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21時半。
今夜のギタリスト祭典が終了した。控え室のドアの向こうが賑やかになり、スタッフ達が小走りに行き交っている。耳に掛けた無線で連絡している人、携帯で話している人、出演者を待っている関係者と、ここだけで3台のカメラが待機している。祭典の裏舞台も映像化しておくそうだ。
黒崎と並んで通路を出た。戻って来た悠人を迎える為に。久弥のマネージャーの蓮司さんが待機してくれている。悠人の一家とIKUの飯野さんも。
遠藤さんは照明機械操作室で待機している。ほとんど楽しめない場所だ。TDDのコンサートの時は、関係者スペースに短時間だけでもいるのに。今日はあえてそうしたそうだ。
ここのフロアはこじんまりしている。4つの控え室の半分をスタッフルームにして、植本さんと悠人の2人だけが使っている。大きな通路を隔てた向こうは広くて、ずらっとドアが並んでいる。上の階にも控え室があり、エレベーターがフル稼働だ。
「……植本さんと、悠人さんです!みなさーーん!」
蓮司さんの声と同時に拍手が起きて、取り払われたパーティションの向こうから、2人が歩いて来るのが分かった。アシスタントさんがジャケットを受け取り、ローザーさんが歩きながら、悠人のヘアスタイルを整えている。なるべくカメラ映りを良くする為だ。
今はまだ、俺達は駆け寄ることはできない。なんて長い時間なのだろう。悠人が笑って手を振っているのに。そして、2人が歩いて来たから歓声が上がった。
パチパチパチパチ!
拍手に迎えられている間、着替えのTシャツとタオルが差し出されている。その中で、まるでスローモーションのような光景に入った。悠人が両腕を広げて、こっちへ駆け寄って来ている。
「なつきーー!やったぞーー!」
「ゆうとーー……」
「桜木さん!やまとーー!観たー?」
「おおーー、シブかったぞ!」
黒崎から背中を軽く押された。悠人が両手を前に出したままで、ふらふらしている。すぐに両腕を広げて悠人のそばへ行き、倒れ込んだ身体を受け止めて支えた。いや、倒れていない。思い切り抱きついてくれていた。
「カッコよかったよ……」
「おおーー、ごめん、倒れるからねーー。3、2、1……」
「いいよ、よいしょっと!」
悠人の身体の力が抜けた。これが一緒に立ったステージの後なら、お互いに支え合って踏ん張るしかない。でも、今夜は違う。体力温存したおかげもあり、自分だけで支えることが出来た。まずは先に座らせよう。全身に力を入れて立ち直し、用意された椅子へ座らせた。
「なつきー、話したいことがあるんだ。ここで……」
「うん。いいよ……」
「久弥が脱退した後、バンド名を新しくしたい……。開幕で言ったやつ、いっぱい……」
「……落ち込んでいる心が成長するっていうやつ?長いバンド名だね」
「もう……、久弥も考えてたやつで……。大和のバンド、ゼロスペースだったろ?居場所がないって意味……」
悠人の身体に力がこもった。背中を上下させて息をしている。背中をさすって言葉を待ちながら、少しずつ水を飲ませた。むせ返らずに済んでいる。
「名前は……。district side zero……。ゼロの地区サイドって意味。居場所がないんじゃない、その方にもあるんだ。……なつきー、メンバー全員の指名だよ。リーダーをやってよ……、ふう……」
「……悠人がやらないと!」
「もっと目立ちたいもん。リーダーは管理職。目立てない。ああーー、寝る。3、2、1……、ぜろ……」
「聡太郎君、大和!よしよし。……せーの!」
「せーー、のーー」
3人で掛け声を上げて、悠人の身体を抱きかかえた。担架は必要ない。悠人の控え室へ連れて入った。この部屋のドアは、すでに全開になっていた。
今夜のギタリスト祭典が終了した。控え室のドアの向こうが賑やかになり、スタッフ達が小走りに行き交っている。耳に掛けた無線で連絡している人、携帯で話している人、出演者を待っている関係者と、ここだけで3台のカメラが待機している。祭典の裏舞台も映像化しておくそうだ。
黒崎と並んで通路を出た。戻って来た悠人を迎える為に。久弥のマネージャーの蓮司さんが待機してくれている。悠人の一家とIKUの飯野さんも。
遠藤さんは照明機械操作室で待機している。ほとんど楽しめない場所だ。TDDのコンサートの時は、関係者スペースに短時間だけでもいるのに。今日はあえてそうしたそうだ。
ここのフロアはこじんまりしている。4つの控え室の半分をスタッフルームにして、植本さんと悠人の2人だけが使っている。大きな通路を隔てた向こうは広くて、ずらっとドアが並んでいる。上の階にも控え室があり、エレベーターがフル稼働だ。
「……植本さんと、悠人さんです!みなさーーん!」
蓮司さんの声と同時に拍手が起きて、取り払われたパーティションの向こうから、2人が歩いて来るのが分かった。アシスタントさんがジャケットを受け取り、ローザーさんが歩きながら、悠人のヘアスタイルを整えている。なるべくカメラ映りを良くする為だ。
今はまだ、俺達は駆け寄ることはできない。なんて長い時間なのだろう。悠人が笑って手を振っているのに。そして、2人が歩いて来たから歓声が上がった。
パチパチパチパチ!
拍手に迎えられている間、着替えのTシャツとタオルが差し出されている。その中で、まるでスローモーションのような光景に入った。悠人が両腕を広げて、こっちへ駆け寄って来ている。
「なつきーー!やったぞーー!」
「ゆうとーー……」
「桜木さん!やまとーー!観たー?」
「おおーー、シブかったぞ!」
黒崎から背中を軽く押された。悠人が両手を前に出したままで、ふらふらしている。すぐに両腕を広げて悠人のそばへ行き、倒れ込んだ身体を受け止めて支えた。いや、倒れていない。思い切り抱きついてくれていた。
「カッコよかったよ……」
「おおーー、ごめん、倒れるからねーー。3、2、1……」
「いいよ、よいしょっと!」
悠人の身体の力が抜けた。これが一緒に立ったステージの後なら、お互いに支え合って踏ん張るしかない。でも、今夜は違う。体力温存したおかげもあり、自分だけで支えることが出来た。まずは先に座らせよう。全身に力を入れて立ち直し、用意された椅子へ座らせた。
「なつきー、話したいことがあるんだ。ここで……」
「うん。いいよ……」
「久弥が脱退した後、バンド名を新しくしたい……。開幕で言ったやつ、いっぱい……」
「……落ち込んでいる心が成長するっていうやつ?長いバンド名だね」
「もう……、久弥も考えてたやつで……。大和のバンド、ゼロスペースだったろ?居場所がないって意味……」
悠人の身体に力がこもった。背中を上下させて息をしている。背中をさすって言葉を待ちながら、少しずつ水を飲ませた。むせ返らずに済んでいる。
「名前は……。district side zero……。ゼロの地区サイドって意味。居場所がないんじゃない、その方にもあるんだ。……なつきー、メンバー全員の指名だよ。リーダーをやってよ……、ふう……」
「……悠人がやらないと!」
「もっと目立ちたいもん。リーダーは管理職。目立てない。ああーー、寝る。3、2、1……、ぜろ……」
「聡太郎君、大和!よしよし。……せーの!」
「せーー、のーー」
3人で掛け声を上げて、悠人の身体を抱きかかえた。担架は必要ない。悠人の控え室へ連れて入った。この部屋のドアは、すでに全開になっていた。
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