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18時半。
うとうと微睡んでいると、全開にした窓から、木々の匂いがしてきた。鼻詰まりがないから安心した。喉が痛むと、鼻にも影響する。なんせ繋がっている。
気がつくと、加湿器の音が聞こえて来た。窓を閉めたのかな?色んなことを思い浮かべていると、目が冴えて来た。おまけにお腹も空いて来た。体調が悪いのに。これも成長なのかと嬉しくなった。
起き上がると、首筋にシートが貼られていた。しかし、伊吹の姿が見当たらない。
「お兄ちゃーん。ごほっ。まあいいか……」
そばにあったアイスティーを飲んだ。伊吹が淹れた、ハーブティーのミックスだ。これがまた気持ちがいい。
すると、アンが吼えている声が聞こえた。今日はトリミングへ行った日で、送迎で帰って来たようだ。
「めずらしいなあ?滅多に吼えないのに。ああ、お兄ちゃんのことが嫌いなのかな?」
「わー、俺は夏樹のお兄ちゃんだぞ!?アントワネット、怒らないでくれーー」
どたばたと廊下を歩いて来る音がする。助けに行こうとドアを開くと、伊吹がアンからバルコニーの方まで追い詰められていた。
伊吹は動物が好きなのに、アンには警戒されている。この部屋に来ようとしているが、アンから来させないようにされているようだ。
「うひゃひゃ。お兄ちゃん、頑張ってよ~」
「わああー、噛みつかれはしないが、迫力のある子だ!さすがは黒崎家の子だ。夏樹の元へ行かせてくれ!これを食べさせてあげたい。メルティストアの、クラブハウスサンドイッチだぞ。食べやすい大きさにカットしたんだぞ?ちゃんと介抱を……、これが食べたいのか?」
「アンのご飯は用意してあるよ。俺もお腹が空いたよ。それを食べたい」
「夏樹!?食欲があるのか。本当なのか?俺の聞き間違いじゃないのか?」
「本当だよ。美味しそうだねえ。あのホテルに2号店が入ったんだ。凄いことなんだって」
「夏樹!さすがは開発部へ入る子だ。詳しくなったな。情報収集は自分でやっているのか?そうだろう?」
「スタジオの差し入れとか、大学内のカフェとか。黒崎さんは別の系統だしね。庶民的じゃない方」
「そうか。スーパーと園芸店の商品しか知らない子が、よくぞ成長した。……いろんな事で成長した男の顔を見せてくれ。お母さんに話しておきたい。アン、やめてくれ。夏樹を襲っていないぞ?わーーー」
サンドイッチのお皿を渡された後、伊吹が反対方向へ走って行った。暑苦しくて堪らない。部屋に入って窓辺に立つと、すっかり暗くなっていた。どうりでお腹が空くはずだ。18時半になっている。何時間も寝ていたのか。
今から食べると、お土産のスイーツが入らない。しかし、ちゃんと食べておきたい。心の中で葛藤した結果、サンドイッチに重きを置いた。
「カンテールのレアチーズタルト。ブルーベリーゼリー。小さめだからOKだよね。パストラミと、たまごのやつを……。そっちで食べようっと」
テレビを見ながら食べていると、黒崎製菓のCMが流れた。その後には、黒崎製菓内が映し出された。研究開発部への潜入と、テロップに出ている。先月は営業企画部だったそうだ。
「へえ、知らなかったよ。観たかったな。教えてくれないもん」
動物園の放送分を見たくせに。たぶん黒崎が出ていたからだと思う。印象に残る人を番組は使いたがる。宣伝効果を考えると、短いインタビューなら出るしかないだろう。会食の話題にもなる。
「うへへ。これでもパートナーとしてはさ~。いろいろと考えているんだよ。愛しているからさ。ごほっ。はあー、ああー。喉が痛い……」
サンドイッチをつまみかけて、大事なことを思い出した。すっかり伊吹のことを忘れていた。声がしないから大丈夫だろう。
部屋を出て行こうとすると、背後から腕が回された。いい匂いがしたから、黒崎だと分かった。耳元で響いた低い声が心地いい。
「ただいま。何か羽織っておけ」
「おかえり。伊吹お兄ちゃんには会った?アンが追いかけて行ったんだ。たぶん家の中にいると思うけど」
「会っていない。見て来る。一緒に行くか?おいで」
抱きかかえるようにして、立ち上がらされた。たまには熱を出すのも悪くない。毎回そう思っている。それを見抜かれたようで、軽く頬をつねられた。
うとうと微睡んでいると、全開にした窓から、木々の匂いがしてきた。鼻詰まりがないから安心した。喉が痛むと、鼻にも影響する。なんせ繋がっている。
気がつくと、加湿器の音が聞こえて来た。窓を閉めたのかな?色んなことを思い浮かべていると、目が冴えて来た。おまけにお腹も空いて来た。体調が悪いのに。これも成長なのかと嬉しくなった。
起き上がると、首筋にシートが貼られていた。しかし、伊吹の姿が見当たらない。
「お兄ちゃーん。ごほっ。まあいいか……」
そばにあったアイスティーを飲んだ。伊吹が淹れた、ハーブティーのミックスだ。これがまた気持ちがいい。
すると、アンが吼えている声が聞こえた。今日はトリミングへ行った日で、送迎で帰って来たようだ。
「めずらしいなあ?滅多に吼えないのに。ああ、お兄ちゃんのことが嫌いなのかな?」
「わー、俺は夏樹のお兄ちゃんだぞ!?アントワネット、怒らないでくれーー」
どたばたと廊下を歩いて来る音がする。助けに行こうとドアを開くと、伊吹がアンからバルコニーの方まで追い詰められていた。
伊吹は動物が好きなのに、アンには警戒されている。この部屋に来ようとしているが、アンから来させないようにされているようだ。
「うひゃひゃ。お兄ちゃん、頑張ってよ~」
「わああー、噛みつかれはしないが、迫力のある子だ!さすがは黒崎家の子だ。夏樹の元へ行かせてくれ!これを食べさせてあげたい。メルティストアの、クラブハウスサンドイッチだぞ。食べやすい大きさにカットしたんだぞ?ちゃんと介抱を……、これが食べたいのか?」
「アンのご飯は用意してあるよ。俺もお腹が空いたよ。それを食べたい」
「夏樹!?食欲があるのか。本当なのか?俺の聞き間違いじゃないのか?」
「本当だよ。美味しそうだねえ。あのホテルに2号店が入ったんだ。凄いことなんだって」
「夏樹!さすがは開発部へ入る子だ。詳しくなったな。情報収集は自分でやっているのか?そうだろう?」
「スタジオの差し入れとか、大学内のカフェとか。黒崎さんは別の系統だしね。庶民的じゃない方」
「そうか。スーパーと園芸店の商品しか知らない子が、よくぞ成長した。……いろんな事で成長した男の顔を見せてくれ。お母さんに話しておきたい。アン、やめてくれ。夏樹を襲っていないぞ?わーーー」
サンドイッチのお皿を渡された後、伊吹が反対方向へ走って行った。暑苦しくて堪らない。部屋に入って窓辺に立つと、すっかり暗くなっていた。どうりでお腹が空くはずだ。18時半になっている。何時間も寝ていたのか。
今から食べると、お土産のスイーツが入らない。しかし、ちゃんと食べておきたい。心の中で葛藤した結果、サンドイッチに重きを置いた。
「カンテールのレアチーズタルト。ブルーベリーゼリー。小さめだからOKだよね。パストラミと、たまごのやつを……。そっちで食べようっと」
テレビを見ながら食べていると、黒崎製菓のCMが流れた。その後には、黒崎製菓内が映し出された。研究開発部への潜入と、テロップに出ている。先月は営業企画部だったそうだ。
「へえ、知らなかったよ。観たかったな。教えてくれないもん」
動物園の放送分を見たくせに。たぶん黒崎が出ていたからだと思う。印象に残る人を番組は使いたがる。宣伝効果を考えると、短いインタビューなら出るしかないだろう。会食の話題にもなる。
「うへへ。これでもパートナーとしてはさ~。いろいろと考えているんだよ。愛しているからさ。ごほっ。はあー、ああー。喉が痛い……」
サンドイッチをつまみかけて、大事なことを思い出した。すっかり伊吹のことを忘れていた。声がしないから大丈夫だろう。
部屋を出て行こうとすると、背後から腕が回された。いい匂いがしたから、黒崎だと分かった。耳元で響いた低い声が心地いい。
「ただいま。何か羽織っておけ」
「おかえり。伊吹お兄ちゃんには会った?アンが追いかけて行ったんだ。たぶん家の中にいると思うけど」
「会っていない。見て来る。一緒に行くか?おいで」
抱きかかえるようにして、立ち上がらされた。たまには熱を出すのも悪くない。毎回そう思っている。それを見抜かれたようで、軽く頬をつねられた。
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