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これだと黒崎に近づけない。練習内容としては、ここから向こうへ走って逃げることだ。今の状況だと簡単にできるから、練習にならない。黒崎が肩を揺らしている。こっちに来いという風だ。
もう一つの内容もある。黒崎の後ろ側へ立ち、全身の動きを一瞬だけ阻む手段だ。エレベーター内で襲われた時に使うもので、短時間だけ持ちこたえればいい。これが自分にとっては難しくて、10回に一度しか成功していない。今からチャレンジしよう。右足で回し蹴りをするようにして、軽く振り上げた。
「黒崎さーーん!」
「来るのか?」
「うん。えーーい!」
「予告したら意味がないだろうが。ああ、速いじゃないか」
「逃げるなよ~。向かって来いって言ったじゃん。まずは後ろを取らせてよ」
「それも意味がない。……それを練習したいのか」
あっさり頷いてくれた。さっそく背中側に回った。黒崎の肩を押さえた勢いのまま、左腕をホールドする。そのつもりで左手を伸ばした瞬間、強い力が襲ってきて、上半身がぐらついた。とっさに右足で身体を支えたが、流れるように空を仰ぐ体勢に変わった。
「くやしいーー。簡単にやるなよ~~」
「……へたくそ」
「そのまま佇んでいてよ。ホールドする構えをやりたいのに」
「退屈で寝そうになった」
「ああー、待って。立ち直すよ」
「遅い。水をかけてみろ。できるはずだ」
「ええ?やめてよ……っ」
地面に降ろされて座った。黒崎が覆い被さるように座り込んできたから、噴水のふちに背中を預けた。ひざ丈の高さだから、首筋に水しぶきが当たってくすぐったい。思い切りからかわれている。
こうして楽しそうにしている黒崎を見ていたいのが本音であり、悔しいから逃れたい気持ちもある。だったらどうするのか?その答えは、”両方取る”ことだ。さっそく、唇を尖らせた顔を近づけてやった。
「ウーーーッ」
「……威嚇しているのか?」
「そうだよーー。キスをしてみろよ。この唇に。無理だからさ~、ウーーッ」
「確かにやる気がなくなる。……唇のせいじゃない。今の顔だ」
「ふうーーん。ふーん」
チャンスができた。両肩へ腕を回して起き上がり、即座に背中へおぶさった。当初の目的から逸れているが構わない。動きを阻んで文句を言わせたいからだ。さらに全身の力を抜いてやった。俺が転ぶから、無理に動かないはずだ。
「こら、確信犯。当初の目的が違うぞ?」
「分かっているよ。やり方を変えたんだ。これも動きを阻めるもん。あんた限定だけど。えーーい、重いだろ?」
「そうでもない。苦しいぞ」
「ふうん。くすぐったいんだろ?うへへ。引っ張ってやる!」
黒崎が本気で身じろいだ。耳たぶへ息を吹きかけて引っ張り、さらに両足を絡ませておいた。おんぶスタイルだ。この角度から見えている笑顔が素敵だ。もっと見たい。
「今の顔を自分で見ておけ。ショーケースを眺めている時の顔だ」
「そう?あんたが美味しそうに見えたんだよ。……朝ご飯はセットメニューだよね?どんなものがあるか調べた?」
「二種類ある。エッグベネディクトか、ホットサンドにするかだ。パンケーキはついていない。クルミのロールパン、クロワッサンが食べ放題だ。……パンケーキが欲しいのか?」
「ううん。帰りに寄る店で食べるよ。シャルロットキッチンか、マリーズカフェだよね?」
「……読まれたのか。毎度のことだな」
「嬉しいよ。大歓迎だよ」
本当だよという気持ちを込めて、両腕に力を入れて抱きついた。どさくさに紛れて水を掛けようかと悪戯心を起こしたが、やめておく。
もう一つの内容もある。黒崎の後ろ側へ立ち、全身の動きを一瞬だけ阻む手段だ。エレベーター内で襲われた時に使うもので、短時間だけ持ちこたえればいい。これが自分にとっては難しくて、10回に一度しか成功していない。今からチャレンジしよう。右足で回し蹴りをするようにして、軽く振り上げた。
「黒崎さーーん!」
「来るのか?」
「うん。えーーい!」
「予告したら意味がないだろうが。ああ、速いじゃないか」
「逃げるなよ~。向かって来いって言ったじゃん。まずは後ろを取らせてよ」
「それも意味がない。……それを練習したいのか」
あっさり頷いてくれた。さっそく背中側に回った。黒崎の肩を押さえた勢いのまま、左腕をホールドする。そのつもりで左手を伸ばした瞬間、強い力が襲ってきて、上半身がぐらついた。とっさに右足で身体を支えたが、流れるように空を仰ぐ体勢に変わった。
「くやしいーー。簡単にやるなよ~~」
「……へたくそ」
「そのまま佇んでいてよ。ホールドする構えをやりたいのに」
「退屈で寝そうになった」
「ああー、待って。立ち直すよ」
「遅い。水をかけてみろ。できるはずだ」
「ええ?やめてよ……っ」
地面に降ろされて座った。黒崎が覆い被さるように座り込んできたから、噴水のふちに背中を預けた。ひざ丈の高さだから、首筋に水しぶきが当たってくすぐったい。思い切りからかわれている。
こうして楽しそうにしている黒崎を見ていたいのが本音であり、悔しいから逃れたい気持ちもある。だったらどうするのか?その答えは、”両方取る”ことだ。さっそく、唇を尖らせた顔を近づけてやった。
「ウーーーッ」
「……威嚇しているのか?」
「そうだよーー。キスをしてみろよ。この唇に。無理だからさ~、ウーーッ」
「確かにやる気がなくなる。……唇のせいじゃない。今の顔だ」
「ふうーーん。ふーん」
チャンスができた。両肩へ腕を回して起き上がり、即座に背中へおぶさった。当初の目的から逸れているが構わない。動きを阻んで文句を言わせたいからだ。さらに全身の力を抜いてやった。俺が転ぶから、無理に動かないはずだ。
「こら、確信犯。当初の目的が違うぞ?」
「分かっているよ。やり方を変えたんだ。これも動きを阻めるもん。あんた限定だけど。えーーい、重いだろ?」
「そうでもない。苦しいぞ」
「ふうん。くすぐったいんだろ?うへへ。引っ張ってやる!」
黒崎が本気で身じろいだ。耳たぶへ息を吹きかけて引っ張り、さらに両足を絡ませておいた。おんぶスタイルだ。この角度から見えている笑顔が素敵だ。もっと見たい。
「今の顔を自分で見ておけ。ショーケースを眺めている時の顔だ」
「そう?あんたが美味しそうに見えたんだよ。……朝ご飯はセットメニューだよね?どんなものがあるか調べた?」
「二種類ある。エッグベネディクトか、ホットサンドにするかだ。パンケーキはついていない。クルミのロールパン、クロワッサンが食べ放題だ。……パンケーキが欲しいのか?」
「ううん。帰りに寄る店で食べるよ。シャルロットキッチンか、マリーズカフェだよね?」
「……読まれたのか。毎度のことだな」
「嬉しいよ。大歓迎だよ」
本当だよという気持ちを込めて、両腕に力を入れて抱きついた。どさくさに紛れて水を掛けようかと悪戯心を起こしたが、やめておく。
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