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これが周りの空気を巻き込むということかと、枝川さんの言葉を振り返った。PV映像でも、高い場所からのアングルでも存在が際立っていた。そして、ぼんやりと久弥のことを見ていると、ツッコミが入った。
「こら!また考えたな?……お兄ちゃんに来てもらうか?」
「伊吹お兄ちゃんが来てるの?そっか、R&W社の取引先だもんね……」
「ぎゃははは。黒崎さんが招いた。……ああ、黒崎さんだぞ。悠人にも迎えが来た。ほーーら」
「ひいいいいっ、助けてー」
久弥が仕返しとばかりに悠人の背中を押して、早瀬さんの方へ促した。マナーのいい悠人が静かに助けを求めてたどり着き、先に行くからねと、ジェスチャーを送って来た。それを見送った後、呆れ顔の黒崎から頬をつねられた。
「……向こうから丸見えだ。沈み込んでいただろう」
「うんっ。堂々と落ち込んだよ。久弥からも叱られて、スッキリしたんだ」
「少しは吹っ切れたか。いい顔をしている。……久弥さん。今夜はよろしくお願いします」
「こちらこそ。スーツ姿のTDDを披露させて頂きます。出席者全員が好きなジャンルとは限らないから、盛り上がりに欠けるかもしれません」
「……是非ともお願いします」
「ステージをやるの?マジで?即興のEDENなら自信があるけど……」
今夜の出席者には、TDDのステージが披露されると知らせてあったそうだ。俺と悠人だけが知らない状況だ。しかも、メンバーが異なる。俺と悠人、ベースには、大和が参加する。ドラムは、TDDのサポートが担当するそうだ。悠人の相方になるギターは誰だろう?久弥は今回はプロデューサーの方に回ると聞いた。ステージには立たない。
「悠人の単独ギターなの?それなら、ボーカル部分をアレンジしたいんだ」
「おおー、構成を判断したな。分かっているじゃないか!……桜木君に担当してもらう。同じバンドで経験したから息が合うはずだ」
「聡太郎君が?」
胸の鼓動が強く打った。嬉しさの前に、腱鞘炎のことが心配になった。3月にレストランで演奏した時は、無理のない範囲だった。しかし、今夜は正反対のステージになるはずだ。激しいリズムになる。そして、大和が参加するなら、この先のことが見込まれている。
「……今後のメンバー候補なんだよね?」
「その通りだ。桜木君もだぞ」
「え?」
「桜木君がやりたがった。まずは今夜のステージを務めてもらう。踏ん張れ、負けているな!」
これが実現するなら、どんなに嬉しくて心強いだろう。憧れの人が黒崎製菓での先輩になり、メンバーにもなる。心配するのは後のことで、メンバーとして、今夜のステージを成功させようと思った。
久弥を真っ直ぐに見つめて頷いた。こうしていられない。メンバーが控え室に到着し、打ち合わせを待っているそうだ。
「黒崎さん。急いで行って来るよ!場所は分かるから。……一緒に行くの?プロとしてさー、送り出してよ」
「慌てている時は、アクシデントが起こりやすい。……行きましょう」
「はい。お兄ちゃん達が付き添うから、迷子にならなくて済むぞ。先に行くから、ゆっくり来い。慌てても同じだ」
久弥が早足で歩き出して、あっという間に見えなくなった。武者震いのように肩が震えていると、黒崎から腰の辺りを撫でられた。
わざとやっているのか?そう言って軽く睨むと、その通りだと真剣な顔で答えられて、言葉を失った。そのおかげで肩の力が抜けて、軽く感じるドアを開けて、控え室に入ることが出来た。
「こら!また考えたな?……お兄ちゃんに来てもらうか?」
「伊吹お兄ちゃんが来てるの?そっか、R&W社の取引先だもんね……」
「ぎゃははは。黒崎さんが招いた。……ああ、黒崎さんだぞ。悠人にも迎えが来た。ほーーら」
「ひいいいいっ、助けてー」
久弥が仕返しとばかりに悠人の背中を押して、早瀬さんの方へ促した。マナーのいい悠人が静かに助けを求めてたどり着き、先に行くからねと、ジェスチャーを送って来た。それを見送った後、呆れ顔の黒崎から頬をつねられた。
「……向こうから丸見えだ。沈み込んでいただろう」
「うんっ。堂々と落ち込んだよ。久弥からも叱られて、スッキリしたんだ」
「少しは吹っ切れたか。いい顔をしている。……久弥さん。今夜はよろしくお願いします」
「こちらこそ。スーツ姿のTDDを披露させて頂きます。出席者全員が好きなジャンルとは限らないから、盛り上がりに欠けるかもしれません」
「……是非ともお願いします」
「ステージをやるの?マジで?即興のEDENなら自信があるけど……」
今夜の出席者には、TDDのステージが披露されると知らせてあったそうだ。俺と悠人だけが知らない状況だ。しかも、メンバーが異なる。俺と悠人、ベースには、大和が参加する。ドラムは、TDDのサポートが担当するそうだ。悠人の相方になるギターは誰だろう?久弥は今回はプロデューサーの方に回ると聞いた。ステージには立たない。
「悠人の単独ギターなの?それなら、ボーカル部分をアレンジしたいんだ」
「おおー、構成を判断したな。分かっているじゃないか!……桜木君に担当してもらう。同じバンドで経験したから息が合うはずだ」
「聡太郎君が?」
胸の鼓動が強く打った。嬉しさの前に、腱鞘炎のことが心配になった。3月にレストランで演奏した時は、無理のない範囲だった。しかし、今夜は正反対のステージになるはずだ。激しいリズムになる。そして、大和が参加するなら、この先のことが見込まれている。
「……今後のメンバー候補なんだよね?」
「その通りだ。桜木君もだぞ」
「え?」
「桜木君がやりたがった。まずは今夜のステージを務めてもらう。踏ん張れ、負けているな!」
これが実現するなら、どんなに嬉しくて心強いだろう。憧れの人が黒崎製菓での先輩になり、メンバーにもなる。心配するのは後のことで、メンバーとして、今夜のステージを成功させようと思った。
久弥を真っ直ぐに見つめて頷いた。こうしていられない。メンバーが控え室に到着し、打ち合わせを待っているそうだ。
「黒崎さん。急いで行って来るよ!場所は分かるから。……一緒に行くの?プロとしてさー、送り出してよ」
「慌てている時は、アクシデントが起こりやすい。……行きましょう」
「はい。お兄ちゃん達が付き添うから、迷子にならなくて済むぞ。先に行くから、ゆっくり来い。慌てても同じだ」
久弥が早足で歩き出して、あっという間に見えなくなった。武者震いのように肩が震えていると、黒崎から腰の辺りを撫でられた。
わざとやっているのか?そう言って軽く睨むと、その通りだと真剣な顔で答えられて、言葉を失った。そのおかげで肩の力が抜けて、軽く感じるドアを開けて、控え室に入ることが出来た。
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