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吹き抜けた風の中には、古い木の匂いがした。湾沿いからの水の匂いと、周りを囲んでいる木陰があり、一歩敷地を出るとビル群に囲まれているとは思えない環境だ。
この礼拝堂の鐘の音が鳴るのは、次回は15時だ。お腹に響く感じが発声練習に似ているから、ここへ来ると練習をしたくなる。条件反射的なものだ。
それを三河さんが知っているから、さっき、木陰で練習してもいいよと声を掛けられた。たまには違う環境だと、気分が変わるだろう?と。
「三河さんも歌うもんね。讃美歌以外のジャンルは?聞いたことがなかったね」
「民謡が好きだ。……ここで歌ってくれる約束だよ?いつ歌ってもらえるんだ?讃美歌のことだよ」
「タイミングが合わないもん。みんなの前でって」
「そうだなあ。大学もバンド活動が始まるからな。……黒崎さん、ゆっくり出来たようだね」
「うん。いつも、ありがとうございます」
「いえいえ。それこそいつでも……」
黒崎は一人で礼拝堂に入っている。こうしてさり気なく、黒崎のことを一人にしている。ただ静かに天井を仰ぎ、ステンドグラスを眺めている光景は、いつの間にか馴染んでいた。
どういう事を思い浮かべているのかは、聞いたことが無い。忙しい中、ああやって折り合いをつけているのかな?と、そう思っている。
口数が少ないし、家の中では物静かにしている。取り巻いているものが多いからこそ、子供の頃から落ち着いている。お義父さんがそう話していた。
(けっこう知っているんだよ。黒崎さんのこと。あまり話していないっていうわりには。本当にそうなのかな?うちのお父さんとのパターンが似ているんだけど……)
お互いに会話が無かったと言うわりには、知っていることが多すぎる。もの静かな人同士、通じ合うものがあると思う。大人と子供でも。
父と俺の考え方が似ていることに気づいたのは、いつのことだったか。そう多くは話していないのに、お互いに覚えている事が多い。それを黒崎に話すと、そっくりそのままだと笑われた。弁護士を目指さないか?と、昔、父にしては珍しいことを言われたことがあり、納得できた。
(僕は人から嫌われても構わないって、お父さんも言っていたのか……)
誰とでも気軽に話すし、飲みに行くことも多いから意外だった。仕事だけの話しているのではないよと言っていた。どうやって心を落ち着けているのだろう?今になって、聞きたいことができた。
「夏樹君。どうしたんだ?」
「うちのお父さんのことを思い出したんだ。え?縁起が悪いって?そう言う方が、かえって縁起が悪いだろ~」
「君と話していると、ぽんぽん返って来るね。面白いよ。もう少し外に居ようか」
「ありがとう。ここでやろうかな?ああーーって」
扉の向こうを覗いてみると、黒崎が立ち上って、天井を仰いでいた。そろそろ出てくるだろう。
この礼拝堂の鐘の音が鳴るのは、次回は15時だ。お腹に響く感じが発声練習に似ているから、ここへ来ると練習をしたくなる。条件反射的なものだ。
それを三河さんが知っているから、さっき、木陰で練習してもいいよと声を掛けられた。たまには違う環境だと、気分が変わるだろう?と。
「三河さんも歌うもんね。讃美歌以外のジャンルは?聞いたことがなかったね」
「民謡が好きだ。……ここで歌ってくれる約束だよ?いつ歌ってもらえるんだ?讃美歌のことだよ」
「タイミングが合わないもん。みんなの前でって」
「そうだなあ。大学もバンド活動が始まるからな。……黒崎さん、ゆっくり出来たようだね」
「うん。いつも、ありがとうございます」
「いえいえ。それこそいつでも……」
黒崎は一人で礼拝堂に入っている。こうしてさり気なく、黒崎のことを一人にしている。ただ静かに天井を仰ぎ、ステンドグラスを眺めている光景は、いつの間にか馴染んでいた。
どういう事を思い浮かべているのかは、聞いたことが無い。忙しい中、ああやって折り合いをつけているのかな?と、そう思っている。
口数が少ないし、家の中では物静かにしている。取り巻いているものが多いからこそ、子供の頃から落ち着いている。お義父さんがそう話していた。
(けっこう知っているんだよ。黒崎さんのこと。あまり話していないっていうわりには。本当にそうなのかな?うちのお父さんとのパターンが似ているんだけど……)
お互いに会話が無かったと言うわりには、知っていることが多すぎる。もの静かな人同士、通じ合うものがあると思う。大人と子供でも。
父と俺の考え方が似ていることに気づいたのは、いつのことだったか。そう多くは話していないのに、お互いに覚えている事が多い。それを黒崎に話すと、そっくりそのままだと笑われた。弁護士を目指さないか?と、昔、父にしては珍しいことを言われたことがあり、納得できた。
(僕は人から嫌われても構わないって、お父さんも言っていたのか……)
誰とでも気軽に話すし、飲みに行くことも多いから意外だった。仕事だけの話しているのではないよと言っていた。どうやって心を落ち着けているのだろう?今になって、聞きたいことができた。
「夏樹君。どうしたんだ?」
「うちのお父さんのことを思い出したんだ。え?縁起が悪いって?そう言う方が、かえって縁起が悪いだろ~」
「君と話していると、ぽんぽん返って来るね。面白いよ。もう少し外に居ようか」
「ありがとう。ここでやろうかな?ああーーって」
扉の向こうを覗いてみると、黒崎が立ち上って、天井を仰いでいた。そろそろ出てくるだろう。
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