アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 ワーーー!

 ゼローー!……アイアンーーー!

 大きな歓声に迎えられてステージに立った。司会者から促されてステージ中央に進み、ゼロスペースのメンバーと肩を叩き合い、笑い合った。A8ブロックでは、両親達が大きく手を振ってくれていた。

 ステージでは、ゲストバンドの楽曲が流れている。今回限定バンドのものだ。ベテルギウスの植村さんと佐久弥がコラボして、ディストリックというバンドを組んだ。地区という意味だ。

「すごいね。生で聴けたよー。これはベテルギウスだね。visible rayをやっているね」
「いい曲だよね。毎日、聴いていたよ~。……あれ?あの人は……」
「うん。……そっか」

 悠人が無言になった。観客席にいる久田さんの隣に女性が立っていた。お母さんかも知れない。悠人が涙を浮かべていたから気づかないふりをした。

 ステージで流れている音楽のボリュームが下げられた。とうとう順位の発表だ。ステージで流されている音量が下げられた。とうとう順位の発表だ。司会者が中央に立ち、手元の紙を広げた。

「……発表します!」
「ひいいいいっ」
「2位……IRON ANGEL!!」

 司会者が告げたのは、俺たちのバンド名だった。

 ワーーー!

 目の前に広がる人波から歓声が上がった。その後で、ゼロスペースの名前が告げられた。1位だ。

「さあ、やろう!」
「トリャーー!」
「おおーー!」

 鳴り止まない歓声に迎えられて、演奏のポジショニングをした。演奏するのは、一曲目にやったものだ。司会者が曲名を告げた。

「……IRON ANGEL、……夏椿の天使!」

 悠人が『夏椿の天使』という、この楽曲の意味を教えてくれた。ナツツバキは一日花だ。咲いた花は、その日のうちに落ちてしまう。それでもめげない。救いの天使は鉄のように強い子で、ナツツバキのように落ちても、また花を咲かせる。決して派手ではないが、綺麗な白い花だ。そういう意味だということだった。

 タタタタ…………、ザーーー!

 低音のドラム音と、ギターフレーズが響き渡った。そして、うちわが掲げられた時、大歓声が起こった。まるで、一枚の風景画のようだと思う。ドラムとベースが地面と土なら、リズムギターは茎の部分だ。盛り上げるフレーズを奏でるリードギターが花を咲かせて、ボーカルが旋律という波を起こす。

 ワーー!

 アイアンエンジェルー!

 観客からの応援が太陽の光になって差し込み、ステージに舞い落ちる紙吹雪が、赤と白の花びらへ変わった。そして、旋律という青い海へ浮かんだ船が、大海原へ漕ぎ出した。
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