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そろそろ出番だろうかと時計を見た時、長谷部さんが戻ってきた。収録がずれ込み、30分後になる予定だという。このまま話していようか。珈琲の追加を淹れていると、彼女の方から、バックステージ見学という話題が出て来た。さっきIKUから連絡が入ったそうだ。しかも、開明高校の名前が出てきた。
「アーティスト支援団体の関係で、バックステージ見学を受け入れているの。開明高校さん側から申し込みが入って、せっかくだから、TDDにしようかって話になったのよ。懐かしいでしょう?」
「うん。ちょうど昨日、思い出していたんだ。ライブツアーは人気があるから、俺、行けなかったんだ」
「そうなのねー。今回も10名で申し込むそうよ。小人数だから、メンバーと一対一で話が出来ていいわね」
「伊吹お兄ちゃんの年には、ベテルギウスのバックステージがあったんだよ。羨ましかったよ~」
開明高校の創立メンバーが、アーティスト支援団体をやっている関係だ。関係者席でライブの見学をして、控え室にもお邪魔する。ミュージシャンと話ができて、アドバイスも貰えるツアーだ。
思い返せば、IKU所属ばかりだった気がする。その支援団体が、純白さんの関連だからだろう。IKUとは縁があったと聞いた。TDDが担当するなら嬉しい。恩返しになるだろうか。
「TDDになるといいな。開明の生徒が珍しく集団行動を取って、ライブを観に行くんだ。記念すべきイベントなんだよ。どんなに楽しかったのか、帰ってきたメンバーに話を聞いてさ~。……え?大袈裟かな?」
「ほお……。集団行動の楽しさも知るのかー」
これには笑いが起きてほしかったのに。悠人が感慨深そうにした。出身校の呉羽野学園とは大違いだと言った。悠人としては淡々と過ぎて行く学生生活の中に、バンド活動という楽しい波を見つけた。今の夏樹が出来上がった高校だから、是非とも担当したいと言い出した。嬉しい話なのに、モヤモヤした。
「集団行動は好きじゃないけど、楽しみだから足並みをそろえるよって、そういうレベルだよ~。自由奔放で疲れるかも知れないよ」
「ぎゃははは。これでよく分かった。……ソロライブの時に担当したことがある。過去2回だ。緊張して入って来て、熱心にメモを取ってくれた。心の底から楽しんでいたんだな」
「下級生が参加できなくなるのを、防ぐためもあるよ。来年も来たいからって……。ゆうとー、やまとー、泣いていないよ……」
やや目頭が熱くなった。濡らした布きんで顔を拭いて、気を取り直した。それを片づけた後、さすがだと言われた。どういうことだろう?
その理由は、さっき使った布きんにあった。濡らして持ち運んでいるのに、全く匂いがしないからだという。それはそうだ。まめに煮沸消毒して保管してあるし、顔を拭くための専用だ。
今日のように控え室を使う時は、テーブル用も持って行く。これが真面目なのか。黒崎から言われなくなったから、意識していなかった。
(そうだ。インターンシップの話のこと、聞いておきたいな。後にしよう……)
大和の話では、O大の学生が黒崎製菓の短期インターンシップを辞退したそうだ。俺が参加した時も似たような事があった。あの時のことだろうか?
すると、控え室内のスピーカーから、EDENが流れ始めた。もう呼びに来る頃だ。立ち上がって襟元を直した。会社員だったり、ミュージシャンだったりしている。荷物の中には、絵本の構想ノートが入っている。気を引き締めないといけない。
「トーク収録で終了だ。もう一息だ!」
「はーーい」
よーし。肩を回して息を吐き、控え室を出た。今だけは黒崎の姿を脇に置いて、本番に備えた。
「アーティスト支援団体の関係で、バックステージ見学を受け入れているの。開明高校さん側から申し込みが入って、せっかくだから、TDDにしようかって話になったのよ。懐かしいでしょう?」
「うん。ちょうど昨日、思い出していたんだ。ライブツアーは人気があるから、俺、行けなかったんだ」
「そうなのねー。今回も10名で申し込むそうよ。小人数だから、メンバーと一対一で話が出来ていいわね」
「伊吹お兄ちゃんの年には、ベテルギウスのバックステージがあったんだよ。羨ましかったよ~」
開明高校の創立メンバーが、アーティスト支援団体をやっている関係だ。関係者席でライブの見学をして、控え室にもお邪魔する。ミュージシャンと話ができて、アドバイスも貰えるツアーだ。
思い返せば、IKU所属ばかりだった気がする。その支援団体が、純白さんの関連だからだろう。IKUとは縁があったと聞いた。TDDが担当するなら嬉しい。恩返しになるだろうか。
「TDDになるといいな。開明の生徒が珍しく集団行動を取って、ライブを観に行くんだ。記念すべきイベントなんだよ。どんなに楽しかったのか、帰ってきたメンバーに話を聞いてさ~。……え?大袈裟かな?」
「ほお……。集団行動の楽しさも知るのかー」
これには笑いが起きてほしかったのに。悠人が感慨深そうにした。出身校の呉羽野学園とは大違いだと言った。悠人としては淡々と過ぎて行く学生生活の中に、バンド活動という楽しい波を見つけた。今の夏樹が出来上がった高校だから、是非とも担当したいと言い出した。嬉しい話なのに、モヤモヤした。
「集団行動は好きじゃないけど、楽しみだから足並みをそろえるよって、そういうレベルだよ~。自由奔放で疲れるかも知れないよ」
「ぎゃははは。これでよく分かった。……ソロライブの時に担当したことがある。過去2回だ。緊張して入って来て、熱心にメモを取ってくれた。心の底から楽しんでいたんだな」
「下級生が参加できなくなるのを、防ぐためもあるよ。来年も来たいからって……。ゆうとー、やまとー、泣いていないよ……」
やや目頭が熱くなった。濡らした布きんで顔を拭いて、気を取り直した。それを片づけた後、さすがだと言われた。どういうことだろう?
その理由は、さっき使った布きんにあった。濡らして持ち運んでいるのに、全く匂いがしないからだという。それはそうだ。まめに煮沸消毒して保管してあるし、顔を拭くための専用だ。
今日のように控え室を使う時は、テーブル用も持って行く。これが真面目なのか。黒崎から言われなくなったから、意識していなかった。
(そうだ。インターンシップの話のこと、聞いておきたいな。後にしよう……)
大和の話では、O大の学生が黒崎製菓の短期インターンシップを辞退したそうだ。俺が参加した時も似たような事があった。あの時のことだろうか?
すると、控え室内のスピーカーから、EDENが流れ始めた。もう呼びに来る頃だ。立ち上がって襟元を直した。会社員だったり、ミュージシャンだったりしている。荷物の中には、絵本の構想ノートが入っている。気を引き締めないといけない。
「トーク収録で終了だ。もう一息だ!」
「はーーい」
よーし。肩を回して息を吐き、控え室を出た。今だけは黒崎の姿を脇に置いて、本番に備えた。
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