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クローゼットの扉を開くと、何着ものスーツ類が並んでいる。全て黒崎が選んだ物だ。これを見た一貴さんから本気で褒められた。若々しいが派手さはなく、定番なのに気の利いたスタイルだと。その時の黒崎は無反応だった。おだてに乗った結果、妙な服を着させられたくないそうだ。
「その後で、礼を言ってある。調子に乗られると面倒だからだ」
「いいじゃん。増えるのはアンのワードローブだし。俺は嬉しいよ。今夜は久弥からプレゼントを貰うよ。自信がつくまで受け取らないようにしていたんだ」
「そうか。喜んでもらえただろう。ネクタイか?」
「トートバッグを手作りしてくれたんだ。唐草模様の生地を使って。久しぶりにミシンを使ったそうだよ」
「これ程、いい人だとは知らなかった」
「黒崎さん、仕事上でしか付き合いが無かったからね。久弥の方も同じだって言っていたよ。こういう形で再会できて良かったよって。縁があるよねえ」
久弥と黒崎は取引先関係での繋がりがあった。黒崎ホールディングス時代だ。久弥は営業部の担当社員であり、黒崎社長との会食に同席したのは、一回のみだと聞いた。早瀬さんとは恋人同士だったが、プライベートでは完全に線を引いていたから、話題に出ることすらなかったそうだ。
カジュアルなジャケットを羽織る間、黒崎が手伝ってくれた。襟元や肩口を整えるコツを教わるためだ。急いで着替えたり、鏡のない場所でも大丈夫なように、普段から整える習慣をつける。そのおかげもあり、仕事先では、”お坊ちゃん”だと褒められている。もちろんいい意味でだ。
「ノーネクタイでも、丁寧な印象を作れる。しない方が似合っている」
「前から話しているよね。似合ってくるかと思ったのにな。もしかして人相が悪くなる?悠人から指摘されたんだよ~。……弓矢を構えているイメージがあるんだってさ。射貫きそうに感じる時があるけど、悠人は怖くないそうなんだ。俺のことを分かってくれているからね」
「なるほど。よく合った表現だ。……今日は暗めのネクタイの方がいい。明るいと逆効果だ」
「ええ?否定しないの?もう暴力的な俺は出て来ないのに~。あ……」
今更なのに口を閉じた後、ぽんぽんと頭を叩かれた。自然と口から出たなら、大丈夫だと笑っている。今の怖さは別の種類だと言われて、愕然とした。
やっぱり否定されないのか。いや、それでいいのか。地位が欲しいなら気迫も必要だ。マイルドだけでは手に入らない。早瀬さんを見て学んだことだ。
「裕理はカモフラージュをしている。中身は恐ろしい。俺はそのままだ」
「何をやっても迫力があるもんね。聡太郎君は?」
「まだ分からない。……ああ、話しておくことが出来た。急いでくれ」
「りょーかい。そのスーツ、素敵だよ。ふふん……」
会場でも視線を浴びるだろうが、腕を組んでおく。そうすると、大抵が目を逸らされるから助かっている。イチャついているからだ。
ジャケットの着方を復習している間、黒崎が自分の着替えを始めた。何度か試してOKが出たから、ベッドに腰かけて、支度が終わるのを待った。本当は見ていたいが、調子に乗ってイヤらしいことをされるから、やめておいた。
今夜のプログラムを復習しようとスマホを取ると、黒崎が頬に触れて来た。もう着替えが済んだのかとぼんやりすると、画面に視線を落とした。今開いているのはニュースサイトだ。ふとよぎったのが、万理の事件の犯人のことだ。性犯罪の再犯で実刑を受けて、収監されているようだ。
「その後で、礼を言ってある。調子に乗られると面倒だからだ」
「いいじゃん。増えるのはアンのワードローブだし。俺は嬉しいよ。今夜は久弥からプレゼントを貰うよ。自信がつくまで受け取らないようにしていたんだ」
「そうか。喜んでもらえただろう。ネクタイか?」
「トートバッグを手作りしてくれたんだ。唐草模様の生地を使って。久しぶりにミシンを使ったそうだよ」
「これ程、いい人だとは知らなかった」
「黒崎さん、仕事上でしか付き合いが無かったからね。久弥の方も同じだって言っていたよ。こういう形で再会できて良かったよって。縁があるよねえ」
久弥と黒崎は取引先関係での繋がりがあった。黒崎ホールディングス時代だ。久弥は営業部の担当社員であり、黒崎社長との会食に同席したのは、一回のみだと聞いた。早瀬さんとは恋人同士だったが、プライベートでは完全に線を引いていたから、話題に出ることすらなかったそうだ。
カジュアルなジャケットを羽織る間、黒崎が手伝ってくれた。襟元や肩口を整えるコツを教わるためだ。急いで着替えたり、鏡のない場所でも大丈夫なように、普段から整える習慣をつける。そのおかげもあり、仕事先では、”お坊ちゃん”だと褒められている。もちろんいい意味でだ。
「ノーネクタイでも、丁寧な印象を作れる。しない方が似合っている」
「前から話しているよね。似合ってくるかと思ったのにな。もしかして人相が悪くなる?悠人から指摘されたんだよ~。……弓矢を構えているイメージがあるんだってさ。射貫きそうに感じる時があるけど、悠人は怖くないそうなんだ。俺のことを分かってくれているからね」
「なるほど。よく合った表現だ。……今日は暗めのネクタイの方がいい。明るいと逆効果だ」
「ええ?否定しないの?もう暴力的な俺は出て来ないのに~。あ……」
今更なのに口を閉じた後、ぽんぽんと頭を叩かれた。自然と口から出たなら、大丈夫だと笑っている。今の怖さは別の種類だと言われて、愕然とした。
やっぱり否定されないのか。いや、それでいいのか。地位が欲しいなら気迫も必要だ。マイルドだけでは手に入らない。早瀬さんを見て学んだことだ。
「裕理はカモフラージュをしている。中身は恐ろしい。俺はそのままだ」
「何をやっても迫力があるもんね。聡太郎君は?」
「まだ分からない。……ああ、話しておくことが出来た。急いでくれ」
「りょーかい。そのスーツ、素敵だよ。ふふん……」
会場でも視線を浴びるだろうが、腕を組んでおく。そうすると、大抵が目を逸らされるから助かっている。イチャついているからだ。
ジャケットの着方を復習している間、黒崎が自分の着替えを始めた。何度か試してOKが出たから、ベッドに腰かけて、支度が終わるのを待った。本当は見ていたいが、調子に乗ってイヤらしいことをされるから、やめておいた。
今夜のプログラムを復習しようとスマホを取ると、黒崎が頬に触れて来た。もう着替えが済んだのかとぼんやりすると、画面に視線を落とした。今開いているのはニュースサイトだ。ふとよぎったのが、万理の事件の犯人のことだ。性犯罪の再犯で実刑を受けて、収監されているようだ。
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