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一階の受付にやって来た。まずは何か飲んで一息つこうと、黒崎が自動販売機で飲み物を買って来た。落ち着いたロビー内を眺めていると、今日のことが嘘のように思えた。でも、左足にはサポーターが巻かれて、二日ぐらいは動かさないようにと言われている。これを見ると、現実だと分かる。ますます黒崎が過保護になるだろう。
「これを飲んで落ち着け」
「もう落ち着いているよ」
「取っ組み合いの方が怖いだろうが。どうして消毒液が怖いんだ?」
「だって、心の準備が必要だもん。……どうして青汁を買ったの?」
「美味いと言っていただろう」
「もうーー、意地悪だね!」
「はいはい。水も買ってきたから飲め」
「うんっ」
ごくごくと喉を鳴らして青汁を飲みほした後、ペットボトルの水を口にした。ここには深川さんと晴海さんも来ている。今頃どうしているだろう。
「2人とも終わったかな?」
「深川さんは先に帰っている。親父が来るまで、晴海兄さんに付き添ってくれていた。さっき親父が着いたから、深川さんと交代した」
「晴海さんって、深川さんと仲が良いの?」
「兄さんはそう思っていないだろう。俺と同じように、深川さんの秘書をやっていた。深川さんが教師役だ。相性がある。上手くいかなかったようだ」
「そうなんだ……」
「どうした?」
「コネがあるとか特別扱いされているとかって、言われたことがあったのかな?せっかく頑張っていても、そんなことを言われたら嫌じゃん……」
「耳にタコが出来るぐらいに言われたはずだ」
「そうだよね……」
今日の自分に起こった出来事を思い出した。あの3人から向けられた言葉だ。バカバカしいと思う。
晴海さんはどうだろうか?あんなことを言われたうえに、兄弟から比較されたら辛いだろう。相談相手はいたのだろうか?
そういうことをぼんやり考えていると、黒崎から頭を抱き寄せられた。俺は彼の肩にもたれ掛かるようにして、頭を撫でられている感覚に身を任せた。
「強くなったな」
「そうかな?」
「……ああ。お前が黒崎家に来てくれたおかげで、親父も俺も強くなった。晴海兄さんもそうだろう。どこでボタンの掛け違いをしたのか分からない。みっともない話だ」
「俺も強くなれたよ。黒崎さんと出会っていなかったら、誰のことも信用できないままだったと思う。感謝している。これ以上は怪我をさせたくない」
「いいってば~。戦いごっこだから」
「……気が気じゃない。もう外を歩くな」
「戦いごっこだってば……」
ここは機嫌を取っておこう。軽く頬へキスをすると、近くからざわめきが起きた。これぐらいはいいだろう?ちょっと口元が触れただけだと、黒崎に言い張った。お互いに目を逸らしながら。
これから帰ることになった。お義父さん達と一緒に帰りたい。黒崎に頼むと、静かに首を横に振られた。
「どうして?」
「早く家に帰って休んでほしい。身体がショックを受けているはずだ」
「平気だよ。このまま晴海さんに会わないでいたら、チャンスが遠のきそうだよ」
「機会を作る。今は休んでほしい」
「うん……」
小さな子供にするかのように視線を合わされた。その目には心配の色がある。もう駄々をこねることはやめておきたい。
「今日はすまなかった。黒崎の家に連れて来たことで嫌な目にあわせている」
「承知の上だよ。それに俺だって『黒崎』になるんだからね。晴海さんはお兄ちゃんになる人なんだ」
「そうか……」
どっちが怪我人なのか分からない。黒崎の背中をさすって励ました。せっかくだから、病院の教会に寄っていくことにした。黒崎の気がまぎれることを期待しながら。
「これを飲んで落ち着け」
「もう落ち着いているよ」
「取っ組み合いの方が怖いだろうが。どうして消毒液が怖いんだ?」
「だって、心の準備が必要だもん。……どうして青汁を買ったの?」
「美味いと言っていただろう」
「もうーー、意地悪だね!」
「はいはい。水も買ってきたから飲め」
「うんっ」
ごくごくと喉を鳴らして青汁を飲みほした後、ペットボトルの水を口にした。ここには深川さんと晴海さんも来ている。今頃どうしているだろう。
「2人とも終わったかな?」
「深川さんは先に帰っている。親父が来るまで、晴海兄さんに付き添ってくれていた。さっき親父が着いたから、深川さんと交代した」
「晴海さんって、深川さんと仲が良いの?」
「兄さんはそう思っていないだろう。俺と同じように、深川さんの秘書をやっていた。深川さんが教師役だ。相性がある。上手くいかなかったようだ」
「そうなんだ……」
「どうした?」
「コネがあるとか特別扱いされているとかって、言われたことがあったのかな?せっかく頑張っていても、そんなことを言われたら嫌じゃん……」
「耳にタコが出来るぐらいに言われたはずだ」
「そうだよね……」
今日の自分に起こった出来事を思い出した。あの3人から向けられた言葉だ。バカバカしいと思う。
晴海さんはどうだろうか?あんなことを言われたうえに、兄弟から比較されたら辛いだろう。相談相手はいたのだろうか?
そういうことをぼんやり考えていると、黒崎から頭を抱き寄せられた。俺は彼の肩にもたれ掛かるようにして、頭を撫でられている感覚に身を任せた。
「強くなったな」
「そうかな?」
「……ああ。お前が黒崎家に来てくれたおかげで、親父も俺も強くなった。晴海兄さんもそうだろう。どこでボタンの掛け違いをしたのか分からない。みっともない話だ」
「俺も強くなれたよ。黒崎さんと出会っていなかったら、誰のことも信用できないままだったと思う。感謝している。これ以上は怪我をさせたくない」
「いいってば~。戦いごっこだから」
「……気が気じゃない。もう外を歩くな」
「戦いごっこだってば……」
ここは機嫌を取っておこう。軽く頬へキスをすると、近くからざわめきが起きた。これぐらいはいいだろう?ちょっと口元が触れただけだと、黒崎に言い張った。お互いに目を逸らしながら。
これから帰ることになった。お義父さん達と一緒に帰りたい。黒崎に頼むと、静かに首を横に振られた。
「どうして?」
「早く家に帰って休んでほしい。身体がショックを受けているはずだ」
「平気だよ。このまま晴海さんに会わないでいたら、チャンスが遠のきそうだよ」
「機会を作る。今は休んでほしい」
「うん……」
小さな子供にするかのように視線を合わされた。その目には心配の色がある。もう駄々をこねることはやめておきたい。
「今日はすまなかった。黒崎の家に連れて来たことで嫌な目にあわせている」
「承知の上だよ。それに俺だって『黒崎』になるんだからね。晴海さんはお兄ちゃんになる人なんだ」
「そうか……」
どっちが怪我人なのか分からない。黒崎の背中をさすって励ました。せっかくだから、病院の教会に寄っていくことにした。黒崎の気がまぎれることを期待しながら。
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