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12時。
社内は昼休憩の時間に入った。エレベーターへ乗り込み、3階の社員食堂へ向かう列がある。オフィスに戻る途中で、彼らから会釈を受けた。そして、南波が列から抜け出して来た。
「お疲れ様です!」
「南波、先日の提案書がよく出来ていた。プレゼンでは前のめりでいけ」
「はい。ありがとうございます。平田との共同作成です。彼からのアイデアが8割占めています」
「正直な奴だ。それをまとめ上げたのは、南波だぞ。いいチームワークが取れたな」
「はい。今後もよろしくお願いします。副社長室へは……」
「メールを寄越してこい。幼なじみの大和君は元気か?」
「順調に進んでいると話していました。IKUエンタテイメントに移籍できたので……」
須賀大和は夏樹と同じ音楽スクールの生徒だ。バンドコンテストでも一緒になった。別のレコード会社から移籍したのは、IKU所属のバンドに加入するためだ。
南波のそばにいるのは、R&W社からの研修生である北添だ。俺に笑顔を向ける南波を見て落ち着かない様子なのは、北添が彼に好意を寄せているためだ。嫉妬を受けるのは筋違いだが、腹は立たない。
(既婚者の余裕か。悪くない……)
エレベーターが着いたところで別れた後、桜木の話し声が聞こえて来た。電話だろう。オフィスとは違い、ぶっきらぼうな話し方をしている。電話の相手は伊吹に違いない。次々に我儘を口にしては、伊吹が喜んでいる姿が想像できる。すると、桜木から声を掛けられた。
「常務!夏樹君が風邪を引いているんですよね?」
「ああ。ゆっくり休んでいる」
「うちの伊吹が様子を見に行くと言っています。止めた方がいいですか?ご迷惑でしょうから。……なるほど。はた迷惑ですね。……いぶきー、やめておけ」
「……いや、助かる」
一抹の不安がよぎったのは一瞬だ。夏樹のそばに居るなら安心できる。このまま電話を代わると、暑苦しい声が聞こえた。すでに御園クリニックへ到着しているそうだ。夏樹が出てくるのを待っていると言っている。
「もしもしー?ここなら聞こえますか?電波状態が悪くって。虫の知らせで、夏樹に電話をかけて知りました。今日は休みを取っていたので……」
「伊吹君。今日は助かる。夏樹は処置中か?」
「はい。点滴を受けています。数日寝れば治りそうです。長谷部さんも付き添って下さいました。仕事に戻っていただき、俺が夏樹を送り届けます。黒崎さんが帰るまで、介抱しましょうか?」
「さすがに悪い。山崎さんがいる」
「遠慮なさらずに。バーテルス氏を紹介して下さったお礼です。あの日に渋谷へ出向いて良かった。弟たちの記念すべき日を記憶に焼き付けたくて、仕事の予定を前倒しにしました。いやー、R&W社さんとの打ち合わせなので、融通を利かせてもらえました。さすがは黒崎製菓グループですね。わが社との交流を進めていただきたい。いやー、話が逸れました」
「夏樹の声がするぞ。驚かせないでやってくれ」
「お兄ちゃん……、どうしてここに……」
夏樹のかすれ気味の声が聞こえたかと思えば、一人で平気だと言い出した。先日のバーテルス氏と伊吹との事が引っかかっているからだ。
社内は昼休憩の時間に入った。エレベーターへ乗り込み、3階の社員食堂へ向かう列がある。オフィスに戻る途中で、彼らから会釈を受けた。そして、南波が列から抜け出して来た。
「お疲れ様です!」
「南波、先日の提案書がよく出来ていた。プレゼンでは前のめりでいけ」
「はい。ありがとうございます。平田との共同作成です。彼からのアイデアが8割占めています」
「正直な奴だ。それをまとめ上げたのは、南波だぞ。いいチームワークが取れたな」
「はい。今後もよろしくお願いします。副社長室へは……」
「メールを寄越してこい。幼なじみの大和君は元気か?」
「順調に進んでいると話していました。IKUエンタテイメントに移籍できたので……」
須賀大和は夏樹と同じ音楽スクールの生徒だ。バンドコンテストでも一緒になった。別のレコード会社から移籍したのは、IKU所属のバンドに加入するためだ。
南波のそばにいるのは、R&W社からの研修生である北添だ。俺に笑顔を向ける南波を見て落ち着かない様子なのは、北添が彼に好意を寄せているためだ。嫉妬を受けるのは筋違いだが、腹は立たない。
(既婚者の余裕か。悪くない……)
エレベーターが着いたところで別れた後、桜木の話し声が聞こえて来た。電話だろう。オフィスとは違い、ぶっきらぼうな話し方をしている。電話の相手は伊吹に違いない。次々に我儘を口にしては、伊吹が喜んでいる姿が想像できる。すると、桜木から声を掛けられた。
「常務!夏樹君が風邪を引いているんですよね?」
「ああ。ゆっくり休んでいる」
「うちの伊吹が様子を見に行くと言っています。止めた方がいいですか?ご迷惑でしょうから。……なるほど。はた迷惑ですね。……いぶきー、やめておけ」
「……いや、助かる」
一抹の不安がよぎったのは一瞬だ。夏樹のそばに居るなら安心できる。このまま電話を代わると、暑苦しい声が聞こえた。すでに御園クリニックへ到着しているそうだ。夏樹が出てくるのを待っていると言っている。
「もしもしー?ここなら聞こえますか?電波状態が悪くって。虫の知らせで、夏樹に電話をかけて知りました。今日は休みを取っていたので……」
「伊吹君。今日は助かる。夏樹は処置中か?」
「はい。点滴を受けています。数日寝れば治りそうです。長谷部さんも付き添って下さいました。仕事に戻っていただき、俺が夏樹を送り届けます。黒崎さんが帰るまで、介抱しましょうか?」
「さすがに悪い。山崎さんがいる」
「遠慮なさらずに。バーテルス氏を紹介して下さったお礼です。あの日に渋谷へ出向いて良かった。弟たちの記念すべき日を記憶に焼き付けたくて、仕事の予定を前倒しにしました。いやー、R&W社さんとの打ち合わせなので、融通を利かせてもらえました。さすがは黒崎製菓グループですね。わが社との交流を進めていただきたい。いやー、話が逸れました」
「夏樹の声がするぞ。驚かせないでやってくれ」
「お兄ちゃん……、どうしてここに……」
夏樹のかすれ気味の声が聞こえたかと思えば、一人で平気だと言い出した。先日のバーテルス氏と伊吹との事が引っかかっているからだ。
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