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ママ達が都内に引っ越して来た日のことを思い浮かべた。たまたまママへ電話を掛けた時、タイミングがいいのか悪いのか、倉口さんがママへ暴力をふるった。その音や様子で気づき、まだ向こうに住んでいた沙耶さんに様子を見てもらいに行った。その晩、3人を連れて黒崎が帰って来た。
当面はホテル暮らしをして2週間で新居が決まり、今の場所に落ち着いた。電話をしたり訪ねたりして、”親子をやり直している”と黒崎自身が言った。
車輪が動き始めたように思えたのに。歯車がかみ合わなくなったのかな?それとも、最初からなのか。二葉の話を聞くだけでも、想像とは違っていた。都合のいい見方をしていたのか。
「ママのことが嫌いなの?また嫌いになった?」
「……嫌いだ。好きになりかけたが、どうしても駄目だった」
「二葉のことは大好きだよね。最初は戸惑っていたけど、お互いに気が合っていたんだ。朝陽君とはまた違うなって思った。男同士だから、べったりはしないからさ。妹って可愛いから」
ここまで言っていいのかな。どんどん違和感を持っていた部分を思い出して、堰を切るように湧き上がってきた。今は黒崎の話を聞くべきだし、聞きたい。頼りないものの、社会人として立っている。俺は二葉の弟でもあるし、本人からも認められている。
「黒崎さん。今夜は時間があるから聞かせてよ。疲れているなら、土曜日にでも……」
「この評定のように書き込めるといい。これを作られて、腹を立てた教授はいないだろう?なにせ伝統だ」
「もちろん笑い話だよ。大鬼らしく振る舞えるもん。分かっていて授業を取ったんだろう?って言った人もいるんだ。最初から期待していない。それでも教え方が上手かったり、いい知識をもらえたりするんだ。就活につなげて、企業に紹介してくれた教授もいたよ。……こういう話もあるよ。大仏だって書いてあったのに話が違うぞって、コミュニケーションのネタになっているんだ。俺がぺらぺら喋っていいの?」
「普段通りにしてくれ。人に下す評価に基準はない。ママに恋人ができようと、本人には変わりない。息子として拒まれてもいない。ただし、ママは二葉のことは拒んでいる。朝陽の人を舐めた態度に、ママへ意見を言った結果、朝陽のことは理解していると言われたそうだ。ママからも、そう聞いた」
「はっきり言い返されたんだね……。”あんたの意見は聞かない”っていう事だろ?二葉のことを見ていない気がするんだけど……」
「朝陽のこともだ。あのまま成長すれば、どうなるか。若手社員のケースを見ると分かる。叱られ慣れていないし、肯定されてばかりで育ってきた」
「薬を飲むことになるケースがあるよね。うちの大学の生徒にもいるよ。ごく一部じゃないんだ」
数学科は病んでいると笑い話になっている。本人達も含めてだ。かえってそういう学科の生徒の方が、学生同士で冗談を言い合って、元気になることもあるそうだ。心づもりをして選んだからだと言われている。
俺と同じで、学内がいつしか拠りどころになった。うちの学科は似たもの同士だからだ。こうして作った資料や人の話を参考にして、やりたい事とを天秤にかけて選択する。そして、期待が外れないのは、資料が役立っているからだ。ある程度の想定ができる。しかし、実際は違うと感じることもある。
当面はホテル暮らしをして2週間で新居が決まり、今の場所に落ち着いた。電話をしたり訪ねたりして、”親子をやり直している”と黒崎自身が言った。
車輪が動き始めたように思えたのに。歯車がかみ合わなくなったのかな?それとも、最初からなのか。二葉の話を聞くだけでも、想像とは違っていた。都合のいい見方をしていたのか。
「ママのことが嫌いなの?また嫌いになった?」
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ここまで言っていいのかな。どんどん違和感を持っていた部分を思い出して、堰を切るように湧き上がってきた。今は黒崎の話を聞くべきだし、聞きたい。頼りないものの、社会人として立っている。俺は二葉の弟でもあるし、本人からも認められている。
「黒崎さん。今夜は時間があるから聞かせてよ。疲れているなら、土曜日にでも……」
「この評定のように書き込めるといい。これを作られて、腹を立てた教授はいないだろう?なにせ伝統だ」
「もちろん笑い話だよ。大鬼らしく振る舞えるもん。分かっていて授業を取ったんだろう?って言った人もいるんだ。最初から期待していない。それでも教え方が上手かったり、いい知識をもらえたりするんだ。就活につなげて、企業に紹介してくれた教授もいたよ。……こういう話もあるよ。大仏だって書いてあったのに話が違うぞって、コミュニケーションのネタになっているんだ。俺がぺらぺら喋っていいの?」
「普段通りにしてくれ。人に下す評価に基準はない。ママに恋人ができようと、本人には変わりない。息子として拒まれてもいない。ただし、ママは二葉のことは拒んでいる。朝陽の人を舐めた態度に、ママへ意見を言った結果、朝陽のことは理解していると言われたそうだ。ママからも、そう聞いた」
「はっきり言い返されたんだね……。”あんたの意見は聞かない”っていう事だろ?二葉のことを見ていない気がするんだけど……」
「朝陽のこともだ。あのまま成長すれば、どうなるか。若手社員のケースを見ると分かる。叱られ慣れていないし、肯定されてばかりで育ってきた」
「薬を飲むことになるケースがあるよね。うちの大学の生徒にもいるよ。ごく一部じゃないんだ」
数学科は病んでいると笑い話になっている。本人達も含めてだ。かえってそういう学科の生徒の方が、学生同士で冗談を言い合って、元気になることもあるそうだ。心づもりをして選んだからだと言われている。
俺と同じで、学内がいつしか拠りどころになった。うちの学科は似たもの同士だからだ。こうして作った資料や人の話を参考にして、やりたい事とを天秤にかけて選択する。そして、期待が外れないのは、資料が役立っているからだ。ある程度の想定ができる。しかし、実際は違うと感じることもある。
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