上弦の月の天使~結ばれた約束の夜

夏目奈緖

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 朝ご飯の支度をしているところだ。黒崎がシャワーを浴びている間に、今日のメニューを組み立て直した。トースト、ポトフ、スクランブルエッグ、サラダを用意する予定だった。そこで、卵をオムレツに変えてあげようと思った。ストックしてあるトマトソースには、刻んだバジルをトッピングして風味を出す。

「今朝はいい気分なんだ~。綺麗とはまた違うって、何だよ?ふふん。今夜に期待するからかな?俺も同じだよ。るるるーー」

 俺の方も調子がいい。しかし、知らないふりをしないと、黒崎の思うつぼだ。気を引き締めて、支度を進めた。

 オムレツを焼き上げたところで、黒崎がキッチンへ入ってきた。俺の背後から腕を回して頬にキスをしてくれた。

「新しいボディーソープだったな」
「うん。前に黒崎さんが良い匂いだなって言っていたやつだよ。今朝はオムレツを焼いたよ」
「そうか。美味そうだ」

 湯気の立っているオムレツにソースを掛けていると、彼がトーストにバターを塗り始めた。いい匂いがする。毎朝起きるのが楽しみだと言いながら。
 
 不意打ちで褒められて、胸がキュンとなった。黒崎の頬へキスをしそうになったが、いやらしい笑みを浮かべていたから、腰を叩いてお預けにしてやった。

「台無しだよ~」
「何のことだ?」
「いやらしい笑顔を見せてくるなよ~」
「塗り終わったぞ」
「運んでね~」

 黒崎がトーストにバターを塗り終えた。それをダイニングテーブルに運んでいる姿を眺めた。さっきまでのいやらしさがない。どうして笑っていたのだろう。

「黒崎さん。さっきはどうして笑っていたんだよ?」
「何でも無い」

 答えてくれなかった。エプロンは新しい物ではない。だったら俺の顔に何か付いているとしか思えない。洗面所に行って鏡を見ると、何も無かった。つまり、黒崎がエロいことを考えていただけだということだ。

「はあ~。ドン引きしそうだよ~。親父だな~」
「俺がどうした?」
「黒崎さん。エロいことを考えていただろ?何だよ、白状しろよ~」
「キスマークを付けたからだ」
「え?どこに?」
「背中だ」
「やめろよ~。今日は検診なんだからさ」

 黒崎が言うには一カ所だけだという。それならいいかと思ったのは、慣れたからだろうか。エロいことは毎日の活力だと、黒崎が言っている。何を言い返しても無駄だと思った。

 悠人に相談したら、早瀬さんもそういうところがあるそうだ。爽やかだから想像ができなかった。ということは、黒崎は周りにエロいと見られているだろうか。そうではないと思いたい。

 黒崎がダイニングテーブルに料理を運んでくれた。俺はスープを注ぎ入れて、黒崎に渡した。こうしてお手伝いが続いている。そして、食事を食べ終わったアンの口元を拭いてくれている姿を見て、ほっこりした気持ちになった。
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