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22-14(黒崎視点)
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16時。
今回の出張先は、黒崎製菓グループの関連企業だ。会食の時間まで、黒崎製菓の支社内にて過ごしている。取引先のトップとの面談後、今夜は会食がセッティングされている。
役員兼部長時代には、30分刻みの会議スケジュールをこなしていたが、現在では一時間単位の会議へ出ている。じっくり腰を据えてかかる案件であり、社長を暇にさせる為に、長時間を割くともいえる。
「……いかに社長に欠伸をさせるか、副社長の手腕にかかっているのか?大欠伸と冷や汗を、交互に出している。深川さんの方だ」
「……お前が脅して欠伸をさせているんだろう?知っているぞ」
「脅せる人じゃない。俺の教師役だ」
「……謙虚な青年だと評判だ。黒崎製菓へ入社する前は、えらく評判の下がった社長だったぞ」
電話の相手は一貴だ。オフィスにいる時の方が、こうして落ち着いて話ができる。家の中では家族としての関係が強まり、どうも真面目な話ができない。
それを心地悪いと感じていたのは、ほんの一か月程度だった。世話のかかる兄貴だと知り、急に親しみが持てたからだ。
悪評が広がろうが構うことなくプラセルを育てた結果、黒崎グループで働こうが他の企業だろうが、親の期待に応えるために歩んできたことに気づいた。
自由を手に入れたと思い込んでいた。それに気づいたのが、悠人と森井氏との一見だった。愛されたい、復讐したいという思いすら奪われた。
修復できない親子関係だと諦めて、物理的にも心の面でも距離を置いていたが、子供時代に優しくされた記憶の一部を思い出し、恋しくなる瞬間があるという。ただし、それは条件付きの愛情を向けられた記憶だ。
自分の言うことを聞く子供だから可愛い。そうでないなら可愛くない。それを知ったのは、14歳の頃だと聞いた。将来はデザインの仕事をして、アパレルメーカーの会社を起業したい。そう将来の夢を語った時に、母親からこう言われたそうだ。
ーー何を言っているの?黒崎製菓グループで働くに決まっているでしょう?お父さんの機嫌が悪くなるから、将来の希望を聞かれても、絶対に言ってはいけません。
--R&W社で働きたいと言いなさい。黒崎製菓とは言わないでね。グループ会社の方の名前を出すと謙虚だと思われるからよ。お父さんは好きなの。そういう考え方がと。
物心ついた時からの刷り込みによって、反発する発想さえも奪われた。存在できない。その面でも悠人のことが重なり、その渦から救い出そうとした結果、大きな梯子を降ろした。ある意味での復讐達成だ。
しかし、自分の母親には指すら向けられないことを苦しんでいる。それを藤沢から指摘されて、目の前が明るくなったと聞いている。どんな理由で悩んでいるのか見当がついたからだ。
「……圭一、うわの空か?珍しいな」
「……ああ、別の事を考えていた。すまない」
「……素直に認めてごめんなさい。そう言えるようになったのか。よかった」
「……気色の悪い話をするな」
「……兄貴だと威張るなと言いたいのか?たまには言わせてくれ。立場が無い」
「……家の中で言ってくれ。……笑うのか?」
一貴の快活な笑い声が聞こえて来た。こういう笑い方をするのは昔から同じだが、本当に笑いたいから笑っているだろう。散々嫌な面を見せても受け入れてもらった。その相手に不誠実なことはできないと言っていた。
今回の出張先は、黒崎製菓グループの関連企業だ。会食の時間まで、黒崎製菓の支社内にて過ごしている。取引先のトップとの面談後、今夜は会食がセッティングされている。
役員兼部長時代には、30分刻みの会議スケジュールをこなしていたが、現在では一時間単位の会議へ出ている。じっくり腰を据えてかかる案件であり、社長を暇にさせる為に、長時間を割くともいえる。
「……いかに社長に欠伸をさせるか、副社長の手腕にかかっているのか?大欠伸と冷や汗を、交互に出している。深川さんの方だ」
「……お前が脅して欠伸をさせているんだろう?知っているぞ」
「脅せる人じゃない。俺の教師役だ」
「……謙虚な青年だと評判だ。黒崎製菓へ入社する前は、えらく評判の下がった社長だったぞ」
電話の相手は一貴だ。オフィスにいる時の方が、こうして落ち着いて話ができる。家の中では家族としての関係が強まり、どうも真面目な話ができない。
それを心地悪いと感じていたのは、ほんの一か月程度だった。世話のかかる兄貴だと知り、急に親しみが持てたからだ。
悪評が広がろうが構うことなくプラセルを育てた結果、黒崎グループで働こうが他の企業だろうが、親の期待に応えるために歩んできたことに気づいた。
自由を手に入れたと思い込んでいた。それに気づいたのが、悠人と森井氏との一見だった。愛されたい、復讐したいという思いすら奪われた。
修復できない親子関係だと諦めて、物理的にも心の面でも距離を置いていたが、子供時代に優しくされた記憶の一部を思い出し、恋しくなる瞬間があるという。ただし、それは条件付きの愛情を向けられた記憶だ。
自分の言うことを聞く子供だから可愛い。そうでないなら可愛くない。それを知ったのは、14歳の頃だと聞いた。将来はデザインの仕事をして、アパレルメーカーの会社を起業したい。そう将来の夢を語った時に、母親からこう言われたそうだ。
ーー何を言っているの?黒崎製菓グループで働くに決まっているでしょう?お父さんの機嫌が悪くなるから、将来の希望を聞かれても、絶対に言ってはいけません。
--R&W社で働きたいと言いなさい。黒崎製菓とは言わないでね。グループ会社の方の名前を出すと謙虚だと思われるからよ。お父さんは好きなの。そういう考え方がと。
物心ついた時からの刷り込みによって、反発する発想さえも奪われた。存在できない。その面でも悠人のことが重なり、その渦から救い出そうとした結果、大きな梯子を降ろした。ある意味での復讐達成だ。
しかし、自分の母親には指すら向けられないことを苦しんでいる。それを藤沢から指摘されて、目の前が明るくなったと聞いている。どんな理由で悩んでいるのか見当がついたからだ。
「……圭一、うわの空か?珍しいな」
「……ああ、別の事を考えていた。すまない」
「……素直に認めてごめんなさい。そう言えるようになったのか。よかった」
「……気色の悪い話をするな」
「……兄貴だと威張るなと言いたいのか?たまには言わせてくれ。立場が無い」
「……家の中で言ってくれ。……笑うのか?」
一貴の快活な笑い声が聞こえて来た。こういう笑い方をするのは昔から同じだが、本当に笑いたいから笑っているだろう。散々嫌な面を見せても受け入れてもらった。その相手に不誠実なことはできないと言っていた。
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