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何だか心配になり、そばのテーブルいた友達の絵理奈ちゃんに画面を見てもらった。すぐに答えが返ってきた。80%は二葉に対する嫌がらせだろうと。
そのまま見ていると、急に背筋が冷たくなった。彼女たちに見覚えがあるからだ。インターン参加時や、オフィスを訪ねた時に、親切にしてくれた人達だった。俺に親切だったのは、社長の息子だからかな?
黒崎の異父妹だと知られている。本当は社長であるお義父さんの娘だ。社内で本当のことを公表したら、いい方向に変わるだろうか?もっと楽になるのかな?こんなことを考える時点で、負けている。今夜、二葉に電話をかけようかな?いや、それは駄目だ。彼女の誇りが傷つけられる。なんて心が弱いのだろう。自分以外の人を守るのが難しい。
悠人からは背中をさすられている。何も言わなくても伝わったのか。日下と矢代、絵理奈も頷き合っている。男女関係なく妬みがある。優秀だからじゃないか?と言われた。
すると今度は黒崎が画面に映り込んだ。待たせてすまないと言いながら。プラセルの役員が訪ねて来たそうだ。気を取り直したのに、黒崎が俺の表情に気づかないわけがない。家の中と同じ話し方で、理由を聞かれた。表情までが優しい。
「……オフィスを眺めた結果だろう?何を見たのか言え」
「……人間関係を見たんだ。俺に親切にしたのは、黒崎家の息子だからかなって」
「……そうか。倉口さん、来てくれ」
黒崎が呼びかけると、二葉がそばに来た。戸惑いながら画面に向かい、照れ笑いをしている。俺の方も恥ずかしい。ビデオ通話していることを教えるなと、心の中で呟いた。黒崎が二葉に声を掛けながら書類を渡している。
「倉口さん。何あったのか?」
「いいえ。書類を届けてもらえないかと、声は掛けられましたが……」
「そうか。夏樹、どうしたんだ?」
「ありがとう。見ていたんだね……」
黒崎の笑顔が優しい。夏のイベントではキツい言い方をしていたが、見守っていたのだと分かった。二葉からは照れ笑いされた。俺の方が慰められている。あのイベントでは年下に見えたのに。
「今日は何を食べているんだ?」
黒崎から話題を振られた。顔が熱くなりつつ、お昼ごはんを見せた。冷やっこ、豚しゃぶサラダ、五穀米、お味噌汁。悠人からは、カボチャの煮つけをプラスされた。多いふりをしろと言いながら。黒崎が笑っている。
「今日は定時で帰る。そのまま親父の家にいろ。……どうしたんだ?……こっちへ離れろ」
「え?大丈夫 ? 」
「倒れるよーー」
画面の向こうでは、通りかかった人が、移動式のボードに当たった。そして、大きく揺れて倒れてきた。黒崎が片手で支えたが、二葉が倒れそうになった。
近くにいた人から悲鳴があがった。俺たちも声をあげたが、助けることが出来ない。黒崎から離れているから、支えるのが間に合わない。
まるでスローモーションの光景だ。二葉からの悲鳴を覚悟した時、予想外の声が聞こえてきた。
「わあああああーっ、ひいいいいっ」
「……え? 」
「げえええっ。マジックが襲ってきた!」
二葉のオーバーリアクションに驚いた。そして、ボードの端に下がっていたマジックから襲われて、彼女のシャツが汚れてしまった。まるで悠人のような声をあげている。
「買ったばかりのシャツなのにーーっ」
「そうか。大丈夫か?」
「はははははーー」
そばに来た黒崎が驚いている。早瀬さんの笑い声が入った。クールな子かと思っていたのに、そういうリアクションをするのかと意外で、周りの人から笑い声が立ち、温かい空気が生まれた気がした。俺たちも笑ったから、二葉が顔を真っ赤にして怒り出した。
黒崎がホッとした顔をした後、微笑んだ。それは、今月で一番の素敵な笑顔だった。
そのまま見ていると、急に背筋が冷たくなった。彼女たちに見覚えがあるからだ。インターン参加時や、オフィスを訪ねた時に、親切にしてくれた人達だった。俺に親切だったのは、社長の息子だからかな?
黒崎の異父妹だと知られている。本当は社長であるお義父さんの娘だ。社内で本当のことを公表したら、いい方向に変わるだろうか?もっと楽になるのかな?こんなことを考える時点で、負けている。今夜、二葉に電話をかけようかな?いや、それは駄目だ。彼女の誇りが傷つけられる。なんて心が弱いのだろう。自分以外の人を守るのが難しい。
悠人からは背中をさすられている。何も言わなくても伝わったのか。日下と矢代、絵理奈も頷き合っている。男女関係なく妬みがある。優秀だからじゃないか?と言われた。
すると今度は黒崎が画面に映り込んだ。待たせてすまないと言いながら。プラセルの役員が訪ねて来たそうだ。気を取り直したのに、黒崎が俺の表情に気づかないわけがない。家の中と同じ話し方で、理由を聞かれた。表情までが優しい。
「……オフィスを眺めた結果だろう?何を見たのか言え」
「……人間関係を見たんだ。俺に親切にしたのは、黒崎家の息子だからかなって」
「……そうか。倉口さん、来てくれ」
黒崎が呼びかけると、二葉がそばに来た。戸惑いながら画面に向かい、照れ笑いをしている。俺の方も恥ずかしい。ビデオ通話していることを教えるなと、心の中で呟いた。黒崎が二葉に声を掛けながら書類を渡している。
「倉口さん。何あったのか?」
「いいえ。書類を届けてもらえないかと、声は掛けられましたが……」
「そうか。夏樹、どうしたんだ?」
「ありがとう。見ていたんだね……」
黒崎の笑顔が優しい。夏のイベントではキツい言い方をしていたが、見守っていたのだと分かった。二葉からは照れ笑いされた。俺の方が慰められている。あのイベントでは年下に見えたのに。
「今日は何を食べているんだ?」
黒崎から話題を振られた。顔が熱くなりつつ、お昼ごはんを見せた。冷やっこ、豚しゃぶサラダ、五穀米、お味噌汁。悠人からは、カボチャの煮つけをプラスされた。多いふりをしろと言いながら。黒崎が笑っている。
「今日は定時で帰る。そのまま親父の家にいろ。……どうしたんだ?……こっちへ離れろ」
「え?大丈夫 ? 」
「倒れるよーー」
画面の向こうでは、通りかかった人が、移動式のボードに当たった。そして、大きく揺れて倒れてきた。黒崎が片手で支えたが、二葉が倒れそうになった。
近くにいた人から悲鳴があがった。俺たちも声をあげたが、助けることが出来ない。黒崎から離れているから、支えるのが間に合わない。
まるでスローモーションの光景だ。二葉からの悲鳴を覚悟した時、予想外の声が聞こえてきた。
「わあああああーっ、ひいいいいっ」
「……え? 」
「げえええっ。マジックが襲ってきた!」
二葉のオーバーリアクションに驚いた。そして、ボードの端に下がっていたマジックから襲われて、彼女のシャツが汚れてしまった。まるで悠人のような声をあげている。
「買ったばかりのシャツなのにーーっ」
「そうか。大丈夫か?」
「はははははーー」
そばに来た黒崎が驚いている。早瀬さんの笑い声が入った。クールな子かと思っていたのに、そういうリアクションをするのかと意外で、周りの人から笑い声が立ち、温かい空気が生まれた気がした。俺たちも笑ったから、二葉が顔を真っ赤にして怒り出した。
黒崎がホッとした顔をした後、微笑んだ。それは、今月で一番の素敵な笑顔だった。
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