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司会者との会話の途中、スピーカーからの話し声が降り注いできた。2人がきょろきょろと天井を見上げて声のする方を探しているから、観客から笑いが起こった。その声が出演者だとバレている。
藤沢が”出演者から早く始めろと急かされたんでしょう”と言ったことで、さらに爆笑が起きた。違うよという歓声もある。すると、さっきとは違う感じの声が聞こえ始めた。2人の会話の邪魔を始めている。困った様子になっている。
「……音声さーん。開幕アナウンスのタイミングがーー。まだラーメンを食べている出演者がいるのでーー。……植本さんのことです!早く食べ終えろって、急かしている出演者がいるですけどね。それは誰かなーー?」
「……困りましたねーー。もう喋るなって。……早く登場させろって?観客さんまでーー。はーーい、僕たちはサイドに戻ります。ああー、また言われましたね。……my life will passって!」
「……急かさないでください!……後方地区の方、スタンドアップでお願いしますー!にげろーー!」
藤沢と司会者が逃げ始めた瞬間、胸の鼓動が高鳴った。このアナウンスの声が、悠人のものだったからだ。吹込みではない。リアルタイムの生声で、開幕のアナウンスを流している。
その声に重なっている、もう一人の存在に気づいた。俺の声に違いない。コンサート開幕時の音声を使っているだろう。
「黒崎さん……。ギタリスト祭典なのに」
「お前もIKU所属のアーティストだ。これは演出だ。構わないじゃないか」
「うんっ。ここでもツインだね!ツイン吹き込み」
ゆっくり囁くようなメッセージ音声が続き、観客が歓声を上げた。ステージ全体に幕が下りた。きっと、ド派手なオープニングになるだろう。その瞬間を待っている観客の息遣いから、最大まで高揚した気持ちが伝わって来た。
さらにメッセージ音声が大きくなった。ステージを差し込んだ白い光が光線のようになり、何本も飛び交っている。鳥肌が立ってきた。
「……my life will pass…… my life will pass……Your sinking heart grows……、district side……3、2、1、0……、ギタリスト祭典ーー!はじまるよーーー!」
ドーーン!
悠人のハスキーな声が、今夜の開幕を告げた。ギターフレーズが響き渡り、一斉に幕が下りた。ステージに立っているのは、植本さんと悠人の2人だった。ツインギターで演奏している。
ユーートーー!
大歓声と拍手が巻き起こり、トゲトゲスタイルの悠人への声援が始まった。植本さんが観客を煽り、その間は一人で演奏した。華を持たせてくれたのか。
「すごい!ゆうとー。頑張ったねーー」
「泣いたら観えないだろう」
「うんっ、もっどみだいよー。んん、ゆうどー。植本さんーー」
視界がぼやけているから、ステージが水面のように波打っている。悠人の額から汗が流れている。離れていても分かる。
聡太郎たちが来て、また泣いているの?と声を掛けられた。そっちこそ、涙ぐんでいるじゃないかと笑い、悠人の演奏を見守った。カッコいいブルースを弾いている。歓声が起きているのは、めちゃくちゃ上手くて、シブいからだ。この関係者席が沸き立っている。
「あの子が弾いているのか!ブルースをハードロックにアレンジか。ソロでやるだろう?飯野さんーー」
「いやー、まだ分からないです。カントリーもいいですから。キシヤマさんの、CM楽曲を担当しました。音源を送りましょうか?ぜひ聴いて下さい!」
「送ってください!今持っていますか?」
「えーっと。控え室に戻った後で……、黒崎君、持っていないか?」
飯野さんが俺のそばへ来た。勿論持っている。ここへ来るまで聴いていた。
「……持っています!mp3です。変換しますか?」
「そのままで構わない。助かった。……こちらです」
さっそくデータを送ると、飯野さんが落ち着いた様子で、相手の方へ送信した。これが裏方のステージなのだろう。今日体験できてよかった。
藤沢が”出演者から早く始めろと急かされたんでしょう”と言ったことで、さらに爆笑が起きた。違うよという歓声もある。すると、さっきとは違う感じの声が聞こえ始めた。2人の会話の邪魔を始めている。困った様子になっている。
「……音声さーん。開幕アナウンスのタイミングがーー。まだラーメンを食べている出演者がいるのでーー。……植本さんのことです!早く食べ終えろって、急かしている出演者がいるですけどね。それは誰かなーー?」
「……困りましたねーー。もう喋るなって。……早く登場させろって?観客さんまでーー。はーーい、僕たちはサイドに戻ります。ああー、また言われましたね。……my life will passって!」
「……急かさないでください!……後方地区の方、スタンドアップでお願いしますー!にげろーー!」
藤沢と司会者が逃げ始めた瞬間、胸の鼓動が高鳴った。このアナウンスの声が、悠人のものだったからだ。吹込みではない。リアルタイムの生声で、開幕のアナウンスを流している。
その声に重なっている、もう一人の存在に気づいた。俺の声に違いない。コンサート開幕時の音声を使っているだろう。
「黒崎さん……。ギタリスト祭典なのに」
「お前もIKU所属のアーティストだ。これは演出だ。構わないじゃないか」
「うんっ。ここでもツインだね!ツイン吹き込み」
ゆっくり囁くようなメッセージ音声が続き、観客が歓声を上げた。ステージ全体に幕が下りた。きっと、ド派手なオープニングになるだろう。その瞬間を待っている観客の息遣いから、最大まで高揚した気持ちが伝わって来た。
さらにメッセージ音声が大きくなった。ステージを差し込んだ白い光が光線のようになり、何本も飛び交っている。鳥肌が立ってきた。
「……my life will pass…… my life will pass……Your sinking heart grows……、district side……3、2、1、0……、ギタリスト祭典ーー!はじまるよーーー!」
ドーーン!
悠人のハスキーな声が、今夜の開幕を告げた。ギターフレーズが響き渡り、一斉に幕が下りた。ステージに立っているのは、植本さんと悠人の2人だった。ツインギターで演奏している。
ユーートーー!
大歓声と拍手が巻き起こり、トゲトゲスタイルの悠人への声援が始まった。植本さんが観客を煽り、その間は一人で演奏した。華を持たせてくれたのか。
「すごい!ゆうとー。頑張ったねーー」
「泣いたら観えないだろう」
「うんっ、もっどみだいよー。んん、ゆうどー。植本さんーー」
視界がぼやけているから、ステージが水面のように波打っている。悠人の額から汗が流れている。離れていても分かる。
聡太郎たちが来て、また泣いているの?と声を掛けられた。そっちこそ、涙ぐんでいるじゃないかと笑い、悠人の演奏を見守った。カッコいいブルースを弾いている。歓声が起きているのは、めちゃくちゃ上手くて、シブいからだ。この関係者席が沸き立っている。
「あの子が弾いているのか!ブルースをハードロックにアレンジか。ソロでやるだろう?飯野さんーー」
「いやー、まだ分からないです。カントリーもいいですから。キシヤマさんの、CM楽曲を担当しました。音源を送りましょうか?ぜひ聴いて下さい!」
「送ってください!今持っていますか?」
「えーっと。控え室に戻った後で……、黒崎君、持っていないか?」
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「……持っています!mp3です。変換しますか?」
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