106 / 514
11-12
しおりを挟む
ああいう人に預けることが出来たなら、これは運命としか言いようがない。拍手が落ち着いた頃合いに、EDENの演奏が始まった。夏樹が囁くように楽曲紹介をした事で、声援が上がった。
「がらっと変わったなー。そう思わないか?」
「……あれは必要なことなのか?誘惑しなくても構わないだろう」
「いいじゃないか。あんたへ向けてのことだ。手前にお客さんがいるけど」
「……待て、あれをやるなと言いたい。おい、押さえるな」
「止めないと行きそうだからだよ」
すると、佐伯氏が夏樹へ耳打ちした。その後、夏樹がスタンドマイクに手を添えて、妖艶な笑みを浮かべた。妙に嫌な予感がする。
「……今夜、僕と踊ってもらえませんか?」
観客が一斉に色めき立ち、女性客が悲鳴をあげた。焦れた気分で見守っていると、伊吹の暑苦しい声が聞こえてきた。
「黒崎さんっ。夏樹達の晴れ舞台です!悠人君とのツインボーカルは……、必殺技行為ですよね!?」
「そうだな。もう始まっているぞ……」
「黒崎さんっ。あの色気に当てられました。弟だと分かっていながら。赤ちゃんの時から知っているのに……。俺のシークレットな件が、落ち着きを失いそうです……。ああーー」
「そうだな……」
「お母さんへ動画を送らないと!」
「……そうだな。撮ってやってくれ」
「ああーー!大変なことに!」
「……聞きたくない」
やかましいとは言い返さずにしておいた。義理の兄弟であり、相談相手になる人物だ。こんな関係になるとは予想外だった。あの子が歌手になる未来よりもだ。
ハロウィン風の仮装メンバーの中、夏樹だけがジャケット姿だ。彼のことを目立たせようとした結果だろう。夏樹がふいに恥ずかしそうにしたのが分かった。ステージよりも近い距離で、視線を浴びているからだ。それでも持ちこたえて歌っている。そして、自分の18歳当時を振り返った。
(ピアノニストの夢を絶たれたわけじゃないだろう。俺が尻込みした結果だ……)
上手くいくかもしれない。しかし、その気持ちと現実が奪われるかもしれない。それを恐れて一生懸命になれなかった。チャンスはあっても。
「ありがとうございましたーー!」
「バンパイア久弥・with・IRON ANGELでしたーー!」
6人でお辞儀をした後、夏樹が俺の方へ大きく手を振って来た。気恥ずかしさを隠して微笑みを返した。
ここからは俺が贈り物をする番だ。スタッフに声をかけて厨房へ向かった。デザート皿にメッセージを描くために。
「がらっと変わったなー。そう思わないか?」
「……あれは必要なことなのか?誘惑しなくても構わないだろう」
「いいじゃないか。あんたへ向けてのことだ。手前にお客さんがいるけど」
「……待て、あれをやるなと言いたい。おい、押さえるな」
「止めないと行きそうだからだよ」
すると、佐伯氏が夏樹へ耳打ちした。その後、夏樹がスタンドマイクに手を添えて、妖艶な笑みを浮かべた。妙に嫌な予感がする。
「……今夜、僕と踊ってもらえませんか?」
観客が一斉に色めき立ち、女性客が悲鳴をあげた。焦れた気分で見守っていると、伊吹の暑苦しい声が聞こえてきた。
「黒崎さんっ。夏樹達の晴れ舞台です!悠人君とのツインボーカルは……、必殺技行為ですよね!?」
「そうだな。もう始まっているぞ……」
「黒崎さんっ。あの色気に当てられました。弟だと分かっていながら。赤ちゃんの時から知っているのに……。俺のシークレットな件が、落ち着きを失いそうです……。ああーー」
「そうだな……」
「お母さんへ動画を送らないと!」
「……そうだな。撮ってやってくれ」
「ああーー!大変なことに!」
「……聞きたくない」
やかましいとは言い返さずにしておいた。義理の兄弟であり、相談相手になる人物だ。こんな関係になるとは予想外だった。あの子が歌手になる未来よりもだ。
ハロウィン風の仮装メンバーの中、夏樹だけがジャケット姿だ。彼のことを目立たせようとした結果だろう。夏樹がふいに恥ずかしそうにしたのが分かった。ステージよりも近い距離で、視線を浴びているからだ。それでも持ちこたえて歌っている。そして、自分の18歳当時を振り返った。
(ピアノニストの夢を絶たれたわけじゃないだろう。俺が尻込みした結果だ……)
上手くいくかもしれない。しかし、その気持ちと現実が奪われるかもしれない。それを恐れて一生懸命になれなかった。チャンスはあっても。
「ありがとうございましたーー!」
「バンパイア久弥・with・IRON ANGELでしたーー!」
6人でお辞儀をした後、夏樹が俺の方へ大きく手を振って来た。気恥ずかしさを隠して微笑みを返した。
ここからは俺が贈り物をする番だ。スタッフに声をかけて厨房へ向かった。デザート皿にメッセージを描くために。
0
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
没落令息はクラスメイトの執着に救われる
夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのアルフレッドが引き留める。
「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。
アルフレッドの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。
※FANBOXからの転載です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる