アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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29-1 ボーカルレッスン

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 8月5日、日曜日。13時。

 TOYボーカルスクールのレッスン室にいる。今日はボーカルレッスンを受けに来た。講師である杉本先生が弾いている電子ピアノに合わせて、発声練習をしているところだ。

「アーーー」
「下唇を下げて、あくびをするイメージで声を出す、ウアーー、はい、やって」
「ウアーー」
「お腹が前に出ているよ!ここ!背筋を伸ばしてー」

 先生が立ち上がり、俺の背中とお腹に手を添えた。そして、促されたままに、背筋を伸ばして発声をした。

「はい、アーーー」
「アーーー」
「OK!」

 やっとOKが出た。疲れが出たものの、まだレッスンは続く。少し休もうと言われて、体を楽にした。 

 先月の20日から、この教室でボーカルレッスンを受けている。今日で4回目だ。腹式呼吸と、正しい発声方法を習っている。講師は現役バンドのボーカリストの、杉本美香子さんだ。ジャスを主に歌っている人だ。声楽を学び、オペラ歌手を目指していたと聞いた。

「夏樹君、はじめるよ!」
「はい!」
「アーーーー」
「アーーーー」
「もっと伸ばすーーぐわーーっと」
「ぐわーーー」
「そう!グワーーーーアーーーー」
「アーーーー」
「……OK!今日から楽曲に入るよ!この曲、カッコいいね?」
「バンドのメンバーが作曲したんです」
「まずは通して歌いましょう。いくよー」

 再び伴奏が始まり、習った通りに呼吸をした。そして、発声して歌い始めた。

 コンテストまで、あと13日だ。60分のレッスンを終えた後は、汗が噴き出している。持ってきたタオルで顔と首筋の汗をふき取った。それでも新しい汗が出てくるからキリがない。歌い終わった後、喉が渇いていた。

「おつかれさま!」
「ありがとうございました」
「18日までに、コンテストの楽曲を仕上げようね。基礎が出来ているから自信をもって!」
「よかった~。でも、本当ですか?」
「本当よ。ハッキリ言うから」

 杉本先生の言葉通り、良いことも悪いこともハッキリ言われている。気さくな先生だから、レッスンが楽しいと思っている。

「家でも練習しているのね」
「はい。家族が伴奏してくれているから……」
「家での体のストレッチも欠かさずにね。次回は4日後。今日の、ウアーーを、練習してきてね」
「はい!ありがとうございました!」

 お互いに手を振り合って、部屋を出た。すると、次の生徒さんが待合室に居るのが見えた。杉本先生が呼びに行っていた。活気があり、ここに来ると元気をもらえている。
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