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そっと起き上がり、ベッドから出た。寝室のドアを静かに開けて、書斎の灯りを確かめた。隙間から光が漏れている。忍び足で近づき立ち止まった。
(何をやってるんだよ。俺……。気づいてくれないかな?入ってもいいのに……)
黒崎は耳がいいし気配に敏感だ。いつもなら気づいて声をかけてくる。しかしその気配がない。身じろいで足音を立てたのは、水を飲みに行く口実だ。
「……夏樹。下へ行くのか?」
「……うん。喉が渇いたから」
やっぱり気づいてもらえた。優しい声で、おいでと声を掛けてくるはずだ。しかし待っていても、その気配がない。いい加減にしろ。頭の中で呟いた。廊下は寒いのに。
もう気にしてなんかやらない。ドアの前から離れて階段を下りた。追いかけて来るわけもなく、寒いなと思いながらキッチンへ入った。
温かいお茶を淹れていると、階段を下りてくる音が聞こえてきた。ドキッとしながらも知らぬふりをしていると、カチャカチャと音が近づいてきた。我が家で暮らしている、シーズー犬の”アントワネット”だった。足の爪の音だったのか。
アンのことを抱き上げて、もふもふの毛に頬ずりした。
「アン。書斎に入らなかったんだね。パパがいるのに。俺のことが心配だったのか。ありがとう」
お茶を飲んで片づけていると、急に背中が温かくなった。体の前に腕が回されて、力を込められた。耳に息づかいを感じて、鼓動が高鳴った。黒崎だ。
「機嫌を直してくれ」
「別に悪くないけど……」
「どうして書斎に入って来なかった」
「喉が渇いていたからだよ……」
「悩ませた罰だ。お前の方からキスをしろ」
なんて強引な言い方なのか。後ろを向いているから出来ないと言い返すと、振り向かされた。息づかいを感じるほどに顔が近づき、誘われた。おいでと。
「どこに行くんだよ?キスをするから戻ったら?」
「苛めるな。タイムリミットだ」
いきなり深いキスされた。カウンターへ押し付けられて、パジャマの中に手が入って来た。足や腰を撫でられては、角度を変えて唇を塞がれた。身動ぎすると、許すまで続けるぞと、笑い声を立てられた。心が蕩けてきたのがバレたのか。
「なんのことだよ?知らないよ?」
「今回は拗ねているのか。昨日のことだ」
「思い出してあげない」
「違うことで上書きする。おいで」
寝室へ促された。抗うふりをしつつベッドへ入り、熱くなったと口実をつけて、お互いの着ているものを脱がせ合った。そして、ベッドで、ごめんなさいを受け入れた。仕掛け絵本、ピーマンの苗、最新型の作物カバーをプレゼントして貰う約束を取り付つけた後で。
その代わりに、ラインを入れて来なかった理由を聞かれた。喧嘩中だったからだ。黒崎は納得しなかった。大学の日は4回、家にいる日は3回と決めている。約束という名の束縛だ。そっちからして来いと言い返すと、肩へ甘噛みされた。待っていたぞという囁きと共に。
全面降伏したのは、お互い様だ。これが俺と黒崎とのストーリー。回転木馬のように追いかけごっこ、エンドレス。
(何をやってるんだよ。俺……。気づいてくれないかな?入ってもいいのに……)
黒崎は耳がいいし気配に敏感だ。いつもなら気づいて声をかけてくる。しかしその気配がない。身じろいで足音を立てたのは、水を飲みに行く口実だ。
「……夏樹。下へ行くのか?」
「……うん。喉が渇いたから」
やっぱり気づいてもらえた。優しい声で、おいでと声を掛けてくるはずだ。しかし待っていても、その気配がない。いい加減にしろ。頭の中で呟いた。廊下は寒いのに。
もう気にしてなんかやらない。ドアの前から離れて階段を下りた。追いかけて来るわけもなく、寒いなと思いながらキッチンへ入った。
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アンのことを抱き上げて、もふもふの毛に頬ずりした。
「アン。書斎に入らなかったんだね。パパがいるのに。俺のことが心配だったのか。ありがとう」
お茶を飲んで片づけていると、急に背中が温かくなった。体の前に腕が回されて、力を込められた。耳に息づかいを感じて、鼓動が高鳴った。黒崎だ。
「機嫌を直してくれ」
「別に悪くないけど……」
「どうして書斎に入って来なかった」
「喉が渇いていたからだよ……」
「悩ませた罰だ。お前の方からキスをしろ」
なんて強引な言い方なのか。後ろを向いているから出来ないと言い返すと、振り向かされた。息づかいを感じるほどに顔が近づき、誘われた。おいでと。
「どこに行くんだよ?キスをするから戻ったら?」
「苛めるな。タイムリミットだ」
いきなり深いキスされた。カウンターへ押し付けられて、パジャマの中に手が入って来た。足や腰を撫でられては、角度を変えて唇を塞がれた。身動ぎすると、許すまで続けるぞと、笑い声を立てられた。心が蕩けてきたのがバレたのか。
「なんのことだよ?知らないよ?」
「今回は拗ねているのか。昨日のことだ」
「思い出してあげない」
「違うことで上書きする。おいで」
寝室へ促された。抗うふりをしつつベッドへ入り、熱くなったと口実をつけて、お互いの着ているものを脱がせ合った。そして、ベッドで、ごめんなさいを受け入れた。仕掛け絵本、ピーマンの苗、最新型の作物カバーをプレゼントして貰う約束を取り付つけた後で。
その代わりに、ラインを入れて来なかった理由を聞かれた。喧嘩中だったからだ。黒崎は納得しなかった。大学の日は4回、家にいる日は3回と決めている。約束という名の束縛だ。そっちからして来いと言い返すと、肩へ甘噛みされた。待っていたぞという囁きと共に。
全面降伏したのは、お互い様だ。これが俺と黒崎とのストーリー。回転木馬のように追いかけごっこ、エンドレス。
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