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今からスタジオに行く。最寄りの地下駐車場で車を停めた後、黒崎と並んで歩いているところだ。せっかくだから、黒崎にも練習を見学してもらうことにした。
「黒崎さんが来てくれるのって、今回が初めてだね。いつも動画だったから」
「親父がコンテストを楽しみにしているぞ。友人たちに言い回っている」
「まさかお義父さんも来てくれるって思ってなかったよ」
「お前のことが可愛いからだ。5位までに入れば、次の大会へ出られるんだったな?」
「そうだけど……、そんなことがあるわけないってば」
「そうなのか?」
「みんなそう言っているもん」
今回のコンテストは有名なやつだ。ここで上位に入れば、さらに大きな大会への参加資格が得られる。そうなればいいねと、メンバー同士で笑い合っている。
並川さんと聡太郎はライブの経験が多くて、コンテストで入賞したことがある腕前だ。悠人は高校時代に出たことがある。入賞こそ逃したが、遠藤さんからの話では、注目されていたそうだ。あの子はどうしているのかな?と、今でも話題に上ることがあると話していた。藤沢はギター以外にも趣味が多くて、何でも器用にこなすことができる。器用貧乏だと苦笑交じりに話しているが、物凄い集中力で練習しているのを知っている。
だったら俺は、どうしようか?最大限の力を出して頑張ろうと決めた。楽しんで活動することが一番の目的だと思っている。経験がない自分でも楽しくやれている。何か目標があると気合いが入る。結果が何であれ、それに向けて練習している。
「夏樹、バンドを始めてから変わったぞ」
「そう?自分では分からないよ」
「人前でモジモジしなくなってきた。モデルの経験も良かったんだろう。中山のご両親も楽しみだろう」
「うん。怪我が良くなって良かったって言われたよ」
「これで俺の気持ちが分かっただろう?」
「うん……」
黒崎が優しい眼差しを向けてきた。そして、立ち止まった後、前髪をかき上げられた。そこには額の傷跡がある。大して目立たないし、前髪を下すと分からないぐらいだ。
「こうして元気になった。ご両親は見たいだろう。俺も見たい」
「ありがとう……」
「中山さんの方から、久田さんのことを誘うそうだ」
「そっか。いい流れになるといいね」
「……そうだ、今月末のことだが」
「黒崎さんが親戚の人に会う日だよね?年一回の法事以外で集まるのは、俺のことがあるから?」
養子縁組のことが、黒崎家の親戚全体に知れ渡った。何度か連絡が入り、お義父さんの家に訪ねてくる人もいたようだ。そこで、俺のことを説明するために、親戚がお義父さんの家で集まるそうだ。しかし、俺はその集まりには出席しない。
「……たしかにお前の養子縁組も関連がある。一番の理由は、俺が黒崎家へ戻って来たからだ。序列を決めておきたいがための集まりだ」
「序列って。難しい言い方だね……。そう言っている人がいるんだね?」
「ああ。これが黒崎家だ。お前には出席させない。体が本調子でないことと、学業に専念させていることを理由にしてある。今は余計な話を聞かせたくない。……これは俺が決めたことだ。一族には従ってもらう」
黒崎の雰囲気が変わった。冷たい目をしている。そして、俺の方を見て戸惑った顔になった瞬間、優しい顔に戻った。
「……すまない。嫌な思いをさせた」
「ううん、こっちこそ。大丈夫。お義父さんもいるし、アンも励ましてくれているんだ」
「嫌な思いをさせるのは、いつものことだ」
「どうしてそう思うんだよ?黒崎さん、どんどん変わってきたから、昔の自分が懐かしいって思う日がくるかもね~」
「そうか?」
「そうだよ」
そっと抱き寄せられた。黒崎が困った顔をしているから、俺の方も戸惑った。そして、お前にはかなわないと言いつつ、頬をつねって引っ張られた。そこで俺は引っ張り返してやった。すると、自然と力が強くなり、喧嘩になりそうになり、お互いに笑ってやめた。まるで兄弟喧嘩のようだと黒崎が言った。その時の顔は自然な笑顔で良かったと思った。
「黒崎さんが来てくれるのって、今回が初めてだね。いつも動画だったから」
「親父がコンテストを楽しみにしているぞ。友人たちに言い回っている」
「まさかお義父さんも来てくれるって思ってなかったよ」
「お前のことが可愛いからだ。5位までに入れば、次の大会へ出られるんだったな?」
「そうだけど……、そんなことがあるわけないってば」
「そうなのか?」
「みんなそう言っているもん」
今回のコンテストは有名なやつだ。ここで上位に入れば、さらに大きな大会への参加資格が得られる。そうなればいいねと、メンバー同士で笑い合っている。
並川さんと聡太郎はライブの経験が多くて、コンテストで入賞したことがある腕前だ。悠人は高校時代に出たことがある。入賞こそ逃したが、遠藤さんからの話では、注目されていたそうだ。あの子はどうしているのかな?と、今でも話題に上ることがあると話していた。藤沢はギター以外にも趣味が多くて、何でも器用にこなすことができる。器用貧乏だと苦笑交じりに話しているが、物凄い集中力で練習しているのを知っている。
だったら俺は、どうしようか?最大限の力を出して頑張ろうと決めた。楽しんで活動することが一番の目的だと思っている。経験がない自分でも楽しくやれている。何か目標があると気合いが入る。結果が何であれ、それに向けて練習している。
「夏樹、バンドを始めてから変わったぞ」
「そう?自分では分からないよ」
「人前でモジモジしなくなってきた。モデルの経験も良かったんだろう。中山のご両親も楽しみだろう」
「うん。怪我が良くなって良かったって言われたよ」
「これで俺の気持ちが分かっただろう?」
「うん……」
黒崎が優しい眼差しを向けてきた。そして、立ち止まった後、前髪をかき上げられた。そこには額の傷跡がある。大して目立たないし、前髪を下すと分からないぐらいだ。
「こうして元気になった。ご両親は見たいだろう。俺も見たい」
「ありがとう……」
「中山さんの方から、久田さんのことを誘うそうだ」
「そっか。いい流れになるといいね」
「……そうだ、今月末のことだが」
「黒崎さんが親戚の人に会う日だよね?年一回の法事以外で集まるのは、俺のことがあるから?」
養子縁組のことが、黒崎家の親戚全体に知れ渡った。何度か連絡が入り、お義父さんの家に訪ねてくる人もいたようだ。そこで、俺のことを説明するために、親戚がお義父さんの家で集まるそうだ。しかし、俺はその集まりには出席しない。
「……たしかにお前の養子縁組も関連がある。一番の理由は、俺が黒崎家へ戻って来たからだ。序列を決めておきたいがための集まりだ」
「序列って。難しい言い方だね……。そう言っている人がいるんだね?」
「ああ。これが黒崎家だ。お前には出席させない。体が本調子でないことと、学業に専念させていることを理由にしてある。今は余計な話を聞かせたくない。……これは俺が決めたことだ。一族には従ってもらう」
黒崎の雰囲気が変わった。冷たい目をしている。そして、俺の方を見て戸惑った顔になった瞬間、優しい顔に戻った。
「……すまない。嫌な思いをさせた」
「ううん、こっちこそ。大丈夫。お義父さんもいるし、アンも励ましてくれているんだ」
「嫌な思いをさせるのは、いつものことだ」
「どうしてそう思うんだよ?黒崎さん、どんどん変わってきたから、昔の自分が懐かしいって思う日がくるかもね~」
「そうか?」
「そうだよ」
そっと抱き寄せられた。黒崎が困った顔をしているから、俺の方も戸惑った。そして、お前にはかなわないと言いつつ、頬をつねって引っ張られた。そこで俺は引っ張り返してやった。すると、自然と力が強くなり、喧嘩になりそうになり、お互いに笑ってやめた。まるで兄弟喧嘩のようだと黒崎が言った。その時の顔は自然な笑顔で良かったと思った。
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