アイアンエンジェル~あの日の旋律

夏目奈緖

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 玄関ホールに立っている。これから帰るところだ。お義父さんから心配をされているところだ。アンと遊んでいた時に、階段の手すりで額をぶつけてしまったからだ。その音で、2人が書斎から飛び出してきた始末だ。黒崎から叱られている。

「トロいことは自覚しているだろう。それぐらいで済んだから良かったが、山崎さんも心配して……、この間も……」

 この状態が続いている。お義父さんが気を利かせて、話題を変えてくれた。あの柱に立ってみろと。カーネーションの横にある。

 そばまで行くと、薄いペンと傷がついていた。そこに書かれていたのは、拓海、晴海、圭一の文字だ。俺の腰から頭の上まで付いている。3人が毎年伸びた背を記録していたそうだ。

「黒崎さん、こんなに小さかったんだね?」
「当たり前だ」
「可愛くない人だね~。拓海さんより背が高いんだね」
「そうか?」
「うん。見てよ」

 拓海さんの高さと比べると、黒崎の方が数センチ高かった。それを知った黒崎が、懐かしさと悲しさが混ざったような顔になった。皆が揃って笑っていられたら理想なのだろう。俺に出来ることは、そばにいることだ。

「いつの間にか身長まで……。そろそろ帰るぞ」
「うんっ。お義父さん、おやすみなさい」
「おやすみ。またおいで」
「水曜日に来るよ。図書室の本を返しに。また借りるよ~」

 紙ぶくろには、天体観測の本が2冊入っている。他にも読みたい物が多い。物持ちがいいと笑っていた通り、昔のチラシまで保管されていた。

 玄関を出ると月が出ていた。この庭からの星空の眺めも楽しみたい。5月が待ち遠しい。どんな生活になるかな?と話しながら、車に乗り込んだ。
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