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俺の機嫌を取っているのだろうか?心当たりがないのに。絵本とスイーツ、晩御飯を食べに和食店へ行くこと。この3つがセットだ。そうでない時は、バリエーションが豊富なのに。この噴水のように。
「黒崎さーん。機嫌を取ってくれたの?」
「……何もない」
「ええ?あるじゃん」
「……家の中に入るぞ」
「あんたねえ。怪しいよ?会食と飲み会は普段通りだもんね。冗談としても、デートに誘ってくる人はいないと思う。思い切り忙しかったし」
「お前のことを知っている人ばかりだ。何もない」
「ふうん。聞いてみようかな……」
黒崎の方がぴくっと動いた。何かあったのは確定になった。体重をかけて白状しろと囁いた。しかし、全くくすぐったそうにしていない。なんだか不安になってきた。そこへ、門の方から話し声が聞こえて来た。
「夏樹君、圭一君。おはようー」
「あれ、どこから?」
「……そろそろ離れろ」
後ろの方から名前を呼ばれた。さっと振り返ると、すぐ近くで佳代子さんが笑っていた。その後ろでは、一貴さんが荷物を持って歩きながら、俺達に手を振ってきた。こっちの状況はイチャつきの延長であり、とても見せられたものではない。
そこで、やっと気づけた。ぐるっと遠回りをしなくても来られるように、門からの道を整えたことを。テラスからしか来ないから忘れていた。
「おはようございます。ああ……」
「いいのよ。仲がいいのは分かっているから。二葉君に渡したいものがあって、お邪魔したの。ドイツへの出発前の忙しいときだけど。圭一君、気にしないでね。ちょうど、一貴さんがお散歩中で……」
黒崎から抱き起されて立ち上がった。二葉は部屋にいるはずだ。先に電話をかけておこうとすると、黒崎から止められた。どうも様子がおかしい。後ろめたいことがあるのか。
「佳代子さんが笑っているよ。二葉のことだよね?」
「……そのとおりだろう」
「……佳代子さん。今から呼ぶよ」
「あら、一緒に来ているのよ。一貴さんと一緒にいるわ。ふふふ」
「そうなんだ?お兄ちゃんの近くにいるよね。……いたいた。泣いているみたいだよ。何を言ったんだよ。行ってくるよ~」
二葉がなるべくこっちを見ないようにしていた。俺が近くへ行くと、オリーブの木を眺めるふりをした。その横顔が紅潮している。こんな時でも姿勢が良くて、背が伸びたのが分かった。
「どうしたの?一貴お兄ちゃん、謝る気があるみたいだよ?」
「……謝ることじゃないよ。俺の問題だから」
「そんなに拗ねるなよ。ああ、泣いていないね。……なになに?圭一お兄ちゃんが優しい言葉をかけてくれたのか。レアすぎるね」
二葉は泣いていなかった。一昨日、黒崎が社長室へやってきた。そして、こう言われたそうだ。頑張っているのを知っている。ドイツが気に入っても帰って来いと。そこで、二葉は、怖い存在の人に反発していた面を自覚して、恥ずかしさから逃げていたそうだ。
「25歳になるのに。余計にみっともない。あとでお礼を言ってくる」
「黒崎さんが気まずそうなんだ。話してあげてよ。はいはい、行こうね!おせっかいを焼くよ」
強引に二葉の右腕を引いた。長袖シャツの下には傷跡がある。こうやって軽く掴んでも、痛みが起こらない時期に入った。
佳代子さんが、黒崎の背中に手を添えて笑っている。タイミングを逃さないようにと、二葉を黒崎の前に連れて行った。
「黒崎さーん。二葉が喜んでいるよ。そうだよね?」
「お兄ちゃん、ありがとう。ちゃんと帰って来るよ。晴海兄さん達も待ってくれているから」
「……そうか。向こうのマンホールは、デザイン性が高いそうだ。見てこい」
この会話を聞いて、胸がじーんと熱くなった。短い言葉で構わないから、本人の口から言うからこそ、伝わる気持ちがあることを実感した。俺達の頭の上にある青空を見上げて、今日は飛行機日和だねと笑いあった。
「黒崎さーん。機嫌を取ってくれたの?」
「……何もない」
「ええ?あるじゃん」
「……家の中に入るぞ」
「あんたねえ。怪しいよ?会食と飲み会は普段通りだもんね。冗談としても、デートに誘ってくる人はいないと思う。思い切り忙しかったし」
「お前のことを知っている人ばかりだ。何もない」
「ふうん。聞いてみようかな……」
黒崎の方がぴくっと動いた。何かあったのは確定になった。体重をかけて白状しろと囁いた。しかし、全くくすぐったそうにしていない。なんだか不安になってきた。そこへ、門の方から話し声が聞こえて来た。
「夏樹君、圭一君。おはようー」
「あれ、どこから?」
「……そろそろ離れろ」
後ろの方から名前を呼ばれた。さっと振り返ると、すぐ近くで佳代子さんが笑っていた。その後ろでは、一貴さんが荷物を持って歩きながら、俺達に手を振ってきた。こっちの状況はイチャつきの延長であり、とても見せられたものではない。
そこで、やっと気づけた。ぐるっと遠回りをしなくても来られるように、門からの道を整えたことを。テラスからしか来ないから忘れていた。
「おはようございます。ああ……」
「いいのよ。仲がいいのは分かっているから。二葉君に渡したいものがあって、お邪魔したの。ドイツへの出発前の忙しいときだけど。圭一君、気にしないでね。ちょうど、一貴さんがお散歩中で……」
黒崎から抱き起されて立ち上がった。二葉は部屋にいるはずだ。先に電話をかけておこうとすると、黒崎から止められた。どうも様子がおかしい。後ろめたいことがあるのか。
「佳代子さんが笑っているよ。二葉のことだよね?」
「……そのとおりだろう」
「……佳代子さん。今から呼ぶよ」
「あら、一緒に来ているのよ。一貴さんと一緒にいるわ。ふふふ」
「そうなんだ?お兄ちゃんの近くにいるよね。……いたいた。泣いているみたいだよ。何を言ったんだよ。行ってくるよ~」
二葉がなるべくこっちを見ないようにしていた。俺が近くへ行くと、オリーブの木を眺めるふりをした。その横顔が紅潮している。こんな時でも姿勢が良くて、背が伸びたのが分かった。
「どうしたの?一貴お兄ちゃん、謝る気があるみたいだよ?」
「……謝ることじゃないよ。俺の問題だから」
「そんなに拗ねるなよ。ああ、泣いていないね。……なになに?圭一お兄ちゃんが優しい言葉をかけてくれたのか。レアすぎるね」
二葉は泣いていなかった。一昨日、黒崎が社長室へやってきた。そして、こう言われたそうだ。頑張っているのを知っている。ドイツが気に入っても帰って来いと。そこで、二葉は、怖い存在の人に反発していた面を自覚して、恥ずかしさから逃げていたそうだ。
「25歳になるのに。余計にみっともない。あとでお礼を言ってくる」
「黒崎さんが気まずそうなんだ。話してあげてよ。はいはい、行こうね!おせっかいを焼くよ」
強引に二葉の右腕を引いた。長袖シャツの下には傷跡がある。こうやって軽く掴んでも、痛みが起こらない時期に入った。
佳代子さんが、黒崎の背中に手を添えて笑っている。タイミングを逃さないようにと、二葉を黒崎の前に連れて行った。
「黒崎さーん。二葉が喜んでいるよ。そうだよね?」
「お兄ちゃん、ありがとう。ちゃんと帰って来るよ。晴海兄さん達も待ってくれているから」
「……そうか。向こうのマンホールは、デザイン性が高いそうだ。見てこい」
この会話を聞いて、胸がじーんと熱くなった。短い言葉で構わないから、本人の口から言うからこそ、伝わる気持ちがあることを実感した。俺達の頭の上にある青空を見上げて、今日は飛行機日和だねと笑いあった。
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