アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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12-10

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 18時45分。 

 ガタガタ。玄関から物音がした後、アンが走って行った。追いかけるようにして玄関へ行くと、黒崎が帰ってきていて、靴を脱いで上がったところだった。さっそく、黒崎へダイブするようにして抱きついた。

「黒崎さーん。おかえりなさい!」
「……ただいま」
「回ってよ~」
「……はいはい」

 もう一度、黒崎の体へ抱きついた。そして、黒崎の手が両脇の下へ入って俺の体を支えた後、彼がゆっくりと回り始めた。小さい頃に、両親から遊んでもらっていたやつだ。両足が宙に浮いたり、地面についたりしている。しっかりと抱き留めてくれているから、転ぶ心配がないと思う。こうして黒崎が俺の遊びに付き合ってくれている。腰痛が心配だから、いつもは頼めない。でも、黒崎の方からやってやろうかと声を掛けられることが多い。俺が楽しそうにするからだと思う。

「クルクルーー。メリーゴーランドだね~」
「もっとか?」
「うんっ。あと10回転……」
「そろそろ目が回ってきた……」
「ありがとう。見せたいものがあるんだ!」

 回転をやめて、Tシャツを見せたいと話した。沙耶さんからのプレゼントで、今日の昼に届いた物だ。トラ足スリッパを買うぐらいだから、きっと黒崎も気に入ると思う。さっそくウサギプリントのエプロンを脱いで、今着ているTシャツを見せた。トラの顔写真がプリントされている柄だ。

「夏樹。このTシャツをどこで買ったんだ?」
「沙耶さんからプレゼントされたんだ。あんたは動物グッズが好きだから、虎の顔のプリントが気に入ると思って。カッコいいよね?レディースサイズだけど、俺でも平気だったよ。けっこう丈が長いからさ~。大阪のショップで買ったんだってさ」
「せっかくだが、それを脱ごう」
「気に入らない?」
「もっと脱いでくれ……」

 せっかくなのに見てくれなかった。残念だ。でも、今はそれでもいいかと思った。啄むようなキスを続けながら、頑張って来たぞと囁かれたからだ。

 お疲れ様。そう黒崎に言うと、微笑みが返ってきた。そして、俺が風呂が沸いているよと声を掛けると、キスが返ってきた。さっそく黒崎のことをバスルームへ連れて行き、風呂に入ってゆっくりしてもらった。こうして一日が過ぎていった。
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