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2-1 黒崎家の末っ子の役目
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11月29日、金曜日。午前5時半。
我が家のキッチンでは、コンソメスープの匂いが漂っている。今朝は洋風の朝食にした。オムレツには、きのこソースをかける。早瀬さんから教わったレシピだ。ストックすると何でも使える。サラダには、ハニーマスタードドレッシングだ。これは彼からの頂き物だ。料理上手だから勉強になる。
「おいしいなあ。一日置くといいのか。黒崎さん、気に入りそうだな」
黒崎がアンを連れて、リビングへ入って来た。可燃ごみを出して戻って来た後だ。いつもアンがお伴をしている。さっそくキッチンへ呼んだ。
「黒崎さん。きのこソースの味見をしてよ。気に入るかな?」
「ああ、……美味いぞ。裕理から貰ったやつか?」
「そうだよ。新レシピを開拓しているんだ。作りやすいものに偏っているし……。今晩は何が食べたい?」
「何でも構わない」
「その”何でも”が困るんだよ~。今日は大学があるから、作り置きにしようかな」
今日は惑星物理学の実験がある。好きな分だけ集中するから、後で疲れるのがパターンだ。
「外食にしよう。テイクアウトでも構わない」
「リストランテ森下へ行こうよ。ピザが食べたくなったんだ」
「これで決まりだな」
黒崎がソファーへ座り、電子新聞を読み始めた。その姿は仕事モードに切り替わりつつあり、素敵だと思った。ニヤけながら、オムレツを焼き上げた。
この家に住み始めて2年半経つ。なんせ古い家だったから、全面リフォームをした。この使いやすいシステムキッチンは、黒崎が選んだものだ。ショールームで見ても分からないから迷っていると、これにしておけと言われた。どれも似たようなものだと選んだと思いきや、メーカーの情報を仕入れて、吟味したそうだ。
この家の内装と庭も、俺の好みに合わせている。この話は随分と経ってから、お義父さんから聞いた。それを黒崎に言うと、忘れたと言い返された。
ベタベタ甘かったり、突き放したりする人だ。だからその分、真実味がある。言うだけなら簡単だ。実際に行動に出している。大好きな部分だ。
思い出して気分が良くなった。鼻歌を歌いながら、トーストにバターを塗った。 すると黒崎がやって来た。お手伝いをすると。随分と成長したものだ。おかげで上手に出来るようになった。
「新しい銘柄なんだよ。あんたが好きな五葉バターの。ウンウン、いい風味だよ」
「そのメーカーなら間違いない。味見しているのか?これから食べるだろう」
「黒崎さん……。運ぶのを手伝ってよ」
誘惑したい気分になった。甘い気分を味わいたくて、バターがついた指先を舐めた。もちろん黒崎が見ている前で。
効果はあったようだ。微笑んだ後、首筋に歯を立てられた。そこで、そういうつもりではなかったふりをしてやった。
「腕を離せよ……。食べる時間がなくなるよ?」
「どうして誘惑したんだ?」
「していないよ。さあ、食べようね」
「今夜に期待しておく」
テーブルへ運び終えると、元通りの空気に戻った。きのこソースが美味しくて、鶏肉のソテーにも合いそうだと話した。こんな穏やかな日々を続けたいが、俺が飛び込もうとしているのは、別の日常だ。
我が家のキッチンでは、コンソメスープの匂いが漂っている。今朝は洋風の朝食にした。オムレツには、きのこソースをかける。早瀬さんから教わったレシピだ。ストックすると何でも使える。サラダには、ハニーマスタードドレッシングだ。これは彼からの頂き物だ。料理上手だから勉強になる。
「おいしいなあ。一日置くといいのか。黒崎さん、気に入りそうだな」
黒崎がアンを連れて、リビングへ入って来た。可燃ごみを出して戻って来た後だ。いつもアンがお伴をしている。さっそくキッチンへ呼んだ。
「黒崎さん。きのこソースの味見をしてよ。気に入るかな?」
「ああ、……美味いぞ。裕理から貰ったやつか?」
「そうだよ。新レシピを開拓しているんだ。作りやすいものに偏っているし……。今晩は何が食べたい?」
「何でも構わない」
「その”何でも”が困るんだよ~。今日は大学があるから、作り置きにしようかな」
今日は惑星物理学の実験がある。好きな分だけ集中するから、後で疲れるのがパターンだ。
「外食にしよう。テイクアウトでも構わない」
「リストランテ森下へ行こうよ。ピザが食べたくなったんだ」
「これで決まりだな」
黒崎がソファーへ座り、電子新聞を読み始めた。その姿は仕事モードに切り替わりつつあり、素敵だと思った。ニヤけながら、オムレツを焼き上げた。
この家に住み始めて2年半経つ。なんせ古い家だったから、全面リフォームをした。この使いやすいシステムキッチンは、黒崎が選んだものだ。ショールームで見ても分からないから迷っていると、これにしておけと言われた。どれも似たようなものだと選んだと思いきや、メーカーの情報を仕入れて、吟味したそうだ。
この家の内装と庭も、俺の好みに合わせている。この話は随分と経ってから、お義父さんから聞いた。それを黒崎に言うと、忘れたと言い返された。
ベタベタ甘かったり、突き放したりする人だ。だからその分、真実味がある。言うだけなら簡単だ。実際に行動に出している。大好きな部分だ。
思い出して気分が良くなった。鼻歌を歌いながら、トーストにバターを塗った。 すると黒崎がやって来た。お手伝いをすると。随分と成長したものだ。おかげで上手に出来るようになった。
「新しい銘柄なんだよ。あんたが好きな五葉バターの。ウンウン、いい風味だよ」
「そのメーカーなら間違いない。味見しているのか?これから食べるだろう」
「黒崎さん……。運ぶのを手伝ってよ」
誘惑したい気分になった。甘い気分を味わいたくて、バターがついた指先を舐めた。もちろん黒崎が見ている前で。
効果はあったようだ。微笑んだ後、首筋に歯を立てられた。そこで、そういうつもりではなかったふりをしてやった。
「腕を離せよ……。食べる時間がなくなるよ?」
「どうして誘惑したんだ?」
「していないよ。さあ、食べようね」
「今夜に期待しておく」
テーブルへ運び終えると、元通りの空気に戻った。きのこソースが美味しくて、鶏肉のソテーにも合いそうだと話した。こんな穏やかな日々を続けたいが、俺が飛び込もうとしているのは、別の日常だ。
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