84 / 514
10-3
しおりを挟む
午前11時。
収録現場の水族館“ゴーゴー海底園”のカフェスペースへ移動して、ランチの撮影に入っている。朝からスムーズに進行して、予定通りにイベント会場へ移動できるだろう。
バレンタインデーの影響なのか、平日の昼間なのに、館内はお客さんが多いそうだ。普段出歩かないからピンと来なかった。それを口にしたとき、羽音さんから笑いが起きた。3年前からこっちの方に住んでいるのに?と。そこへ悠人が事情を話した。黒崎の束縛と、我が家の庭のことだ。
「この子の家は森の中にあるんです。一日中過ごしたら外に出たくなくなります」
「へえー。俺達の実家に似ている場所なのか。遊びに行ってもいいかな?」
「……もちろん来てください。兄が作った花壇が見ごろなので。……こんにちは~。ありがとうございます~」
ここへ訪れたお客さんから手を振られた。さすがに慣れているのか、人気観光スポットへ取材に来たカメラに驚くこともなく、人が通り過ぎて行く。誰が来ているのかな?と、眺めている人が俺達に気づき、手を振ってくれた。それに応えるという、和やかな空気が流れている。
そして、そのまま流れるように歩いて行こうとして、誰もが息をひそめるパターンが増えた。俺達から離れた場所にいる、二人連れを見ての反応だ。黒崎とお義父さんがテーブルで向かい合い、まったりと珈琲を飲みつつ、見学しているだけのことなのに、水族館が似合わなくて、遠巻きに見られている。ときどき俺達の方を見て、お義父さんが手を振って微笑みかけて来るという、穏やかな空気感のはずなのに。
黒崎だけでも目立つのに、あの2人が揃うと異空間にさえ感じる。それこそ見慣れているから分からなかった。大らかな羽音さんが笑ったぐらいだ。
「滅多にお目にかかれない美形親子だね。怖さはないけど威圧感があるね。夏樹君も溶け込んでいるよ?悪い意味じゃなくて。姿勢がピンと伸びるから、あの家の子だって分かる」
「うっうっ。悠人にも指摘されたのに」
「なつきー、泣くなよ。クールな男だって意味だよ?俺の目指している姿なんだよー?」
悠人が俺が弓矢を構えているイメージの件を語り始めた。聞けば聞くほどに黒崎に似ているのを、ひしひしとと感じている。もちろん別人だよ、パートナーのことを嫌がるなよと、肩を叩かれつつだ。否定していないじゃないかと、黒崎の方を見てぎょっとした。女性達が遠巻きにしてウットリと鑑賞したからだ。
「なつきー、仕事中だよ?」
「そうだよー?」
「黒崎さん……。笑うなよ~っ」
俺に対してではない。社交的スマイルをいくらか増した微笑みを、彼女らに向けていた。関係者として気遣ってのことだとは、分かっている。
収録現場の水族館“ゴーゴー海底園”のカフェスペースへ移動して、ランチの撮影に入っている。朝からスムーズに進行して、予定通りにイベント会場へ移動できるだろう。
バレンタインデーの影響なのか、平日の昼間なのに、館内はお客さんが多いそうだ。普段出歩かないからピンと来なかった。それを口にしたとき、羽音さんから笑いが起きた。3年前からこっちの方に住んでいるのに?と。そこへ悠人が事情を話した。黒崎の束縛と、我が家の庭のことだ。
「この子の家は森の中にあるんです。一日中過ごしたら外に出たくなくなります」
「へえー。俺達の実家に似ている場所なのか。遊びに行ってもいいかな?」
「……もちろん来てください。兄が作った花壇が見ごろなので。……こんにちは~。ありがとうございます~」
ここへ訪れたお客さんから手を振られた。さすがに慣れているのか、人気観光スポットへ取材に来たカメラに驚くこともなく、人が通り過ぎて行く。誰が来ているのかな?と、眺めている人が俺達に気づき、手を振ってくれた。それに応えるという、和やかな空気が流れている。
そして、そのまま流れるように歩いて行こうとして、誰もが息をひそめるパターンが増えた。俺達から離れた場所にいる、二人連れを見ての反応だ。黒崎とお義父さんがテーブルで向かい合い、まったりと珈琲を飲みつつ、見学しているだけのことなのに、水族館が似合わなくて、遠巻きに見られている。ときどき俺達の方を見て、お義父さんが手を振って微笑みかけて来るという、穏やかな空気感のはずなのに。
黒崎だけでも目立つのに、あの2人が揃うと異空間にさえ感じる。それこそ見慣れているから分からなかった。大らかな羽音さんが笑ったぐらいだ。
「滅多にお目にかかれない美形親子だね。怖さはないけど威圧感があるね。夏樹君も溶け込んでいるよ?悪い意味じゃなくて。姿勢がピンと伸びるから、あの家の子だって分かる」
「うっうっ。悠人にも指摘されたのに」
「なつきー、泣くなよ。クールな男だって意味だよ?俺の目指している姿なんだよー?」
悠人が俺が弓矢を構えているイメージの件を語り始めた。聞けば聞くほどに黒崎に似ているのを、ひしひしとと感じている。もちろん別人だよ、パートナーのことを嫌がるなよと、肩を叩かれつつだ。否定していないじゃないかと、黒崎の方を見てぎょっとした。女性達が遠巻きにしてウットリと鑑賞したからだ。
「なつきー、仕事中だよ?」
「そうだよー?」
「黒崎さん……。笑うなよ~っ」
俺に対してではない。社交的スマイルをいくらか増した微笑みを、彼女らに向けていた。関係者として気遣ってのことだとは、分かっている。
0
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる