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お店に着き、近くの駐車場に車を停めた。そばには大きな公園があり、お洒落なライトアップがされている。歩いている人も楽しそうだ。この辺りを通ったことはあっても、遊びに来たことはなかった。大通りから観えているのは、白い敷地内に建っている洋館だ。お城ともいえる。
「広いレストランなんだね~。選ぶのは珍しいね?」
「……落ち着く場所を選んでいたからな。外観よりも客席は少ない。生演奏が聴けるから、わりと賑やかだ」
「このヘアスタイルでも平気?メッシュが入っているし、心配になっていたんだけど」
「……問題ない。テラス側の席を選んでおいた。人目を気にしなくていい。……気になるのか?俺の言うことを聞け」
「俺の言うことを聞くんだよね?いつもの流れになるじゃん……、あ……、この手には」
「言うことを聞かないのは、この口か?」
言い返す前に心臓の鼓動が跳ね上がった。顔を近づけて来て、触れるか触れないかの距離で微笑まれたからだ。キスをしない分だけ、甘い眼差しを浴びている。耳の下へ手が差し入れられて、触れるだけのキスをされた。
しかし、甘い展開が訪れるかと、そう期待したのが間違いだった。耳に噛みついたり、頬を引っ張ったりされたからだ。身をよじって抵抗すると、あっさりと押さえ込まれて、笑い声を立てられた。
「やめろよ~。お腹が空いたんだよ~」
「そのわりには顔が赤いぞ?俺の方まで心臓の音が聞こえてくる。……何か期待しているのか?」
「クソガキ。やめろって」
「……大人と子供のミックスだ。期待通りにしている」
ああ言えばこう言う。憎まれ口を叩いた後は、いつも通りに仕返しされるに決まっている。だからこうしてやろう。唇を吸い込んで、頬をふくらませた。そして両目を大きく見開いて、顔を近づけてやった。新しい威嚇方法だ。
「ウーーーッ」
「……あのなあ。新しい方法を編み出すな。来月には22歳になるだろう」
「37歳で……、やば……、ひゃひっぽいひょひょひゅひゅひゃん……っ」
「ガキっぽい事か?お前に合わせただけだ」
「ひゃんひゃ……、いて!」
「……額がノーガードだぞ」
ピンっと、額に軽い痛みが走った。ここで怯んでやるものか。両手で額を覆い、顔を違づけて威嚇しやった。すると、小さく吹き出して、サイドミラーを見せられた。そこには、思い切り変顔をした俺が映っていた。
生まれて初めての長髪で、エクステのメッシュまで入っている。ステージでは濃いメイクをするとはいえ、素顔だと違和感がある。美容室では似合うと思ったのに。
「ひゃひゃひゃ。違和感があるよね~?」
「お前の表情が原因だ。普段通りに戻してみろ」
「だったら指を離せよ。……いたっ。だからひゃひょー」
「まったく……」
ガタ……。黒崎が運転席へ戻った後、両手のガードを下ろして表情を戻した。しかし、また笑われてしまった。いったいどうしたのか?
予約時間が来るから降りようと促されて、素直に車から降りた。そしてその理由を知った。俺の顔が真っ赤になり、両目まで充血していることに。ますます髪型が似合わない感じになった。
「着くまでに戻るといいけど……」
「綺麗だ、イケメンだと言われなくて済む。ここからは百面相で過ごせ」
「黒崎さん。ヤキモチ妬くなよ~」
なんて可愛い人だ。駐車場から地上に上がると、公園の中に着いた。ムードいっぱいの光景に、気分がウットリした。
そして、レストランの敷地内を入ると、大きめの噴水を見つけた。水しぶきがライトに照らされて、輝いている。こういう場所が好きだ。
ふと思い浮かんだ光景がある。実家の方で暮らしていた頃に、こんな外観のレストランへ行ったことがある。テラスが見えていたり、大きな噴水があったりと共通点がある。
「似たようなお店に行ったことがあるよね?向こうで住んでいた時だよ」
「……覚えていたか。どんな時だったか思い出せるか?」
「ウーン……。圧倒されたけど楽しくって、走り回った気がするんだ。……ああ、藤沢達が一緒にいたよ。黒崎さんもいるよね?さすがに……」
「……テーブルに着いたら思い出すだろう」
タネ明かしをしないと笑われた。敷地内を歩いて行くごとに、パーティーの光景が思い浮かんだ。俺は何か衣装を着ていた。文化祭か何かだろうか?さすがにお店ではパーティーしたことがない。
黒崎が一緒に居なかった気がするなら、おかしいことだ。両親と一緒に居たのかな?いや、賑やか場所が苦手だから違うだろう。そう思いながら、お店の中に入った。
「広いレストランなんだね~。選ぶのは珍しいね?」
「……落ち着く場所を選んでいたからな。外観よりも客席は少ない。生演奏が聴けるから、わりと賑やかだ」
「このヘアスタイルでも平気?メッシュが入っているし、心配になっていたんだけど」
「……問題ない。テラス側の席を選んでおいた。人目を気にしなくていい。……気になるのか?俺の言うことを聞け」
「俺の言うことを聞くんだよね?いつもの流れになるじゃん……、あ……、この手には」
「言うことを聞かないのは、この口か?」
言い返す前に心臓の鼓動が跳ね上がった。顔を近づけて来て、触れるか触れないかの距離で微笑まれたからだ。キスをしない分だけ、甘い眼差しを浴びている。耳の下へ手が差し入れられて、触れるだけのキスをされた。
しかし、甘い展開が訪れるかと、そう期待したのが間違いだった。耳に噛みついたり、頬を引っ張ったりされたからだ。身をよじって抵抗すると、あっさりと押さえ込まれて、笑い声を立てられた。
「やめろよ~。お腹が空いたんだよ~」
「そのわりには顔が赤いぞ?俺の方まで心臓の音が聞こえてくる。……何か期待しているのか?」
「クソガキ。やめろって」
「……大人と子供のミックスだ。期待通りにしている」
ああ言えばこう言う。憎まれ口を叩いた後は、いつも通りに仕返しされるに決まっている。だからこうしてやろう。唇を吸い込んで、頬をふくらませた。そして両目を大きく見開いて、顔を近づけてやった。新しい威嚇方法だ。
「ウーーーッ」
「……あのなあ。新しい方法を編み出すな。来月には22歳になるだろう」
「37歳で……、やば……、ひゃひっぽいひょひょひゅひゅひゃん……っ」
「ガキっぽい事か?お前に合わせただけだ」
「ひゃんひゃ……、いて!」
「……額がノーガードだぞ」
ピンっと、額に軽い痛みが走った。ここで怯んでやるものか。両手で額を覆い、顔を違づけて威嚇しやった。すると、小さく吹き出して、サイドミラーを見せられた。そこには、思い切り変顔をした俺が映っていた。
生まれて初めての長髪で、エクステのメッシュまで入っている。ステージでは濃いメイクをするとはいえ、素顔だと違和感がある。美容室では似合うと思ったのに。
「ひゃひゃひゃ。違和感があるよね~?」
「お前の表情が原因だ。普段通りに戻してみろ」
「だったら指を離せよ。……いたっ。だからひゃひょー」
「まったく……」
ガタ……。黒崎が運転席へ戻った後、両手のガードを下ろして表情を戻した。しかし、また笑われてしまった。いったいどうしたのか?
予約時間が来るから降りようと促されて、素直に車から降りた。そしてその理由を知った。俺の顔が真っ赤になり、両目まで充血していることに。ますます髪型が似合わない感じになった。
「着くまでに戻るといいけど……」
「綺麗だ、イケメンだと言われなくて済む。ここからは百面相で過ごせ」
「黒崎さん。ヤキモチ妬くなよ~」
なんて可愛い人だ。駐車場から地上に上がると、公園の中に着いた。ムードいっぱいの光景に、気分がウットリした。
そして、レストランの敷地内を入ると、大きめの噴水を見つけた。水しぶきがライトに照らされて、輝いている。こういう場所が好きだ。
ふと思い浮かんだ光景がある。実家の方で暮らしていた頃に、こんな外観のレストランへ行ったことがある。テラスが見えていたり、大きな噴水があったりと共通点がある。
「似たようなお店に行ったことがあるよね?向こうで住んでいた時だよ」
「……覚えていたか。どんな時だったか思い出せるか?」
「ウーン……。圧倒されたけど楽しくって、走り回った気がするんだ。……ああ、藤沢達が一緒にいたよ。黒崎さんもいるよね?さすがに……」
「……テーブルに着いたら思い出すだろう」
タネ明かしをしないと笑われた。敷地内を歩いて行くごとに、パーティーの光景が思い浮かんだ。俺は何か衣装を着ていた。文化祭か何かだろうか?さすがにお店ではパーティーしたことがない。
黒崎が一緒に居なかった気がするなら、おかしいことだ。両親と一緒に居たのかな?いや、賑やか場所が苦手だから違うだろう。そう思いながら、お店の中に入った。
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