アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 集合場所に到着すると、そばにいたバンドで喧嘩が起こった。ステージが上手くいかなかったと言っている。すると今度は、前後に立っていたバンド同士が言い合いになった。

 藤沢からこう言っていた。普段なら笑って済むことが、こういう緊張感のある場所だと不満が溢れ返るのだと。モデルの仕事で大人の世界で過ごしているから、こういうことに慣れているのかも知れない。モデル同士がいがみ合うこともあるそうだ。

 運営スタッフがイヤホン越しに会話をして、バンドリーダーの名前を確認しながら、各リーダーに話しかけた。全員揃っているかの確認だ。これから結果発表される。とうとうこの時間が訪れたのかと思い、緊張した。すると、別の運営スタッフが入って来て、受賞バンドを呼び出していった。

「わああ~、とうとう結果発表だよ~」
「なつきーー、落ち着けよーー」
「おい!結果が出るぞ!」
「エントリー№……、……、……」

 3組のバンドが呼び出された後で、室内全体にざわめきが起きた。もう駄目だと声を上げながら、床に座り込む人まで出て来た。帰り支度をするバンドすら出始めた。それだけ大きなコンテストだと実感した。とても入賞はできないだろう。

「俺たちはだめかな……」
「2位と1位が残っているよ」
「……あれ?俺たち?」
「ええーー?」

 俺達を見て、運営スタッフさんが手を振った。夢を見ているかのようだ。

「……IRON ANGELさん!こちらへ!」
「わあーーー!」
「ええーーー?」
「やったー!」
「わーーー!」

 メンバー全員でハイタッチをした。呼び出されたいと胸を高鳴らせたいと思っていたくせに、いざ現実となると、こんなにビックリするものなのか。

 そして『ゼロ・スペース』というバンドも呼び出された。スタッフから説明を受けて、この後、ステージで演奏することになった。どちらが優勝なのかは、ステージで発表されるそうだ。嬉しさで胸がいっぱいだ。

 俺達の近くには、そのゼロ・スペースのメンバーがいる。ベース担当のリーダーの大和から声をかけられた。

「アイアンエンジェル、かっこよかったよ!俺ら、ゼロスペース。一緒にやれて良かった!」
「ありがとうー!」
「あのうちわ……、ここにあるのか。はははーー、見せてくれよ。上手に貼り付けているな。ヨレて大変じゃなかった?」
「ううん。尻に敷いておいたからさ~」
「げえええっ、面白くないよー」

 大和と悠人からツッコまれ、笑いが起きた。そのおかげで一気に緊張感が解けて、みんなでわいわいがやがや話しながら、ステージへ向かった。どちらが優勝かどうかよりも、やりきれた喜びで頭がいっぱいになり、楽しさを感じた。
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