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その時は悠人へ連絡を取ることなく、俺はその場で断った。ーープラセルの島川社長は兄ですので、兄弟喧嘩程度はしています。あなたの仰っている人は、黒崎家にはいません。検討違いですと。俺は一切、聞く耳を持たなかった。その後、黒崎へ事後報告をして、フォローを任せた。うちの家も早瀬さんからも、ひと言も咎められなかった。
「……悠人。21歳なのに、みっともないって?俺はそう思わない。俺には居場所がある、受け入れて貰える存在がある。だから強気で出られるんだ。だから傲慢なことをしたよ。感情に任せた。今も悠人を困らせているよ……」
「なつきー、どうしたの?何をしたの?」
「1月の終わりに、森井さんが会いに来たんだ。大学へ。黒崎さんには、ん……っ」
「……それは話さない約束だったぞ」
黒崎の声が耳元で響いた。俺の背後に立ち、左手で軽く口を塞がれた。全く気づかなかった。ほらね、みっともないだろう?そう悠人に伝えた。
久弥と教授が話しているから助かった。藤沢のことをフォローして、頷き合っている。どうやら3人から気遣われているようだ。
「いたたた、黒崎さ……、引っ張らないで」
「約束を破りかけたな。……ごめんなさいは?」
「はい、ごめんなさい……。悠人?」
「知っているよ!蝶々探しの後、裕理さんから教えてもらったんだ。夏樹の誕生日の時、話そうかと思ったけど、まあいいやって。忘れろよ、しつこい子だなーー。黒崎さんも同じ意見ですよね?この子は陰険だって……」
「……やっとリボン結びが出来るようになった。そう言わないでやってくれ」
「……へへへ」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。悠人の強張っていた表情が緩んだ後、にぎやかな笑い声が立った。まるでヒマワリのようだ。嬉しいのに恥ずかしくなった。振り上げた腕を降ろせない心地だ。
だんだんと悠人が着ているTシャツのロゴが、嫌になって来た。悠人がお母さんの仕事のために、引き受けたのがMIDSHIPのモデルだ。一貴さんが話している相手にも付いている。これは八つ当たりだ。それで構わない。俺は傲慢だ。
「ゆうとー、そのMIDSHIPのTシャツを脱げよ!パーテーションの奥で、着替えて来いよ。もう一枚持って来たからさ。……トラ顔のプリントだけど。いいだろ?」
「あれは着ないよ。これは自分で選んだやつなんだ」
「全く似合わないよ。……これと交換しよう。トラのユーリだと思えよ。……この手ぬぐいもセットにする。……”かき氷”の文字入り、好きだろ?これで頭を冷やせってば」
「そっちこそ……。面白い事を言うなよー」
「……MIDSHIPのモデルを辞めろよ!最初は、お母さんの仕事が上手くいくかも知れないって思って引き受けた仕事なんだろ?一貴お兄ちゃんに何とかしてもらえよ。撮影は終わっているし、あと2カ月の契約だろ?……色んな知恵を持っている。活用させてあげなって。……ああやってぺらぺら喋っているんだ。必要とされたいからだよ。マジな相手には甘えているんだ。……お兄ちゃん!……こっちを向け!」
「……っ」
「……え、ちょっと」
「……あの」
一貴さんを呼ぶと、話している3人の子達が、肩を震わせて驚いていた。何も悪い事をしていないだろうに。こっちから行こうとすると、顔を強張らせて、後ずさりをされた。そこへ、黒崎が一貴さんへ声をかけた。夏樹が怒っていると。その一言だけで空気が和らいだ。
「……悠人。21歳なのに、みっともないって?俺はそう思わない。俺には居場所がある、受け入れて貰える存在がある。だから強気で出られるんだ。だから傲慢なことをしたよ。感情に任せた。今も悠人を困らせているよ……」
「なつきー、どうしたの?何をしたの?」
「1月の終わりに、森井さんが会いに来たんだ。大学へ。黒崎さんには、ん……っ」
「……それは話さない約束だったぞ」
黒崎の声が耳元で響いた。俺の背後に立ち、左手で軽く口を塞がれた。全く気づかなかった。ほらね、みっともないだろう?そう悠人に伝えた。
久弥と教授が話しているから助かった。藤沢のことをフォローして、頷き合っている。どうやら3人から気遣われているようだ。
「いたたた、黒崎さ……、引っ張らないで」
「約束を破りかけたな。……ごめんなさいは?」
「はい、ごめんなさい……。悠人?」
「知っているよ!蝶々探しの後、裕理さんから教えてもらったんだ。夏樹の誕生日の時、話そうかと思ったけど、まあいいやって。忘れろよ、しつこい子だなーー。黒崎さんも同じ意見ですよね?この子は陰険だって……」
「……やっとリボン結びが出来るようになった。そう言わないでやってくれ」
「……へへへ」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。悠人の強張っていた表情が緩んだ後、にぎやかな笑い声が立った。まるでヒマワリのようだ。嬉しいのに恥ずかしくなった。振り上げた腕を降ろせない心地だ。
だんだんと悠人が着ているTシャツのロゴが、嫌になって来た。悠人がお母さんの仕事のために、引き受けたのがMIDSHIPのモデルだ。一貴さんが話している相手にも付いている。これは八つ当たりだ。それで構わない。俺は傲慢だ。
「ゆうとー、そのMIDSHIPのTシャツを脱げよ!パーテーションの奥で、着替えて来いよ。もう一枚持って来たからさ。……トラ顔のプリントだけど。いいだろ?」
「あれは着ないよ。これは自分で選んだやつなんだ」
「全く似合わないよ。……これと交換しよう。トラのユーリだと思えよ。……この手ぬぐいもセットにする。……”かき氷”の文字入り、好きだろ?これで頭を冷やせってば」
「そっちこそ……。面白い事を言うなよー」
「……MIDSHIPのモデルを辞めろよ!最初は、お母さんの仕事が上手くいくかも知れないって思って引き受けた仕事なんだろ?一貴お兄ちゃんに何とかしてもらえよ。撮影は終わっているし、あと2カ月の契約だろ?……色んな知恵を持っている。活用させてあげなって。……ああやってぺらぺら喋っているんだ。必要とされたいからだよ。マジな相手には甘えているんだ。……お兄ちゃん!……こっちを向け!」
「……っ」
「……え、ちょっと」
「……あの」
一貴さんを呼ぶと、話している3人の子達が、肩を震わせて驚いていた。何も悪い事をしていないだろうに。こっちから行こうとすると、顔を強張らせて、後ずさりをされた。そこへ、黒崎が一貴さんへ声をかけた。夏樹が怒っていると。その一言だけで空気が和らいだ。
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