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すると、ママのことを嫌わないでくれ、誰かを騙していないと、タオルケットに包まったことで、少しくぐもった声が耳元に響いた。それはしっかりした強いもので、悲しさや落胆を感じなかった。
黒崎が戸惑った顔をしている。言葉にはしないが、心配そうに頬を撫でられた。これから黒崎家の悪い面を話していき、ママが出て行った理由にも繋がると言われた。
「ごめん。黒崎さん。ママはお義父さんを騙し続けて、倉口さんと会ったのかと思ったんだ。そうなの?離婚するつもりになって、会っていたのかな?」
「離婚するつもりだったそうだ。しかし、親父との寝室は同じだった。騙していないとは言えない」
タオルケットを肩から降ろして、深呼吸をした。今度は真っ直ぐに、黒崎の目を見つめることが出来た。真相を知るのが怖くて、逃げていたのが分かった。今の自分は受け入れる気持ちが出来た。自分への苛立ちを抱えて、まずは落ち着けた。
「ママはこの家で必死に歩いて来た。親父のことを愛していたからこそだ。経済やマナーのことを必死で学んでいるうちに、息子のことを顧みれなくなった。その理由を知った。……幼稚園の行事に参加した時、圭一君のお母さんだと、ひと言も呼ばれなかったからだ。お手伝いさん任せだったからな。罪悪感しかないだろう。……些細なことだとは思わない。……親戚から冷たい目を向けられて、夫婦同伴の席へ出た時は陰口を叩かれて、そのことが取り巻き経由で耳に入った。……17歳から21歳の、4年間の社会人生活の後で飛び込んだ黒崎家だ。そう簡単に受け流せるものじゃない。……息子の俺が跡取りの一人として受け入れられた後、俺や親父に恥をかかせないように必死になった。それは今まで聞いている話と同じだ。……おかしな家だろう?そこまで無理をしないでくれと、拓海兄さんが止めた。表立って庇わなかったのは、陰湿な噂を流されるのを防ぐためだ。……男女の関係を持っていると言い出す者がいる」
十分にあり得る話だ。純白さんも同じだ。黒崎のことを表立って可愛がらなかった理由にも重なる。黒崎家の中心にいる自分たちが ”肩入れしている”と見られると、身動きが取れくなる。誰が味方なのか、そもそも存在しないのか、いろんな人たちが集まる。
法事の出席で目の当たりにした。聖河さんの話もある。特別誰かと親しくならないように気をつけていたというものだ。
「親父はママに、圭一のそばにいてくれと頼んだ。しかし、命令口調だから反発するし、伝わらない。愛情表現が不器用で空回りした。ママは分かっていたそうだ。閉じ込められた息苦しさはあったといえ、愛情があることは」
「どうしてママは出て行ったのかな?倉口さんを好きになったのは、どうしてかな……」
「……ここから解放されたかったからだ。名声はいらない。贅沢はいらない。小さな家で穏やかに暮らしたい。そういう思いを持った時、倉口から優しく話しかけられた。……この話こそ、二葉には言いたくない。ママ名義の財産は、十分にあった。モデル時代の稼ぎと、結婚後に受け取ったものがある。倉口は遊んで暮らせるぐらいに思ったかもしれない。……これだけは誤解とは思えない。再婚後、倉口のことで苦労しているからだ。……二葉が慕っているのは、優しい父親には違いないからだ。ママは家計を支えるのに必死だった。暴力を受けてもだ」
安定した収入と夢をかなえる為に、ママはウォーキング教室を開いた。取引先の人の件では、しっかりした娘に甘えたことを悔やんでいるそうだ。
二葉はそれを理解して責めていない。あの当時は失望感と苛立ちしか起きなかったが、バイトを始めて理解できたそうだ。いつでも優しい言い方はできないし、倉口さんがいたから、安心した面があっただろうと、黒崎が言った。
黒崎が戸惑った顔をしている。言葉にはしないが、心配そうに頬を撫でられた。これから黒崎家の悪い面を話していき、ママが出て行った理由にも繋がると言われた。
「ごめん。黒崎さん。ママはお義父さんを騙し続けて、倉口さんと会ったのかと思ったんだ。そうなの?離婚するつもりになって、会っていたのかな?」
「離婚するつもりだったそうだ。しかし、親父との寝室は同じだった。騙していないとは言えない」
タオルケットを肩から降ろして、深呼吸をした。今度は真っ直ぐに、黒崎の目を見つめることが出来た。真相を知るのが怖くて、逃げていたのが分かった。今の自分は受け入れる気持ちが出来た。自分への苛立ちを抱えて、まずは落ち着けた。
「ママはこの家で必死に歩いて来た。親父のことを愛していたからこそだ。経済やマナーのことを必死で学んでいるうちに、息子のことを顧みれなくなった。その理由を知った。……幼稚園の行事に参加した時、圭一君のお母さんだと、ひと言も呼ばれなかったからだ。お手伝いさん任せだったからな。罪悪感しかないだろう。……些細なことだとは思わない。……親戚から冷たい目を向けられて、夫婦同伴の席へ出た時は陰口を叩かれて、そのことが取り巻き経由で耳に入った。……17歳から21歳の、4年間の社会人生活の後で飛び込んだ黒崎家だ。そう簡単に受け流せるものじゃない。……息子の俺が跡取りの一人として受け入れられた後、俺や親父に恥をかかせないように必死になった。それは今まで聞いている話と同じだ。……おかしな家だろう?そこまで無理をしないでくれと、拓海兄さんが止めた。表立って庇わなかったのは、陰湿な噂を流されるのを防ぐためだ。……男女の関係を持っていると言い出す者がいる」
十分にあり得る話だ。純白さんも同じだ。黒崎のことを表立って可愛がらなかった理由にも重なる。黒崎家の中心にいる自分たちが ”肩入れしている”と見られると、身動きが取れくなる。誰が味方なのか、そもそも存在しないのか、いろんな人たちが集まる。
法事の出席で目の当たりにした。聖河さんの話もある。特別誰かと親しくならないように気をつけていたというものだ。
「親父はママに、圭一のそばにいてくれと頼んだ。しかし、命令口調だから反発するし、伝わらない。愛情表現が不器用で空回りした。ママは分かっていたそうだ。閉じ込められた息苦しさはあったといえ、愛情があることは」
「どうしてママは出て行ったのかな?倉口さんを好きになったのは、どうしてかな……」
「……ここから解放されたかったからだ。名声はいらない。贅沢はいらない。小さな家で穏やかに暮らしたい。そういう思いを持った時、倉口から優しく話しかけられた。……この話こそ、二葉には言いたくない。ママ名義の財産は、十分にあった。モデル時代の稼ぎと、結婚後に受け取ったものがある。倉口は遊んで暮らせるぐらいに思ったかもしれない。……これだけは誤解とは思えない。再婚後、倉口のことで苦労しているからだ。……二葉が慕っているのは、優しい父親には違いないからだ。ママは家計を支えるのに必死だった。暴力を受けてもだ」
安定した収入と夢をかなえる為に、ママはウォーキング教室を開いた。取引先の人の件では、しっかりした娘に甘えたことを悔やんでいるそうだ。
二葉はそれを理解して責めていない。あの当時は失望感と苛立ちしか起きなかったが、バイトを始めて理解できたそうだ。いつでも優しい言い方はできないし、倉口さんがいたから、安心した面があっただろうと、黒崎が言った。
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