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20時。
晩ご飯を食べた後、黒崎に着替えを手伝ってもらった。汗ばんでいたから軽くシャワーを浴びて、バスタオルで体を拭いてくれた。世話をされることに全く抵抗感がないのは、俺が図々しくなったからだ。わりと甘え上手になった気もしている。着替えの後で少しだけ寝た。すると、カタカタという音が聞こえて寝返りを打つと、黒崎がパソコンを使っていた。
「すまない、起こしたな」
「大丈夫だよ。ずっとやっていたの?」
「ああ。もうすぐ終わる」
心配をかけないように言ったのだと分かる。もうすぐ終わるのは本当だ。頑張っている姿を見るたびに好きになる。同じ男として尊敬しているし、頼りになる人だ。ベッドから降りて、後ろから黒崎に抱きついた。肩が凝っているように感じた。
「甘えん坊になったか」
「いつものことじゃん」
「いつもより我儘だぞ」
「家の中は我儘を言い放題でいいんだよね?」
「ああ、もちろんだ。もっと言ってもいいぞ?」
「その包容力に騙されたよ」
黒崎の耳元へキスをした。パソコンの画面を覗き込むと、沢山の数字が並んでいた。決算書らしい。ファイル名にそう表示されていた。さらに他のファイルもあった。
「色んなことに関わっているんだね。レストランの内装、経営、食べ歩きでのアイデア収集」
「好きでやっている」
黒崎が数字を目で追いながら、俺の会話の相手をしてくれた。一度に2つ以上の事が出来るのが羨ましい。不器用な俺のことを優しい目で見てくれる。そして、さり気なくフォローをしてくれている。そういう黒崎のことをすごいと思う。俺も早く頼りにされるようになりたいと思った。
「働き始めたら、話の内容がもっと分かるようになるかな」
「お前だったらすぐに理解出来るようになる。……ああ、例の企画書が届いた。取材の件だ。日曜日に会いたいそうだ。先に会って打ち合わせをしておくといい。体調がな……」
「その日までには治ってるよ。忙しいのに引き受けたのは、黒崎製菓に入るから?合併の宣伝になるんだろ。今回の話って、断りにくい相手からのものなんだろ?会社のことで変化が起きるタイミングとはいっても、話を受けることが不思議だったんだ」
「ああ。世話になった人からの紹介だったからだ」
「それなら断れないよね。協力させてよ」
「お前のことを見せるのが惜しくなってきた」
抱き寄せられたタイミングで、膝の上に座った。向かい合わせになって、見つめ合った。寝室の照明を落とした。フローリングの床には、俺たちの影が落ちている。2人分なのに、影は一人分だ。
いつもよりずっと優しい。この包容力に騙されて結婚したら、頑固オヤジに変貌してしまった。それでも優しさを見せられるたびに、この人を選んで良かったと思った。こうして一日が過ぎていった。
晩ご飯を食べた後、黒崎に着替えを手伝ってもらった。汗ばんでいたから軽くシャワーを浴びて、バスタオルで体を拭いてくれた。世話をされることに全く抵抗感がないのは、俺が図々しくなったからだ。わりと甘え上手になった気もしている。着替えの後で少しだけ寝た。すると、カタカタという音が聞こえて寝返りを打つと、黒崎がパソコンを使っていた。
「すまない、起こしたな」
「大丈夫だよ。ずっとやっていたの?」
「ああ。もうすぐ終わる」
心配をかけないように言ったのだと分かる。もうすぐ終わるのは本当だ。頑張っている姿を見るたびに好きになる。同じ男として尊敬しているし、頼りになる人だ。ベッドから降りて、後ろから黒崎に抱きついた。肩が凝っているように感じた。
「甘えん坊になったか」
「いつものことじゃん」
「いつもより我儘だぞ」
「家の中は我儘を言い放題でいいんだよね?」
「ああ、もちろんだ。もっと言ってもいいぞ?」
「その包容力に騙されたよ」
黒崎の耳元へキスをした。パソコンの画面を覗き込むと、沢山の数字が並んでいた。決算書らしい。ファイル名にそう表示されていた。さらに他のファイルもあった。
「色んなことに関わっているんだね。レストランの内装、経営、食べ歩きでのアイデア収集」
「好きでやっている」
黒崎が数字を目で追いながら、俺の会話の相手をしてくれた。一度に2つ以上の事が出来るのが羨ましい。不器用な俺のことを優しい目で見てくれる。そして、さり気なくフォローをしてくれている。そういう黒崎のことをすごいと思う。俺も早く頼りにされるようになりたいと思った。
「働き始めたら、話の内容がもっと分かるようになるかな」
「お前だったらすぐに理解出来るようになる。……ああ、例の企画書が届いた。取材の件だ。日曜日に会いたいそうだ。先に会って打ち合わせをしておくといい。体調がな……」
「その日までには治ってるよ。忙しいのに引き受けたのは、黒崎製菓に入るから?合併の宣伝になるんだろ。今回の話って、断りにくい相手からのものなんだろ?会社のことで変化が起きるタイミングとはいっても、話を受けることが不思議だったんだ」
「ああ。世話になった人からの紹介だったからだ」
「それなら断れないよね。協力させてよ」
「お前のことを見せるのが惜しくなってきた」
抱き寄せられたタイミングで、膝の上に座った。向かい合わせになって、見つめ合った。寝室の照明を落とした。フローリングの床には、俺たちの影が落ちている。2人分なのに、影は一人分だ。
いつもよりずっと優しい。この包容力に騙されて結婚したら、頑固オヤジに変貌してしまった。それでも優しさを見せられるたびに、この人を選んで良かったと思った。こうして一日が過ぎていった。
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