135 / 283
18-7
しおりを挟む
20時。
お義父さんと黒崎が書斎で話している間、同じ2階にある図書室で2人のことを待っている。見るからに古い本や、最新刊の天文学系の本が、大きな棚に並べられている。その多さに圧倒された。この家は大昔から建っていて、お義父さんが改築して、今の洋館になった。だから、古い本が残っているそうだ。
「うーん、すごいとしか言いようがない。これは60年前の雑誌かな?……トイレに行きたくなった」
受験の時に泊まったのは、一階の客間だった。その部屋にはトイレもお風呂もあったから歩き回っていなくて、この家の中をよく知らない。二階に上がったのも、今回が初めてだ。
図書室を出た。階段へ向かう手前に、灯りが漏れている部屋があった。その前を通りかかると、黒崎の話し声がした。この部屋が書斎だろう。そのまま通り過ぎようとしたら、自分の名前が出たから足を止めた。立ち聞きは悪いと思いつつも、どうしても気になった。
「……法的に繋がりがない。病院へ運ばれても、家族以外には病状を伝えない場合もある。相続にも問題がある」
「……私も賛成だ。黒崎家の養子として迎えたい。夏樹ちゃんが納得すると思うか?」
「……新しい環境に慣れた後で話す。黒崎夏樹になってもらいたい。長く掛かっても説得する」
「……次は私の相談だ。二葉のことだ。こちらへ呼びたい」
「……経営に興味を持っているが、倉口家の家族がいる。俺が相談相手になる」
「……償いをしたい。夏樹ちゃんのことも育てたい。子育てという意味ではない」
「……将来のことは決めていない。大学生らしい生活をさせる」
2人の話を聞いてしまった。決して嫌なものではない。自分のことを考えてくれているのが分かる。ただ、展開についていけなかった。俺よりも年上の2人には、沢山のものが見えているのだろう。
それよりも、二葉のことだ。彼女は何も知らないはずだ。家族にしか分からない時間を過ごして来た。本当の事を聞かされて、何になるというのだろう。彼女はそう言いそうだと思った。将来の希望が叶うなら、サポートは良いことだろう。しかしそれには、心の問題がある。
「二葉ちゃんに話さないと、前に進まないよね。将来のことだもん。彼女が決めることだし。でも、家族がギクシャクするんじゃないかな……」
こうして心配しても仕方のないことだ。自分のことも考えられないのに。そっとドアから離れて、階段へ向かった。
吹き抜けになっているから、階段の踊り場から玄関が見渡せる。ふと、大きな花瓶の花が視界に入った。赤と白の花が飾られている。
「あれって、ノースウィンド・カーネーションだ。母の日が近いからかな?」
赤い花は何だろう?近くまで行くと、カーネーションを包んでいる紙だと分かった。ふんわりしているから花に見えた。花瓶の手前の方には綺麗な結び目があり、応援されている気分になった。
お義父さんと黒崎が書斎で話している間、同じ2階にある図書室で2人のことを待っている。見るからに古い本や、最新刊の天文学系の本が、大きな棚に並べられている。その多さに圧倒された。この家は大昔から建っていて、お義父さんが改築して、今の洋館になった。だから、古い本が残っているそうだ。
「うーん、すごいとしか言いようがない。これは60年前の雑誌かな?……トイレに行きたくなった」
受験の時に泊まったのは、一階の客間だった。その部屋にはトイレもお風呂もあったから歩き回っていなくて、この家の中をよく知らない。二階に上がったのも、今回が初めてだ。
図書室を出た。階段へ向かう手前に、灯りが漏れている部屋があった。その前を通りかかると、黒崎の話し声がした。この部屋が書斎だろう。そのまま通り過ぎようとしたら、自分の名前が出たから足を止めた。立ち聞きは悪いと思いつつも、どうしても気になった。
「……法的に繋がりがない。病院へ運ばれても、家族以外には病状を伝えない場合もある。相続にも問題がある」
「……私も賛成だ。黒崎家の養子として迎えたい。夏樹ちゃんが納得すると思うか?」
「……新しい環境に慣れた後で話す。黒崎夏樹になってもらいたい。長く掛かっても説得する」
「……次は私の相談だ。二葉のことだ。こちらへ呼びたい」
「……経営に興味を持っているが、倉口家の家族がいる。俺が相談相手になる」
「……償いをしたい。夏樹ちゃんのことも育てたい。子育てという意味ではない」
「……将来のことは決めていない。大学生らしい生活をさせる」
2人の話を聞いてしまった。決して嫌なものではない。自分のことを考えてくれているのが分かる。ただ、展開についていけなかった。俺よりも年上の2人には、沢山のものが見えているのだろう。
それよりも、二葉のことだ。彼女は何も知らないはずだ。家族にしか分からない時間を過ごして来た。本当の事を聞かされて、何になるというのだろう。彼女はそう言いそうだと思った。将来の希望が叶うなら、サポートは良いことだろう。しかしそれには、心の問題がある。
「二葉ちゃんに話さないと、前に進まないよね。将来のことだもん。彼女が決めることだし。でも、家族がギクシャクするんじゃないかな……」
こうして心配しても仕方のないことだ。自分のことも考えられないのに。そっとドアから離れて、階段へ向かった。
吹き抜けになっているから、階段の踊り場から玄関が見渡せる。ふと、大きな花瓶の花が視界に入った。赤と白の花が飾られている。
「あれって、ノースウィンド・カーネーションだ。母の日が近いからかな?」
赤い花は何だろう?近くまで行くと、カーネーションを包んでいる紙だと分かった。ふんわりしているから花に見えた。花瓶の手前の方には綺麗な結び目があり、応援されている気分になった。
0
あなたにおすすめの小説
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
純白のレゾン
雨水林檎
BL
《日常系BL風味義理親子(もしくは兄弟)な物語》
この関係は出会った時からだと、数えてみればもう十年余。
親子のようにもしくは兄弟のようなささいな理由を含めて、少しの雑音を聴きながら今日も二人でただ生きています。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる