アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 悠人と話していると、また男子学生達から見られた。好意的な目つきをしていない。ここの生徒は大人しいタイプが多いと聡太郎が言っていた。荒っぽいことはしてこないだろうと思う。でも、嫌な雰囲気が漂い、何があったのかと聞いてみたくなった。

(悠人のことを巻き込めない。こっちを向こうか……)

 彼らの目線を感じないで済むように、座っている向きを変えた。すると、やっぱり俺の方に用があるようで、彼らが俺の前に立った。そして、前の机にもたれ掛かるようにして立ち、俺に話しかけてきた。

「君が中山夏樹君なんだね?開明高校出身の……」
「うん、そうだよ」 
「全国模試の数学と物理で、いつも上位にいたね。俺は北添健太だ。ランキングで名前を見たことあるだろう?」 

 そういうことかと納得した。これは藤沢から聞いた話だ。大学に入ると、こういう話題で声を掛けられることがあるそうだ。親しみを持って話しかけられる場合と、そうではない場合があるという。俺の場合は、悪い方だと思う。彼に喧嘩をふっかけられる筋合いはない。まるで中学時代の喧嘩のように感じて、ため息をついた。喧嘩をするわけにはいかない。だから、やんわりと話題を変えようと思った。

「名前が沢山あり過ぎて、覚えていないんだ。これからもよろしく」 
「へえ。自分より上がいないから、見る必要がなかったのか」
「そんなことはないよ」 
「すごく高そうな服だね」   

 やっぱり喧嘩を売られているようだ。買うわけにはいかない。昔と今の自分は違うのだから。相手が諦めるまで待つことにした。彼らが俺の服装を眺め始めた。上から下までだ。黒崎が選んでくれたもので、派手さはない。髪型も特徴がない。喧嘩を売られる理由はない。

(あれ?あの子もこっちに来る……)

 そこへ、お洒落な格好をした学生が教室へ入って来た。そして、俺の方を見るなり、笑い掛けてきた。服が好きだそうで、俺が北館に入る時に見かけていて、声を掛けようとしてくれていたそうだ。

「これからよろしく。俺、山崎来庵やまさきらいあんっていうんだ。近くで見たかったんだ。イタリアブランドだよね?すっげーー。黒塗りの高級車で来た子だよね?運転手からドアを開けられて……」
「うん。転びそうになったところも見られていたかな?」
「ううん。友達と一緒に入って行ったから、声をかけられなかったんだ。あれ?こいつら、友達?」
「いやーー、俺達は違うよなーーー」
「そうだよなーー」
「なんだよ?どうしたんだよ?」

 山崎が険悪な雰囲気の二人を見て眉をひそめた。すると、二人が俺の方を向き、こいつのことを知っているか?開明高校の中山夏樹といえば、暴力沙汰で有名だったと言い始めて、悠人が彼らのことを止めた。

「やめろよ!!」
「何だよ……」
「お前らなあ!同じ基準で物を考えるな。ドングリの背比べは、自分達だけでやれよ!」

 悠人からの一喝に、教室内が静まり返った。悠人が二人を睨みつけた。真っ直ぐに視線を向けている姿からは、毅然とした空気が漂っていた。その気迫に押されたのか、二人が逃げて行った。残ったのは、俺と悠人と山崎だった。山崎はのんびりしているタイプらしく、大あくびしていた。そういう彼を見て、俺はホッとした。悠人はまだ顔を赤くして怒っていた。ありがとう。そうお礼を言うと、いいんだよと言い、笑いかけてくれた。
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