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静かな室内では、スピーカー越しの会話がされている。そして、ガラスの向こうから指示が出された。マイクの前に立ち、ヘッドホンを装着した。これから歌うために。
「よろしくお願いします」
「夏樹。こっちを見ておけ」
「はい。あーー、あーー、OKです」
マイクに向かって返事をすると、ドラムとベース音が、ヘッドホンから聞こえて来た。久弥がジャスチャーをしてリズムを取りながら、俺の前に立っている。
流れてきた音楽に合わせて歌声をあげた。喉の位置の高いクリアーボイスと高音域がメインの歌唱をしていたが、TDDからは低音域を多くしてある。自分自身でも合っているのが分かる。自由な歌唱方法では駄目だということも分かった。
番組の挿入歌は地声に近い音域で、リズムに身を任せて歌った。それを求められた。どちらのパターンも好きなのは、歌うことが楽しいからだ。下手だと思って、嫌になるのは毎回でも。2回分の収録が終わった後、久弥から笑顔を向けられた。
「夏樹。一番よかったぞ。高宮さんを引きずった成果が出たなー。ぎゃははは」
「会う人に言われるんだよ。そんなにしていないのに」
「お前の真似をしてやる。”一緒に来て下さい。切羽詰まっているので。予定があるんですか?終わってからでもいいです。朝が早いのは大歓迎ですから。先生の方も、朝の5時から空けてくれました~”ってな。飲み会で深夜になる人に、朝の5時からOKですって。イブキ・中山の弟だな。変貌するわけだ」
「ああ……、似て来たのか。久弥までが言うなら確定だね」
高宮さんからOKがもらえなくて、ボーカルスクールの杉本先生のところに来てもらって、一緒に練習を見てもらおうと思った。そうしないと前に進まないと思ったからだ。
図々しくなった気がしたのは、高宮さんの件だけではない。今度聴きに行くクラシックコンサートでは、主演者の楽屋に訪ねる話になった。3人までOKだと言われて、5人に増やしてくれと交渉した。伊吹と聡太郎を誘いたいからだ。
しかし、伊吹が仕事の都合で行けず、聡太郎、悠人、黒崎と俺との4人になった。久弥は多忙すぎるが、来れるといいのに。
「4月20日のコンサートの予定はどうかな?間に合うなら楽屋へ行こうよ」
「返事をするところだった。もちろん喜んで。ヴァイオリニストは……、聞いていなかったな」
「紺野美香子さんだよ。ミュージカルアニメの楽曲の時から参加したんだって」
「……そうか。桜木君とは久しぶりに会う。よーし。これで完了!」
高宮さんからのOKが出た後、ひと段落の拍手が起きた。お疲れ様と声を掛け合い部屋を出た。
今日は黒崎の迎えが来る。明日は心臓の検診があるから、休みを取っている。せっかくだから、今夜は食事をして帰ろうと話した。たぶん、日本料理店の松宮だろう。
(鯛のお刺身、湯豆腐、煮物。和食はいいなあ。何でも好きだけど。デザートは何だろう?和三盆プリンかも。お店の手づくりの……)
真似できる味ではないが、献立のアイデアにしている。我が家の定番、豆腐を使った新メニューが欲しい。
あれこれ思い浮かべて歩いていると、黒崎から電話が入った。デザートが和三盆プリンだ、良かったなと言われて、含み笑いをしながら外へ出た。
「よろしくお願いします」
「夏樹。こっちを見ておけ」
「はい。あーー、あーー、OKです」
マイクに向かって返事をすると、ドラムとベース音が、ヘッドホンから聞こえて来た。久弥がジャスチャーをしてリズムを取りながら、俺の前に立っている。
流れてきた音楽に合わせて歌声をあげた。喉の位置の高いクリアーボイスと高音域がメインの歌唱をしていたが、TDDからは低音域を多くしてある。自分自身でも合っているのが分かる。自由な歌唱方法では駄目だということも分かった。
番組の挿入歌は地声に近い音域で、リズムに身を任せて歌った。それを求められた。どちらのパターンも好きなのは、歌うことが楽しいからだ。下手だと思って、嫌になるのは毎回でも。2回分の収録が終わった後、久弥から笑顔を向けられた。
「夏樹。一番よかったぞ。高宮さんを引きずった成果が出たなー。ぎゃははは」
「会う人に言われるんだよ。そんなにしていないのに」
「お前の真似をしてやる。”一緒に来て下さい。切羽詰まっているので。予定があるんですか?終わってからでもいいです。朝が早いのは大歓迎ですから。先生の方も、朝の5時から空けてくれました~”ってな。飲み会で深夜になる人に、朝の5時からOKですって。イブキ・中山の弟だな。変貌するわけだ」
「ああ……、似て来たのか。久弥までが言うなら確定だね」
高宮さんからOKがもらえなくて、ボーカルスクールの杉本先生のところに来てもらって、一緒に練習を見てもらおうと思った。そうしないと前に進まないと思ったからだ。
図々しくなった気がしたのは、高宮さんの件だけではない。今度聴きに行くクラシックコンサートでは、主演者の楽屋に訪ねる話になった。3人までOKだと言われて、5人に増やしてくれと交渉した。伊吹と聡太郎を誘いたいからだ。
しかし、伊吹が仕事の都合で行けず、聡太郎、悠人、黒崎と俺との4人になった。久弥は多忙すぎるが、来れるといいのに。
「4月20日のコンサートの予定はどうかな?間に合うなら楽屋へ行こうよ」
「返事をするところだった。もちろん喜んで。ヴァイオリニストは……、聞いていなかったな」
「紺野美香子さんだよ。ミュージカルアニメの楽曲の時から参加したんだって」
「……そうか。桜木君とは久しぶりに会う。よーし。これで完了!」
高宮さんからのOKが出た後、ひと段落の拍手が起きた。お疲れ様と声を掛け合い部屋を出た。
今日は黒崎の迎えが来る。明日は心臓の検診があるから、休みを取っている。せっかくだから、今夜は食事をして帰ろうと話した。たぶん、日本料理店の松宮だろう。
(鯛のお刺身、湯豆腐、煮物。和食はいいなあ。何でも好きだけど。デザートは何だろう?和三盆プリンかも。お店の手づくりの……)
真似できる味ではないが、献立のアイデアにしている。我が家の定番、豆腐を使った新メニューが欲しい。
あれこれ思い浮かべて歩いていると、黒崎から電話が入った。デザートが和三盆プリンだ、良かったなと言われて、含み笑いをしながら外へ出た。
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