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思い出して見比べてみたいなと思いながら振り向いて、胸がドキッとした。当時の面影が重なって見えたからだ。画面を眺めて検索をしている冷静な姿に。
「あれ?あの時の黒崎さんがいるよー?こんにちは~」
「違いが分かったのか。どういうものだ?」
「マジで笑っていないからだよ。……いたい!あんたこそ嘘をつくなよ~。演技なんかしていないくせに。さっきの雰囲気は、静かな色気を醸し出していたんだよ。ああいうのも悪くなかったなあ。今のエロさは、おじさんだもん。色気とは言えない類だよ」
「そうか。おじさんは嫌いか?」
「すけべじじいは嫌だよ」
「それにしては、昨夜は時間をかけられた。濃厚にしているはずだが」
「ここで言うなよ……」
「満足するまで努力させてもらった」
「黒崎さん……」
激しさを抑えた分だけ、触れ合う時間が長くて、とにかく優しい。蕩けるような心地だった。思い出すだけで顔がニヤけて、黒崎の体を叩いた。
ここで見つめ合うと、良い流れになりそうだ。黒崎も同じかと振り向くと、全く俺の方を見ていなかった。それどころか新しく検索を始めて、仕事をしているかのようだ。淡々と受け答えをしたのは、照れ隠しではなかったのか。
「黒崎さん。こっちを向いてよ」
「見ない。ツアーの検索をしておく。エアフルトは明日にする」
「待ってよ。ツアーも明日でいいよ。すけべじじいの話の続きをしたいから。いたたた。なんだよ~」
「とっくにムードが崩れている。その気にはならない。エプロンを着てくれるのか?」
「バカヤロウ。あんたこそ台無しだよ!」
下唇を引っ張られるなら、先に突き出してやった。こうされると意地悪が出来ないようで、代わりに微笑みを返された。包容力という名の魔力の発揮だ。そして、俺の左手を取り、指先で傷跡をたどる仕草を始めた。普段とは別のことを考えていると思った。これも俺の勘だ。
「何か考え事をしているだろ?連想するものがあるの?妬いていないからさ」
「二葉のことだ。この家に呼んだ、きっかけを話していなかったはずだ」
「法事とママの事だけじゃなかったの?もっとあるんだね……」
「助かった。あのまま素直に受け取ってもらえて」
「黒崎さん……。ああ、あれかな?」
さすがに遠慮がちになる。暖かくなり薄着になる頃なのに、二葉はパーカーを羽織っている。おかしくはないが、脱いだところを見たことが無い。
なにせ我が家は男所帯だ。本人が男だと言おうが、気を遣っているかと思っていた。寒がりなのかなと思ったが、どうも違うと感じている。
「あのさ。傷があるのかな?けっこう大きな……」
「そこまでじゃない。お前よりも薄いぐらいだが、最近ついたものだ」
「怪我をしたのか。気づかなくって」
それなら隠さないだろうし、黒崎もはっきり言うはずだ。頭に浮かんだものがあり、昔の自分を連想した。自分で傷つけた結果、いびつな形の爪が残っていた。黒崎が俺の方を向いたから頷いた。
「夏樹。聞いてもらえるか?」
「うん。聞くよ」
「本人からは1月7日に聞いた。来客者へ茶を運んでいる時に、トレーを落として手にかかった。シャツを洗面所で脱がせて、水で冷やした。その時は、田所専務が付き添ってくれた。新しそうな傷があったから理由を聞いて、自分でつけたものだと白状した」
「火傷はしなかったの?病院へは?」
「うちの診療室で見せて、大したことは無かった。傷は一か月前に付けたもので、初めてのことじゃない。ママに新しい相手が出来て、まだ紹介されていない時期だ。えらく帰りが遅いし、弾んだ顔をしていたそうだ」
母親が幸せになるなら、23歳の子にとっては嬉しいぐらいだ。そう思うのは変だろうか?黒崎の様子や二葉のことを思えば、まったくの正反対だ。
「あれ?あの時の黒崎さんがいるよー?こんにちは~」
「違いが分かったのか。どういうものだ?」
「マジで笑っていないからだよ。……いたい!あんたこそ嘘をつくなよ~。演技なんかしていないくせに。さっきの雰囲気は、静かな色気を醸し出していたんだよ。ああいうのも悪くなかったなあ。今のエロさは、おじさんだもん。色気とは言えない類だよ」
「そうか。おじさんは嫌いか?」
「すけべじじいは嫌だよ」
「それにしては、昨夜は時間をかけられた。濃厚にしているはずだが」
「ここで言うなよ……」
「満足するまで努力させてもらった」
「黒崎さん……」
激しさを抑えた分だけ、触れ合う時間が長くて、とにかく優しい。蕩けるような心地だった。思い出すだけで顔がニヤけて、黒崎の体を叩いた。
ここで見つめ合うと、良い流れになりそうだ。黒崎も同じかと振り向くと、全く俺の方を見ていなかった。それどころか新しく検索を始めて、仕事をしているかのようだ。淡々と受け答えをしたのは、照れ隠しではなかったのか。
「黒崎さん。こっちを向いてよ」
「見ない。ツアーの検索をしておく。エアフルトは明日にする」
「待ってよ。ツアーも明日でいいよ。すけべじじいの話の続きをしたいから。いたたた。なんだよ~」
「とっくにムードが崩れている。その気にはならない。エプロンを着てくれるのか?」
「バカヤロウ。あんたこそ台無しだよ!」
下唇を引っ張られるなら、先に突き出してやった。こうされると意地悪が出来ないようで、代わりに微笑みを返された。包容力という名の魔力の発揮だ。そして、俺の左手を取り、指先で傷跡をたどる仕草を始めた。普段とは別のことを考えていると思った。これも俺の勘だ。
「何か考え事をしているだろ?連想するものがあるの?妬いていないからさ」
「二葉のことだ。この家に呼んだ、きっかけを話していなかったはずだ」
「法事とママの事だけじゃなかったの?もっとあるんだね……」
「助かった。あのまま素直に受け取ってもらえて」
「黒崎さん……。ああ、あれかな?」
さすがに遠慮がちになる。暖かくなり薄着になる頃なのに、二葉はパーカーを羽織っている。おかしくはないが、脱いだところを見たことが無い。
なにせ我が家は男所帯だ。本人が男だと言おうが、気を遣っているかと思っていた。寒がりなのかなと思ったが、どうも違うと感じている。
「あのさ。傷があるのかな?けっこう大きな……」
「そこまでじゃない。お前よりも薄いぐらいだが、最近ついたものだ」
「怪我をしたのか。気づかなくって」
それなら隠さないだろうし、黒崎もはっきり言うはずだ。頭に浮かんだものがあり、昔の自分を連想した。自分で傷つけた結果、いびつな形の爪が残っていた。黒崎が俺の方を向いたから頷いた。
「夏樹。聞いてもらえるか?」
「うん。聞くよ」
「本人からは1月7日に聞いた。来客者へ茶を運んでいる時に、トレーを落として手にかかった。シャツを洗面所で脱がせて、水で冷やした。その時は、田所専務が付き添ってくれた。新しそうな傷があったから理由を聞いて、自分でつけたものだと白状した」
「火傷はしなかったの?病院へは?」
「うちの診療室で見せて、大したことは無かった。傷は一か月前に付けたもので、初めてのことじゃない。ママに新しい相手が出来て、まだ紹介されていない時期だ。えらく帰りが遅いし、弾んだ顔をしていたそうだ」
母親が幸せになるなら、23歳の子にとっては嬉しいぐらいだ。そう思うのは変だろうか?黒崎の様子や二葉のことを思えば、まったくの正反対だ。
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