーっ」
「……うるさい」
ひと言だけ残して黒崎が病室を出て帰ってしまった。それでも寂しくはない。ちゃんと迎えに来てくれることが分かっているからだ。胸が痛くなりながらも、全身がぽかぽか温かくなった。
一人っきりの病室の窓を開けて、星空を眺めた。夏の大三角である織姫星と彦星を、明日の夜、我が家で見られる。それを楽しみにしよう。素直にベッドに入って、ゆっくり目を閉じた。
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